トカゲ?
顔はトカゲ。
皮膚も緑。
なのに服を着て、靴も履いている。
中野ブロード●ェイでよく見るフィギュアのようだった。
「なにこれ。」
「知らぬ。この者が操縦席に座っておったのだ。」
こう小さくては心拍なんてわからない。胸郭を見ると僅かに上がり下がりしている。呼吸数は12回、人間なら正常範囲だ。とりあえず出血してないか身体確認する。
大丈夫そうだ。けど、内蔵損傷とか脳挫傷は見た目ではわからない。
「ハナ、この生物のスキャンして欲しい。」
「え?それは構わないけど・・・。仮に何か見つけた所で処置は出来ないわよ。」
「うん。一応。呼吸してるってことは生きてるってことだろ?」
嫌そうな顔を一瞬見せたハナ。が、渋々トカゲに手をかざす。
10秒ほどだろうが。
「脳挫傷、内臓破裂はないみたい。けど、右の大腿骨にヒビが認められるわ。ただ、墜落したときに受傷したのかどうかはわからないけど。」
「右の大腿骨だよね。」
俺はこのトカゲの足に触れる。熱感・腫張はない。皮膚を見る限り異常はない・・・・と思う。何せ緑だからわからない。
「なら、気絶してるってことなのかな。」
「わからないわ。一応、心電図も取ったけど、トカゲには心室が一つないから、何が異常なのかわからないもの。」
そうだよな。哺乳類と呼ばれる俺達には心室と心房がそれぞれ左右に4つの部屋に別れていているけど、魚類は1つずつしかないし、爬虫類は3つにしか別れていない。
これ、スッゴい前に生物の先生が言っていた。
こういう時に昔の記憶がまるで引き出しを開けたように出てくるから、脳は凄いよな。
「とりあえず、拠点に連れていくか?」
「タケル殿、待たれよ。」
パチンッ
いきなりトカゲにデコピンしたレビルさん。
気を失い、もしかしたら何か怪我があるかもしれないトカゲをいきなり弾いたレビルさん。この人は色んな意味で魔王かもしれない。
「いでっ!」
声がした。
「何すんだよ!下等生物が!」
トカゲが喋った!トカゲが喋った!
恐らく、スイスの山奥で親友の金髪女子が車椅子から初めて立った時、こんな驚きだったのだろう。ク●ラの気持ち、今わかったぞ。
「なにしてくれてんだ!離せ!離せ!」
首根っこをレビルさんに掴まれ、トカゲはバタバタ四肢を動かしている。
それを見たサファイア。
牙を出し、『ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッ』と、喉を鳴らして威嚇している。
「ちょ、ちょと待てよ!そこの四つ足下等生物がミーを狙っているぞ!助けろ!助けろ!二つ足下等生物達!!」
こんな失礼なことを言われて、我慢する俺達ではない。
「レビルさん、土に埋めてサファイアの餌にするか。」
「よいのですか?珍しい生物ですが・・・。まあ、タケル殿が仰るのであれば構いませぬ。」
そう言って、トカゲを摘まんでいる右手ではなく、左手だけで木の枝を使いながら土を掘り始めた。
「ちょと、なにしてんだよ!下等生物の癖に!離しやがれ!」
まだご自分の立場がお分かりにならない物言うトカゲのようですね。 それならば、悪役を演じて見せましょうか。
「ハナ、このトカゲに火を付けたいから、木の枝を集めてくれる?」
「・・・あ!えぇ、わかったわ。盛大に・・・・燃やしましょう?」
演じきれないハナ。最後が疑問系なのを除けば満点な回答だったのに。
「ま!待て!そういうことはしてはいけないと教わらなかったのか!?」
「誰にだよ。」
「遺伝子に組み込まれているだろ!そういうことするとストップするようにしてあるはずだ!」
「ない。話すトカゲにそんな事を言われる必要はない。それに、俺は母親から習ったんだ。『人を見下すやつには容赦をするな』と。」
嘘です。
けど、効果は絶大なようだ。
顔も緑だからよくわからないけど、青ざめている・・・気がする。
「タケル殿、穴が掘れましたぞ。」
と、言いながらレビルさんはトカゲを穴に入れる。
「わかった!頼むからミーの話を聞いてくれ!今後一切、お前ら下等生物をバカにした態度はとらない!」
「下等生物って私達のこと?レビル、入れちゃいなさいよ。」
ハナ、演技に本気が見えてきましたよ。
「クククククククッ、我が火を着けてやろう。燃え尽きたら貴様の頭蓋骨を、我の書斎に飾ってやろう。そうだ、その腓骨をペンに使ってやろう。骨盤はペン置きにでもするか。」
ディディ参戦。コメント内容がシャレにならない。その尖った犬歯を見せられながら言われると、怖すぎる。
「違う!いや、違います!許して下さい!バカにしたわけではないんです。ただ、ミー達の世界ではやはり実験動物は下等生物として・・・・・」
?
実験動物?
「タケル殿、土を被せてよいのか?」
実験動物・・・話の流れからいくと、今このトカゲが言った実験動物というのは俺達の事なんだろう。
こいつはなにか知っている。何で俺達がここにいるのか、何故四方が硬い見えない壁に閉じ込められているのかも。
出来れば情報を聞き出したい。
「って、おい!レビルさん!トカゲ埋めたの!?」
考え事をしていたら、レビルさんが持っていたトカゲを掘った穴に入れ、土を被せて終わっていた。
「え?無言であったので、埋めていいのかと思い・・・。」
「だして!トカゲだして!」
「了解した。」
1度埋められたトカゲが土の中から掘り出される。
緑の皮膚は土で汚れ、くすんだ焦げ茶色のようになっていた。
トカゲは肩で激しく呼吸をしている。
「殺す気か!貴様ら、ミーを殺す気なのか!」
ここで柔和策をしてはいけない気がした。
「この土のなかに入り狼の餌になるか、その実験について話すか、どちらがいいか決めろ。」
俺はトカゲの目を見る。
「あと10秒で答えをださないと、埋める。」
「え?無理!無理だって!ミーには決められないよ!」
「残り5秒。」
「・・・・わかった!答えるから!ミーの知る範囲で答えるから!」
「レビルさん、一応拘束しといて。」
「応。」
そして、俺達はこのトカゲの尋問を始めることになった。
『下等生物』というセリフはベ●ータのもの




