† 九の罪――殺し屋殺し(捌)
大地へと墜ちゆく身体より、ベルゼブブが抜け出て、彼女を抱えて降り立った。
「あんたは強い。でも、本当にそれだけでいいのか? その奥義だって自我がうっすいから使えんだろ。せっかくかけがえのない一人として生まれたのに、身代わりいっぱい生み出して自分を見つけてもらえねーなんて虚しいもんだぜ」
視抜こうとしても、いずれも虚無――信雄の瞳に映るのは、すべて他ならぬ北畠みつきであった。ルシファーの力はいまだ健在なようではあるものの、暗示や幻に惑わされないはずが、この有り様とは、契約者が引き出しきれていないことになる。
(……やっぱルシファーの器として、俺じゃ素体が弱すぎるのか…………)
意を決したように、彼はカルタグラの魔力を増幅させた。
「本物がわからねーもんはしゃーない、力技で全て迎撃し尽くしてやるよ!」
波動だけで人の生命力を奪うほどの代物。刹那の機微が次の瞬間の首のありかを左右する瀬戸際で制御など、人間の域を超えた離れ業だ。
そうしている間にも、再び多数のみつきが殺到する。
「――ざんねん、無理だよ」
同じように小さな唇を動かし、同じような声質で四方八方から囁く分身たち。
(集中だ。ここで匙加減を見誤れば腕がちぎれる……暴れさせ過ぎちゃ自爆。おとなし過ぎても墜としきれねぇ。抑え込めるだけの量で解放し続けろ――――)
「二郎系の味なんて力技で誤魔化せちゃうじゃん」って、よく言われるけど、逆に考えると、量が多くてマズい店は犯罪レヴェル。
こういうジャンルこそ味が大事だと、穏健派ジロリアンは語ってみるのです。
あのカロリーと臭いのリスクを冒して食べたのに、クオリティ高くなかったら割に合わないでしょう…………




