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彼女は勇者だそうです  作者: Mじい
第一章:いざ、学園生活へ
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第4話:魔力持ちのやり方

 計画通りとは少々違ったが、まあ成功と言っていいだろう。苦痛のあまり気絶して倒れ込んだおじさんは、しばらくは目を覚まさないだろうね。


 確認を終えた後、私は前方にいた、最初に斬り付けられた乗客の方へ目を向けた。


「ひぇー!」


(うん?)


 少し後ずさりしていた乗客は、私と同年輩ぐらいの男の子だった。あのおっさんが彼に与えた心理的なダメージは、相当深いようだ。


「あなた、大丈夫ですか?」


「えと…あ…はい!大丈夫…です、ありがとう…ございます。僕は大丈夫です、あの…あまり近づかないでいただけますか。」


 何故かこの男子は、私が近づくことを非常に拒絶した。しかし、背中の傷口は、見た目ではそれほど深刻ではなく、出血も少なかった。それに、既に止血されているようだった。


「はぁー、わかりました。大怪我じゃなくてよかったです、立てますか?」


 私が手助けしようと近寄った瞬間、彼はすぐさま反応した。


「はい!大丈夫です。自力で何とかできますから、お気遣いいただきありがとうございます。」


「…わかりました」


(人見知りかしら?)


「あの、助けてくれてありがとうございます」


 やや動きが止まっている私に、声をかけてくる者がいた。声をかけてきたのはさっきの親子でした。


「いえ、当然のことをしたまでです、ところでお嬢さんは大丈夫ですか?」


 幼い少女は、依然として母親に抱きついて泣き続けていた。


「もう大丈夫だよ、悪者はもうお姉ちゃんがやっつけちゃったから、もう怖がらなくてもいいんだよ。」


「す…っ…うん、ありがとう、お姉さん」


 まだ少し泣いているものの、見たところ既に落ち着いているようだ。もう少ししたら、大丈夫になるだろう。娘の様子を見た母親の方も、同様に安堵した。


「ありがとうございます、私たちはこれからどうすれば良いでしょうか?」


 この問いは、私に少し現状を分析させた。このハイジャックがこのまま終わるはずがない。状況が分からない今、このまま放っておいても事態は好転しない。ならば、私がすべきことは……


「そうですね、まず衣類を使ってこの強盗の手足を縛りましょう。そして、皆さんで彼を見張っていていただけますか。まだ彼らの目的が何か分からないので、私が少し調べてみます。」


「それはいいですが、お嬢ちゃん一人で大丈夫ですか?」


「大丈夫ですよ。見てる通り私は魔力持ちですので、それに…」


 そう言いなから、私は地面に転がっている刀を持ち上げた。


「今、武器が手に入れましたからね。」


 得物を持った魔力使いは普通の人とは違う、それが世間の常識だ。私の格好を見て、彼女はもう口を出さなかった。


「わかりました、お気をつけてください。」


「うん」


 話が終わり、私は次の車両に向かい走り出す。


 この列車は、先頭車両を含めて合計五両編成だ。貴賓室を備えたこの列車は、先頭車両と最後の車両からのみ乗降可能な方式を採っている。


 私がいる場所は列車の最後尾だ。前方の四両目は食堂車だが、あの強盗共の目的食料のはずがない。恐らく三両目にある貴賓室だろう。


 貫通扉を開けると、誰もいない。走る速度を少し下ろしてから、私は少し考える。


(お姉ちゃんは食べ物を持ってくると言ったけど、ここにいないどうしたら、もっと前の車両に避難したのか?武器を手に入れたからといって、軽率な行動は慎むべきだ。)


 魔力持ちは世界に広く認知されているものの、会いたいと思ってすぐ会えるほど人数がいるわけではない。恐らく三千人に一人くらいだろうか。主には家系によるが、両親とも魔力の所有者である場合、子供もまたそうである可能性は高い。


 魔力持ちとして生まれた私には、当然ながら固有の戦闘スタイルがある。では、なぜ魔力の所有者が武器を携行することで認識を変えられるのかと言うと、主に一般人よりも一つ多くの要素を持っているからだ。


 そう考えながら、私は手中の刀に目を向けた。使い手が違うため、デザイン的にはいつも使っている剣よりも大きいが、技術で調整できる範囲だろう。


 キン…キン…


 第三車両に近づくにつれ、次第に武器の衝突音が聞こえてきた。戦闘が終わっていないとしたら、観察する理由がなくなった


 目の前にある第三車両へ通じるドアを素早く開けると、目の端に映り込んできたのは、三人の男と、彼らと戦闘している一人の女性だった。その女性は貴賓室への道を塞いでおり、誰かの護衛と見て間違いないだろう。


「おい、誰か入ってきたぞ!」


「くそっ、もう一息だったのに、この女、邪魔しやがって!」


 女性護衛の体に目立った外傷はなく、三人の男と抗衡している。実戦経験は相当豊富だと見て取れるが、やはりここでも、彼女を私と同じく魔力持ちだと想定するのが妥当だろう。


 それなら、私が加わることで、この状況を一気に変えられるはずだ。


「加勢します!」


「ありがとう。助かる。」


 女性の方も即座に察知したようで、技に込められる攻撃性がさらに増した。


「ちくしょう、お前ら二人でこの女を牽制しろ、俺は新参者を先に片付ける!」


 親玉のような人が仲間に命令した後、私に目を向けた。


 合理的な判断だ。三人で攻め込んでも防衛線を突破できない護衛よりも、明らかに弱勢である私を先に排除する方が、戦況を有利に戻せるからだ。


 この状況であれば、彼を牽制するだけで戦術的には成功と言える。だが、今は武器が手にあるのだから、自分がどこまでできるか試してみてもいいだろう。


 近づいてきたリーダー格の男に、私は怯まず、持っていた刀を真っ向から振り下ろした。


 私の斬撃を見た男は、力で押し返すのでなく、一歩引いて力の乗り切った後の刃を、得物の腹で受け流した


「バレたか…」


「お前らのような異類は結構分かりやすいんだよ。その刀はあいつのものだろ?なら、お前が何をしたいのか丸見えだ。」


「だが、たとえそうだとしても、私が為すべき事は変わらない!」


 一切退くことなく、私は攻撃の手を緩めず、自身の魔力を注ぎ込んだ刃を相手に振り下ろし続けた。


 対する相手は、攻防を織り交ぜた戦術で対応してきた。常に手中の武器の状態に注意を払いながら、時には力を競い、時には力を逃がして攻勢を化いした。


(この人は、魔力持ちに対処する手段を十分に理解している!)


 魔力持ちの戦闘スタイルには、非常に直接的な解釈がある。それは、持つ武器を『破壊困難である』と見なすことだ。


 魔力は世間の大部分の物質の中を流通させることができ、流通時の魔力は物質の性質によって消費されるものの、その物質を強化することができる。魔力の消費速度は、物質の複雑さの程度に基づいて決定される


 身体を強化しようとする場合、複雑過ぎるため、強化しようとする度合いに応じて必要な魔力の量も高くなる。一方で武器は異なり、使用されている物質がより単純であるため、魔力で強化した際の効果は、身体と比べて非常に顕著に現れる。


 この現象が魔力持ちにもたらす利点は、武器を使う際に一般人と躊躇なく力を競い合えることだ。自分の力、武器の靭性や鋭利さといった要素で相手を凌駕する。この結果、大多数の人々が魔力の所有者と対峙した際、どう足いても武器の方が早く損壊する、ということになる。


 目の前の敵が取った対応手段は、相当老練だと言える。過度な技術に頼ることなく、ただ自分の武器を守りながら、相手の体力を消耗させているのだ。


(だが、長期戦こそ、私が望むところだ。)


(相手も、このまま膠着状態が続くことが不利だと分かっているはずだ。必ず隙を狙って攻めてくるだろう。私がすべきことは、その隙を与えないことだ。)


 私が体勢を崩さずに何度か打ち合いを続けた結果、相手の男は我慢の限界に達したようだ。


「やはりお前らのような異類と戦うのは時間の無駄だ。やりたい事はいつも単純だな。」


「利点を活かすのは、理の当然ではないか。このまま嫌だったら投降したら。」


「いや、もっと単純な手があるじゃないか。」


 言った直後、男はそのままりかかってきた。


 キン!


 武器でこの一刀を受け止めた後、衝突音を聞くだけで全力だと感じ取れた。こいつ、命懸けで来るつもりか?


 まるで私が考えていた通りかのように、相手の攻撃はもう手加減がなく、振り下ろされる刃は全てが全力での激突となった。


 だが、これによってもたらされた影響もまた明白だった。男が手にしている武器には、既に刃こぼれができ始めていたのだ。


「いいのか、武器が持たないよ」


「壊れたって構わないだろ、どうせお前はもう一本持ってるんだからな。」


「はぁ?」


(本気なのか?それとも、自分の武器が壊れても私に勝てると踏んで、もう構わないというのか?)


 キン!


 刃が再びぶつかり合った後、相手は刀を引き離さず、そのまま力任せに押し込んできた。完全に力比べになっている。


「この!」


 不味いと感じ、直ちに身体への強化を上げた。このまま壁際に追い詰められるわけにはいかない。


「あんまり舐めると困るわ!」


 魔力はゴリゴリ削られるが、どうにか互角に渡り合える程度まで強化できた。


 相手の武器を見ると、既に風前の灯火のような状態だった。もう少し耐えれば、勝敗は決するだろう。


(え?)


 男の余分な動作に気付いた時には、既に手遅れだった。


 男は力比べになっていた刀身をずらし、片手で持ち替えた。同時に、空いた左手で懐から匕首を取り出し、私に突き刺し込んできた。


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