「グラナス・ゼム・ハイルド」
この世界ではレベルは100が限度とされている。そして、それ以上はな(・)い(・)とされており、なおかつ歴史を振り返ってもレベル100に至った人間は存在していない。レベル60を超えれば充分な強者、国に1人いるかいないか、というレベル80。勇者のような人物でも至るとは限らないレベル90といったところだ。
グラナス Lv82
少し嬉しそうな顔をした。
「ほう。名乗れと言ったのは確かに我だな。グラナス・ゼム・ハイルド。このザグナンドの兵の総隊長だ」
「甲影陽流。あ、こっち風に言うならヒリュー・コーエイです」
「ヒリューか。ふむ。貴様は我とは充分に(・)戦う(・)ことができるのか?」
「さあどうでしょうね。神具あるなら使ったらどうです?」
「・・・その余裕、いつまで持つだろうな」
「一生」
グラナスは先が5つに分かれた大槍を構えた。
さて問題です。この鎗の名前は?
「トリアイナ(トライデントのこと)?」
残念違います。
「ロンギヌス?」
それも違い・・・あ、来ますよ。
「ぬんっ!」
勢いよく突き出される鎗。刀で受け流しつつ、背後に剣を振るうが、
「甘いっ!」
鎗の柄ですぐさま防がれる。
「やるじゃん」
「なめているのか?」
距離をとって構え直す2人。少年、改めヒリューは刀を一度納めて剣を両手で構えた。
グラナスは更に距離をとり、鎗を正面に構えた。
何か来る、とヒリューが察したとき、
ピカッ
ジュジュジュジュジュッ
5つに分かれたその鎗の各先端部分からレーザー光が放たれた。とっさに回避を行うとレーザー光が床を溶かした。
「・・・」
「まだまだっ」
再びレーザー光が飛来する。直線的なその光は5ワイド状態で襲い来る。
「くっ」
ジュジュジュジュジュッ
ジュジュジュジュジュッ
「避けているだけではいつまでたってもここには至れぬぞ!」
鎗の位置を変えながらレーザーを放ち続ける。
「まともに、ぶつかり合いを、しようとするなら、このレーザー、っと、止めてもらえますかね~」
などと言いつつも簡単に避けている。
「ぬぇい!」
デュヒュゥウンジジジジジジ!
グラナスはその鎗を投げ飛ばした。すると鎗は稲妻に変わり、ヒリューの胸を貫いた。
「ガハッ・・・」
「ふははっ口ほどにも無かったな」
貫いた鎗は手元に戻っている。
報告のために王室へ向かおうと向きを変えた直後殺気を感じ取り鎗を振った。
「!」
飛来する刀を鎗で弾き飛ばした。
そこに見えたのは無傷でものを投げ飛ばした体勢のヒリュー。
「なるほどなぁ・・・『ブリューナク』か」
体勢を戻しつつ呟いた。
「なん・・・だと・・・」
「いやはや。なかなかいい攻撃でした。なんて言わない」
「今確かに仕留めたはずだが・・・」
「はて?喰らった覚えは・・・あります」
「・・・」
「まあ冗談はさておき。そろそろ半力解放していいですか?流石にこのままじゃあんたを倒せない」
「馬鹿な・・・今までの力はなんだというのだ!?」
「何パーくらいだろうな・・・5パーくらい?制限かかってるから百は出せないですけど」
「制限・・・封印を・・・いや!それ以前にだ!貴様・・・レベルは幾つなんだ!」
「レベルオーバー。幾つかすらわからない」
「聞いたことが無い・・・それこそ冗談であろうな・・・」
「信じる・信じないはそちらの自由です。それに、そろそろ実力がわかって飽きてきました・・・し!」
「!!!」
□ ■ □ ■ □
グラナス・ゼム・ハイルド。幼少期から才能を開花させ、その歳10になる頃にはレベルは50を超えていた。一般的に、50を超えるとなると充分に戦闘をこなした兵士が至れる存在。その域に至った彼は最年少記録となる12歳でザグナンド騎士団に入団、3年後には部隊長となった。ザグナンドが領地を大きく広げることは彼の存在なくしてはなかったことだろう。彼は自身を鍛えることに余念がない。
現在、32歳。その強さは今だ発展途上である!
□ ■ □ ■ □
2人。
ズタボロにされた男が転がっていた。
もう1人、上を見ているのは少年と見て取れた。
「サプライズでもしますかな」