† 九の罪――殺し屋殺し(弐)
(――っぶねぇ……呼吸のタイミングちょっとミスったら死ぬな、これ)
みつきの速さは、依然として人間離れしている。
けど俺だって、前にやり合ったときよりは人間から遠ざかった。ルシファーとの同化が進みつつあるのか、完全に見切れてはいなくとも、感覚的に直撃を避けられてはいる。
とはいえ、このままではジリ貧だ。こっちは悪魔とシンクロしている反動で、心身が消耗してゆく。長年あのスピードと共に生きてきた彼女より、粘れる確証はない。
「ちょ、あぶ……ッ! 速い! 速すぎて危ないってー!」
やはり、あれでも手加減してくれていた部類みたいだ。あのときと違い、みつきは得物だけでなく、全身を魔力で覆っている。いかに強化された肉体といえど、これほどの超高速では動いているだけで、分解、発火……詳しい理論は知らないが、人間が原型を保っていられるような領域ではないぐらいは察せられた――そう、言うなれば戦闘機。人体の適応限度のその先にある機動力を、本人が耐えられる限界まで出すという勝負でもある以上、彼女にとって本気の戦いとは、全力であって全力ではない。
つまり、彼女の実質的な速度には天井がある。ならばこちらは、天井を破ろう。
必然的に自慢のスペックを出しきれないみつき。一方の俺は悔しいながら、自壊にはほど遠い安全運転だ。安全ゆえに、まだ飛ばせるだけの伸びしろがある。
どこまで限界に近づけるか、と、どこまで限界を突破できるかの対決。
――――ゆえに、
口内に火薬やスイッチとか仕込んでいるキャラを見ると、あくびしたり、ヒロインにぶたれた拍子に作動しないか、怖くなるのって私だけですかね?




