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00 - プロローグ

新作始めました。

今日はもう一話あります。

 

 

 

 はぁ、はぁ、はぁ。

 茂みに隠れ、乱れる息を必死に整える。

 

 ズ、ドーーーン。

 

 後方から凄まじい爆発音が聞こえた。

 遅れて怒号や悲鳴、馬の嘶きに徐々に遠ざかる蹄の音。

 しかし今はそちらを確認する余裕はない。

 

「……ゔ」

「! 気がついた!?」

 

 背中に担ぎ、引きずるようにここまで連れて来た相手を見やる。

 相変わらず顔色は悪く、傷口からの出血も止まらない。

 

「あー、ちくしょう。下手こいたなぁ」

「動けそう? なんだかあっちも混乱してるみたい。いまなら紛れて行けるかも」

「……いや。一人で行ってくれ。多分、今動くと毒が回って、よくない」

「そんな、でも、置いてくなんて出来ないよ……」

「戻ったところで、だろ?」

「それはっ、そうかもしれないけど……、でもっ!」

 

 曖昧に笑った彼の顔色は悪い。

 大量の汗をかいているのに身体は震えており、呼吸もだいぶ乱れてきている。

 

「どうしていつも私たちだけ……っ、あいつらホントにクソ野郎だよ!」

「こら、女がそんなこと、言わない。それに、野郎じゃない、だろ」

 

 口からは普段あまり口にしない暴言が、瞳からは涙が零れ落ちていく。

 こちらを見つめる彼は、苦しいはずなのに、申し訳なさそうに、でもいつものように優しく微笑んでいた。

 

 もしこのまま彼がいなくなったら、私も……。


 そう考え溢れる涙をそのままに彼の側へと寄ったその時、いつの間にか後ろに人の気配を感じた。何も音などしなかったのに。

 

 振り向きざまに剣を抜くが、構える手は震えており、色々と限界が近いことは明らかだった。

 せめてもの意地で、敵国のローブを纏う相手を睨む。

 

「こんにちは、お姉さん」

 

 しかしそんな私とは対照的に、相手は気の抜けた様な声で話しかけて来た。

 そして続く言葉に、私は自分の耳を疑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

——————

————

——

 

 

 

 森の中、木々の隙間から差し込む日差しに照らされ、瑞々しく色づいた葉や実が煌めいている。

 その中で特に立派に育った実に伸びる指先。

 しなる枝から離され、そこから口元に運ばれるのは赤い果実。

 一口齧れば溢れんばかりの果汁とふわりと漂う芳醇な香り。

 

「お肉食べたい……」

 

 しかしそんなものに興味はないとばかりに、そんな呟きを溢すのは、頭から足元まですっぽりとネイビーブルーのローブで覆われた人物。フードを深く被っているせいで、見えるのは鼻から下の咀嚼のために動く口元くらいだ。

 

 その時、甘い香りに誘われたのか、近くの枝にいたヘビが細長い身体をしならせ飛びかかる。

 しかしローブの人物に当たる前に何かにぶつかり、細切れとなって地面に落ちる。

 

 その光景を気にも止めず口元を動かし続け、最後に残った果実の芯が掌の上で炎に包まれた。

 

「街、どこかな」

 

 灰は小さな呟きと共に、風に流されていった。

 

 

 

 


 

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