年越し
拠点気温、8度。
『あの話』の後、ハナは色々計算していた。俺がここに来た6/3を起点に日にちの修正を行っていた。
その結果、『1日24時間、1ヶ月30日、一年360日』の可能性が極めて高いという結論に至る。これを俺は『ハナ暦』と命名。
今日の日付、スマホ表示ではまだ12/27だが、『ハナ暦』では12/31、大晦日に当たるのだ。
大晦日ってだけで俺、なんかワクワクしてる。去年も一昨年も大晦日は夜勤、正月は明け。また次の日に夜勤と、ハードスケジュールだったのだ。ってか、この仕事についてから、正月近辺が休みだったことがない。
今夜は年越しそばをゆっくり食べたい。
蕎麦の実を石臼で粉にし、水を入れて練っていく。粘り気がなくなったら、丸めた生地を寝かす。少し寝かせた後、綿棒(レビル作)で生地を広げる。広げた生地を折り畳んだあと、一定間隔の棒状に切っていく。
最初の頃はうまく混ぜられなくて、何度も蕎麦がきのようになってしまった。
出汁は干し肉と鰹と昆布。塩で味を整え木の器(レビル作)に、湯がいた麺と燻製鴨肉とネギを入れ、上から汁をかける。なんちゃって鴨南蛮だ。
除夜の鐘はない。紅白も笑ってはいけない番組もない。けど、大晦日に蕎麦をゆっくり食べてるってのが、いいんだよ。
ズルルルルルルルッ
蕎麦を啜る音。レビルさんだ。
「ちょっと、レビル!音を出して食べないでよ。下品よ!」
「何をおっしゃるルル殿。これが蕎麦の正しい食べ方なのだよ。蕎麦は音を出しながら食べるのが粋であると、拙者のDVD・・・ではなく古代文献から学びましたぞ。」
その古代文献ってなんのDVDを見たんだ?一度魔王様DVDコレクションのラインナップを確かめてみたい。
「俺の国では麺類は啜るもの、みたいな習慣があったから。抵抗ないよ。でも、やっぱり他の国の人からしたら下品って言われたな。」
「食事は音を出さないように食べるのがマナーよ。」
竹製スプーンとフォークで上品に鴨南蛮を食べてるルルには、絶対に出せない音。
「僕も音を出して食べてみようかな。」
「やめなさいシャイン。下品になります。」
みんなから下品下品と言われ、しょんぼりレビルさん。
「でも何で今日の夜ご飯は麺なの?」
「俺の国では一年の最後の日に蕎麦を食べる習慣があるんだよ。」
「へえ、何で?」
「来年も細く長く暮らせるようにとか、健康に過ごせますようにとかで食べるってらしいけど、俺にとって子供の頃からの習慣みたいなもんだね。」
まぁ、俺の故郷では年越し蕎麦は、沖縄そばという麺だったけとど。
「何処の国にもそういうのあるのね。」
「ルルの国は?」
「私の国は寝る前にレモンハーブティーを飲むの。『来年も実りある一年に』って意味だそうよ。今日も飲もうと思って、みんなの分も作ってあるわ。」
「お、楽しみだな。レビルさんの国ではなんかイベントあった?」
「何か特定のものを食べるということはないが、若者達は酒を飲んでいたぞ。拙者は眠くて寝てしまうがな。」
「僕の国も大人達は酒を飲んでたよ。」
何処の国も基本、酒なんだな。
「私の国は葡萄を12粒、食べていましたわ。来年も金銭的に恵まれますようにとか子孫繁栄とか祈りながら食べるそうですわ。」
「へぇ。色々あるんだね。なら食後、葡萄12粒食べながら、ルルのレモンハーブティーを飲もうか。」
「いいわね。それ。」
社会人になって初めて、ゆっくり過ごせた大晦日だった。
あと3ヶ月ほど寝ると、リアルお正月




