† 五の罪――運命(さだめ)との対峙(拾)
多聞さんはふと、自問するように呟いた。
「ん、どういう意味じゃ?」
「あ、いえなにも……それより、人外嫌いの彼が怪魔を主役に持ってくるとは引っかかります。むしろ派手に暴れる彼らを捨て駒に、裏の裏をかくぐらいやりそうな男だ。実際、彼がどこにいるか、つかめていないのでしょう?」
一握りの手勢で、二十一世紀のキューバ革命でもやるつもりだろうか。見つかれば終わりの少人数だが、目立たなさ過ぎれば心配も無用。自分たちが陽動と思わせ、あえてマークを緩めさせる一周回った戦法――考え過ぎのようで、彼は自らの手で的を一直線に射抜く者だと、あの日見かけただけに過ぎない相手の記憶が警鐘を鳴らしている。いや、俺が茅原と一度しか会ったことがない、と思い込んでいるだけではないだろうか……?
「まあ用心するに越したことはない。本人の居場所を引き続き捜索させる」
「では、持ち場につきますゆえ」
所長に頭を下げ、後に続く。
「――とは言ったものの、もうふところに入られちゃってるみたいだね」
たまには、あとがきっぽいことを。
タイトルの“昏き黎蔭の鉐眼叛徒”について!
「昏」は夕暮れ後の暗さを意味していますが、たとえ望みが薄くとも来るべき朝を目指してゆく内容から、一見すると矛盾している言葉をあえて選びました。そして「黎蔭」で「れいいん」の「い」を重ねて「れいん」と発音します。「黎」と「蔭」によって夜明けを示しつつ、後者は他者の助けである「かげ」とも読めるため、ダブルネーミングにしました。
最後に、主人公がデスペルタルという刀の使い手なので、ラテン語で剣士「グラディアートル」です。彼の瞳は金色で、片目を眼帯で封印していることから「鉐色」と「隻眼」もかけています。
「叛徒」に関してはネタバレになってしまうので割愛しますw




