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孤島奮起  作者: つふら
ドワーフとアンドロイドと馬があらわれた
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拠点への引っ越し

9/12


遂に、新拠点が完成したと、モーニングミーティングでレビルさんが宣言した。


「屋根に結構苦労しましたが、雨風をしのげる所まで組み立てました故、そろそろ転居しても良いですぞ。」


レビルさん、本当にお疲れ様です。今夜、飲まずにとって置いた最後のビール2缶、開けちゃいますよ?ワインも飲んじゃいましょうよ。今夜は新しい拠点で作る初めての夕食、オラ、ワクワクしてきたぞ。


「あー、なんかこのオンボロ拠点ともついにお別れね。よくこの作りで、この間の台風でも持ちこたえたものよ。」


それは俺も思うよ。先週の台風もかなり激しかった。風よけの竹柵がなかったら、俺達は今頃、家なし大人になっていたと思う。


「ここの竹柵、全部抜いて畑に持って行くんでしょ?」


「うん。畑の風除けにするからさ。」


今、俺達は新拠点近くに畑を作っている。人手が増えて、午前の食糧確保の時間が短縮された。今まで午後やってた仕事を全部午前中に終わらし、午後はレビルさん以外の皆で畑作りだ。


もちろん鍬なんかないから、竹を加工して小さい鍬を作った。それでも地面を掘り、石とかを取り除いて、土を耕していく。


植えるのは、シャインの馬車にあった種。あとカボチャやナス、豆類は乾燥させてから植えた。ハナの知識に『古来の種の作り方』ってのがあって教わった。品種改良しているものはダメらしいけど、シャインの国だ。多分そこまで改良進んでないから平気。


人参や大根やジャガイモやキャベツは今、それぞれ真の部分を植えて花を育てている。種を作るために、まずは花を育てなければならないのだ。


そういう知識を教えてくれたのもハナだ。


ありがとう、ハナ。


最初は遠慮がちだったハナも最近はよく自分の思ったことを話すようになったんだよ。最初は機械みたいに・・・・ってか機械なんだけど、淡々と話す感じだったのにさ。


「この拠点から新しい拠点がみえるのですが、なんか草原に建つオシャレなログハウスのようですね。」


ハナ、もっと褒めてやれ。レビルさんの顔が今日イチの笑顔だぞ。むしろ、涙目だぞ。


「おっさん、僕のために炉を作ってくれる約束はどうなったの?忘れちゃったの?」


「無論、覚えておるぞ。新拠点の内装も大体片づいたので、中庭に作る予定であるぞ。」


「やったー!」


魔王に対しておっさん呼称するこの少女、シャインは代々続く鍛冶屋の跡取り娘らしく、子供の頃から父親に仕込まれていたそうだ。ありがたいことに、鉄鉱石があるのでシャインとしてはいち早く鉄を打ち込みたいらしい。


鉄製品が出来るなら、包丁や鍋、釜や鉄製の鍬なんかも作れるんじゃないかと、俺はこっそり期待している。





「よし、じゃぁそれぞれ朝の仕事を終わらせようか。」


俺専用の籠を持ち、リュックを背負う。


「そうであるな。」


レビルさんは特大の籠を背負う。


「うん、いこー!」


シャインにも背負える籠を作ってやった。


「じゃ、私たちも行きますか。」


「そうですね。」


ルルとハナもそれぞれ立ち上がり準備をする。


エメラルド以外の犬達も出発した。






昼食後、俺達は引っ越しを始めた。


次々と新居に荷物も運び入れる。段々と閑散としていく旧拠点。あんなに必死に建てたのに、なんだかもの悲しい。元々少しずつ荷物を運び出していたので、引っ越し自体はあっという間だった。


「どうしたの?」


高台から海を眺めていた俺の側にルルが来る。


「あーいや、なんかあっという間の4ヶ月間だったなって。」


「そうね。辛かった?」


「そりゃもう。でも、今思うと、夢中だったな。生きることに。」


「それは今もでしょ?これからもっと探しに行くんでしょ、この場所のことを。」


「そうだね。そうだったね。」


「ほら、竹柵も片付いたし、拠点もなくなったわ。」


後ろを振り返る。


朝までここにあった拙い竹の建物があった場所は、更地になっていた。拠点を支えてくれていた太めの木が立っているのみ。


簡易トイレも完全に塞いだ。



「行きましょ。」


ルルが俺の頭に触れ、撫でてくる。


俺は、なんか、泣いていた。


嬉し涙なのかな。なんの涙かわかんないけど、なんか涙が出たんだ。


ルルは俺の涙がおさまるまで、ずっと、ずっと側にいてくれた。


ありがとうルル、ありがとうレビルさん。ありがとうダイヤ達。ありがとうシャイン。ありがとうハナ。


涙が出たのは感謝だったのかもしれない。


「ありがとう、ルル。さ、俺達も行こうか。」


そういって俺は今日イチの笑顔でルルに笑った。

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