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孤島奮起  作者: つふら
鬼があらわれた
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72/126

北への探索


ハナ暦 6/4


今日は北への探索日。


だいぶ暖かくなってきたので、本格的な雨季が来る前に行ってみようということになった。


窓を開けると、ちょうど東から太陽が顔を出したくらい。


木の台においてある水桶で、顔を洗い、ナイフで髭を剃る。この間、ちょっと反り忘れただけで、ルルから非難轟々だった。


麻のサンダルを履いて、外に出ると、犬用ハーネスを咥えたダイヤが俺の部屋の前にきちんと座っていた。


そんなにお留守番が嫌なのか、ダイヤよ。でも今日は荷車使わないから、ハーネスも使わないぞ。


まぁ、今日はルビーに留守番頼んで、ダイヤを連れていってやるか。


ダイヤの頭をガシガシ撫でる。


土間に行くと、キヌコさんがもう竃の火入れや水汲みを終わらせていた。


「キヌコさん、おはよう。朝仕度、始めててくれたんですね。すみません。」


「いいんだ、ホープがめんずらしく早起きしたから、わだしも起きちまったんよ。気にせんでええよ。」


ホープはハナに遊んでもらっており、ご機嫌だ。最近、『あー』とか『うー』以外にも言葉を覚えてきたようで、自分の事を『ホー』なんて言うようになってる。かわいい盛りなんだろうが、赤いからなぁ。かわいいのか、よくわからないんだ。顔は安定のアニーだし。


俺の姿を見つけると、這いずって俺の方に近寄ってくる。


「たー!」


おそらく、俺の事だ。


「おはよー、ホープ。」


抱き上げるけど、赤ちゃんといえど重いよな。世の中の母親はこの体重の重りを毎日上げ下ろししてるんだから、凄いもんだよ。


だが、赤子でも鬼の子。たまに顔面に打たれるチョップは割と痛い。しかも的確に目や鼻の頭を狙ってくる。末恐ろしい子だ。


ホープを居間におろす。朝食の仕込みはキヌコさんがしてくれていたので、俺は昼食を作ろう。


昨日のうちに発行させておいたパン生地をヘビ状にして、形成。次々焼いていく。焼き上がったパン切れ目を入れる。そこに、猪肉で作った厚切りベーコンを挟んで、完成。これを40個ほど用意する。俺達がもっていく分と、キヌコさんやクジタとディディ分だ。



「おはよー。今日は不調よ。」


ルルが土間に入ってくる。獲物はルビーの獲ったウサギだけだった。まぁ、そんな日もある。


身支度を整えたシャインやカムイ、レビルさん、クジタが次々と居間に集まってきた。ディディはいつも最後。


みんな揃ったところで、『いただきます』と、食べ始める。


キヌコさん、味付け、うまいっすよ。人が作ってくれる料理は自分で作るよりもうまく感じるのが不思議だ。





朝食後、昼弁当を籠にいれ、俺・レビルさん・ハナ・ルル・カムイは北に向かって進み始める。お供はダイヤ・サファイア・エメラルドだ。


ルビーは思いの外、落ち込んでいた。ごめんなー。




北路手前は木を伐採・整地済。


「じゃ、拙者とカムイ殿は先に進みますぞ。」


「よろしくお願いしまーす。」


2人のコンビプレーは、ベテランの餅の突き手・返し手のようだった。


「せいっっ」


レビルさんが斧で木を一刀。


「ハァッ」


カムイが斬られた木を持ち端へ置いていく。



俺達の10m先で「せいっっハァッ」「せいっっハァッ」と掛け声が響く。


北への道が凄まじい勢いで開けてくる。今年も自然保護団体に心のなかで謝罪しておこう。



バサァァ


ドウゥンン


ズサザザザァ


マイ●ラよりも早いスピードで伐採されていく北路。


まぁ、先頭は2人に任せて、俺達は探索しながら進もうか。


拠点から1kmほど進むと、ややひんやりしてくる。


「少し気温が下がり始めたわね。」


俺達の拠点場所は温帯気候。北に向かって歩くということは、寒帯気候に入っていくということだ。


2時間後、2㎞ほど歩いたところで、俺達は上着を羽織る。植物も広葉樹よりも針葉樹が増えてきている。


今日の探索は3時間と決めていたので、その時点で引き返すプランだ。


「寒いわね。」


ルルは寒がり。麻の帽子も被っている。ちょっと可愛い。


「この辺、僕がいた山の木に似てる。」


シャインがいた山は標高が高かったのかもしれない。なんてこと考えていたら、いきなりハナが俺の口を手で塞ぐ。ダイヤ・サファイア・エメラルドが急に前足を屈曲し身構える。ルルも弓をゆっくり取り出す。シャインも腰に下げたお手製の鉄剣に手を添える。


何かいるんだ。


ハナを見ると、小さく頷いて俺の口に当てた手をどける。


俺も腰に下げたナイフに手をかける。




先に動いたのはサファイア。何もいないと思っていた茂みに向かって飛び付く。すると、茂みから黒い影が飛び出る。


太陽の光で写し出されたその姿、それはオオカミ。


銀色の毛。体はダイヤと同じくらい、大人のオオカミだ。


着地する前にダイヤが飛びかかる。


「ガヴヴヴヴヴヴ」


2匹のオオカミが転げ回る。俺・シャイン・ルル・ハナはその場から少し距離をとる。


ルルは弓に矢を持ち構えた。


「ルル、やめてくれ。」


「なんでよ。」


「なんか、嫌なんだ。」


「なにそれ。あんなに散々猪や鹿を食べたのに、今さらオオカミを食べれないとか言わないでよね。」


「そうじゃない!いや、それもあるんだ。あるんだけど、オオカミに関してはダイヤ達に任せようよ。」


「タケル、ダイヤ達がオオカミだって気がついてたの?!」


「ディディが教えてくれた。」


そんな会話の最中にも、野生オオカミとダイヤの命の取り合いは続く。


サファイアとエメラルドはいつでも飛び出せるよう、頭を低くして構えをとっている。



「ガァァァヴヴ!!!」


ダイヤが野生オオカミにマウントポジションをとった。


トドメをさすと、誰もが思った。けど、ダイヤはその野生オオカミの首筋を舐めた。出血部位をいたわるように、舐めた。


「ルル、どうやらダイヤは惚れたみたいだぜ?あのオオカミに。」


「はっ?なにいってるの?」


戦意をなくした野生オオカミは、全く動かない。けどダイヤはマウントを崩さない。


「ダイヤ、いいよ。逃がしてやろう。」


俺は声をかける。


ダイヤはゆっくりと警戒したまま野生オオカミの上から降りた。その瞬間、野生オオカミは飛びはねるように森のなかに消えていった。


「よくやったな、ダイヤ。」


ダイヤの頭を優しく撫でる。所々、出血はしているが、大きな傷ではない。


そんな飼い主と犬の温かいやり取りをしている最中、ルル達が俺達に向かっていきなり矢を射る。


矢は俺の髪を数本弾き飛ばし、後ろへ飛んでいった。


「チョッ!ルル!何すんだよ!」


俺、動揺。


弓を射られる経験は26歳にして初体験。


「馬鹿、後ろ見てよ。」


俺は首だけくるりとまわす。


10mほど後ろ、首の中央に矢の刺さった角が立派な鹿が立ちすくみ、サファイアがその喉元目掛けて飛び掛かってる瞬間だった。


サファイア、会心の一撃。


「あれはトナカイね。」


と、ハナ。


「さっきのオオカミはこいつを追っていたのね。」


と、ルル。


トナカイ。子供達の夢と物欲を満たす存在、生で見たのは初めてだ。


俺の思っていたトナカイは茶色でフサフサの長い毛だけど、こいつは黒い短い毛だ。


「こっちに向かって襲ってきそうだったから、つい射ってしまったけど・・・・この辺で血抜きできる場所は無いわね。」


「ルル、この森の左手から水の音がするわ。」


「ホント?なら、そこで血抜きをするしかないわね。緊急とはいえ、殺生したのだから、最後まで大切にいただかないと。」


うーん。拠点から2㎞ほど。予定より進めなかったけど、今日はここまでにしておこうか。


「よし、北に進むのはこんなもんにして、川の方に進んでみようか。」


俺は先に進む人型ブルドーザーの二人組に声をかける。


「レビルさーん、カムイぃー!今日は前に進むのはこの辺にしとくから、戻ってきてくれー。」


「りょーかいーしたー!」


伐採音が止む。


暫くすると、2人が戻ってきた。俺達は寒くて上着を羽織っているのに、この2人はいい汗をかいている。


「いやいや、切りごたえのある森であるな。カムイ殿のお陰でスイスイ進むことが出来、ありがたい。」


「レビルの切りっぷり、すげぇな。おで、そげな早ぐできん。」


お互いを称賛しあうこの鬼と魔王。どの世界でもこんな穏やかな2種族のやり取りはないだろう。


「おぉ、立派なトナカイではないか。」


「そうなんだよ。とりあえず血抜きしたくて。そしたらハナがこっちの方から水の音がするっていうから行ってみようと思って。」


「相わかった。次はこちらの方向に向かって伐採していけばよいのであるな?参ろう!カムイ殿!」


「わがっだ!!」


あー、2人の伐採魂に火が灯ったよ。


先ほどまで静かだった森に、再度伐採音が響きだす。


森の生き物の皆さん、お寛ぎの所、本当に申し訳ありません。




30mほど進んだ所に、沢が見えた。道も少し坂になっているので、この沢を上流に進むともしかしたら山の方にいくのかもしれない。


トナカイの喉元を切り、足を近くの木に結びつけて沢に沈める。


「ちょうどいいから、この辺で昼食にしようか。」


少し肌寒いので、焚き火を組み、火付け石で着火する。


レビルさんが切り落とした木株にそれぞれ腰掛け、朝作った猪肉サンドを食べる。


「いやー、仕事後の飯は、やはり旨いですな。」


「そだな。うまい、うまい。」


パンは飲み物ではないですよ?そうツッコミ入れたくなるくらいの勢いで俺の作った猪パンはなくなっていく。30個持ってきたのに、20個は2人の胃袋へダイブしていった。


このあたりは、目新しい食材や草花は見当たらなかった。やっぱり寒い地域ではそんなに植物は育たないようだ。


しかし、シャインがあるものを見つけた。


「これ、銅鉱石だ。あ、これも。・・・これも!」


沢の石を何気なく見ていたシャインが、次々と石を拾い始めた。


「なに?ドウコウセキって?」


「銅鉱石、それは・・・・・・・」


ハナウィ●ペディアが発動したのでふんふん聞く。つまり、銅が作れるってことだな。となると、お洒落なレストランとかにある鍋やフライパンが作れるってことだな。


いいじゃないの。それ。竹から急にお洒落な感じになるじゃないの。


俺達は積めれるだけ積めて、血抜きしたトナカイを持って拠点に戻った。





探索はまだまだ続きそうた。

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