第1話目覚めたら悪夢だった
意識が戻った瞬間、佐藤悠人はかつてない違和感を覚えた。
見慣れた布団の感触ではなく、奇妙で流動的な、まるで全身が絶えず形を変えているような感覚だった。
彼は目を開けようとした――いや、むしろ周囲の環境を「感知」しようとしたのだが、自分の視覚がまったく異なっていることに気づいた。
視野は分裂していた。
六つの独立した視点が同時に脳裏に浮かんでいた。
彼はあらゆる方向を見渡せた。頭上に揺れる蛍光色の苔、足元の湿った土、背後にあるざらついた岩肌……
「うう……気持ち悪い」
二つの目で世界を見ることに慣れた人間にとって、六つの目にはまだ慣れが必要だった。
「少しずつやっていくしかないな」
悠人はため息をついた。
先へ進もうとしたが、漆黒の四肢はひどく短く、力も乏しかった。
何度試しても、基本的な歩行すらできなかった。
仕方なく、悠人は体をくねらせながら前に這っていった。
「ずっと止まっているわけにもいかないし……」
自分を励ましながら、進み方は醜かったが、とにかく移動はできていた。
周囲は薄暗く、おそらくまだ洞窟の中だろう。
六つの目の恩恵で、暗闇の中でも悠人は周りのものをはっきりと見ることができた。
差し込む光を通して、前方に水たまりがあるのが見えた。
悠人はそこで水を飲み、ついでに自分の姿を確かめようと思った。
水たまりに向かう途中も、立ち上がって歩く練習をやめなかった。
水たまりに辿り着いたとき、ようやく立ち上がることができた。
水面を覗き込むと、そこには漆黒の子犬のような体があった。大きさはだいたい飼い猫くらい。
全身は流動的な黒い物質で構成され、表面は油膜のような光沢を放ち、常に蠢き、流れ、形を変えていた。
四肢は短く、尾はない。それは彼の想像通りだった。
六つの真紅の目が、頭部と胴体に不規則に配置されていた。
口も鼻も、どんな摂食器官もない――ただその六つの不気味な赤い眼球だけが、暗闇の中で異様な輝きを放っていた。
「!?」
悠人は叫び出そうとしたが、喉からは「ゴゴッ」という音しか出なかった。
彼の体は激しく震え、黒い流体のような皮膚が波紋を広げた。
これは……転生したのか?




