新居の生活、朝の巻
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新居に来て約2ヶ月。
俺はベッドから足を下ろし、体を起こす。グッと背伸び。
スマホを開くと5:42の表示。ハナが定期的に充電してくれるんだ。
まだ寝ているレビルさんを起こさないようにして、そっと部屋を出る。外気温が下がってきたこともあり、レビルさんの赤ふんどしはここ最近、見てはいない。見たいわけでもない。
外に出ると、すぐ中庭がある。
俺の朝は水汲みから始まる。
木桶の作り方を知った俺は速攻で木桶を作った。竹と木だけで作れるなんて、知らなかったよ。それにショルダー竹筒より効率的に川の水を集められるからな。
桶が前後についている竹・・・ハナ曰く『担い桶』っていうらしいんだけど、それを肩にかけて川に行く。
この担い桶も俺が『そうだ!こうやったらいっぺんに水を運べるんじゃないのか?』なんて言ったらさ、ハナが『これは室町時代から明治初期にかけて・・・・・』と、Wikiped●a音声読み上げ機能のように話し出したもんだから、俺の面子もプライドもなくなってしまった思い出深い代物だ。
で、その担い桶で水を汲み、土間の側においてある陶器の壺に水を入れる。これは大きいもの好きドワーフが作ってくれたけど売れなかったヤツだ。
そうそう、川の水。もう煮沸消毒はしてない。ハナが水質検査をしてくれたら、飲み水として問題ないことが証明されたからだ。凄いなぁ、未来のアンドロイドは。煮沸の時間を返してくれ。
ってなわけで、2つあった大きな陶器個の壺、1つは川の水。もう1つは海塩作成用の海水が入っている。
竈に火を灯す。火打ち石ではない。囲炉裏の火種を入れるだけですんでいる。囲炉裏の火は今、ずっとつけっぱなしだ。何故かというと、夜間はずっとハナが火の番をしてくれているからだ。
「ハナ、おはよ。」
「おはよう、タケル。」
いつもの朝の会話。アンドロイドは睡眠しない。スリープモードといっても、2割くらいは起きている状態だ。なので、ハナが自ら火の番をしてくれているのだ。
「よく眠れた?」
「お陰さまで。ハナがいてくれるから安心して休めるよ。ありがとう。」
竈に火を入れる。
竈は大きな鉄鍋サイズにあわせて作ってもらった。そこに海水を入れ火にかける。海塩作りは毎日欠かせない作業だ。
「おはよ。」
「おはよ、ルル。」
ルルは俺より早起きだ。朝起きては犬と狩りに出掛けている。これも変わらない日課。
今日の獲物、ルルは鹿。ダイヤは兎、ルビーはなし。サファイアは蛇。エメラルドはキノコ。無論、獣系はルルが解体済み。
スッとルルは竹筒を俺に差し出す。わかってますよ。その中身は脳味噌ですね。
新鮮な鹿が手にはいると、ルルは脳味噌の蒸し焼きを要求してくる。猪よりも鹿の脳味噌が好物らしいから。俺はスッと竹筒を受けとる。
因みにいまだ獣の解体はチャレンジしていない。いいんだよ、ルルが出来るから。
さてと、調理だ。
朝食は大体、昨晩の残り物や保存食を調理したもの。あと朝、ルルと犬が捕ってきた獲物。
今日は、鹿肉の竹串焼き、クズ野菜と色々豆のスープ、兎肉と蛇肉の香草サンドイッチ、赤魚の竹筒蒸し、焼きバナナ、果物の盛り合わせと、鹿脳味噌の竹筒蒸しだ。
旧拠点の頃とそんなにメニューは変わらない。けど、石臼を作ったことによってパン・ソバなど麺類のような炭水化物も作れるようになった。
ハナも手伝ってくれるから、調理時間はグンと、減ったね。
あと、キッチン周りがかなり使いやすくなったな。雨風で火が消えるかもしれないドキドキ感、ここに来てから感じなくなったもん。
土間にお皿を4枚並べ、その上に昨日作ったもつ煮込みと今日の新鮮なモツを入れていく。
「おー、今日もうまそうですな。」
「・・・おはよ。」
ガリガリガリガリガリガリガリガリ
まて、お前達も今いれるから。土間の勝手口を開けると、犬達が飛び込んできた。
ハイハイ、おはよう。ご飯あるから落ち着け。ダイヤ達ももう立派な成犬だ。体長は1m以上になってるし、犬歯もかなりの鋭さだ。
はい、食べよう。
「「「「「「いただきます。」」」」」
ふぅ、俺の朝仕事が一段落したぜ。




