† 四の罪――現世(うつしよ)の邂逅(肆)
「ああ、男をお持ち帰りした結果その子が産ま――」
「だまれ元二十六位」
こわい。
「それにしてもかわいい子だねー。どこで誘拐してきたのかな」
「ちょっと、ドスドスしないでください。ってか、デカい。チョコ食べてやっと眠ったんだから」
最近おかしいと思ったが、今日の彼女は特にキャラが不安定だ。生理だろうか?
「体格はしょうがないでしょー。って、やっぱおじさんのチョコは食べられちゃってたのね。にしても、最近のこういうの、よく出来てるねー」
謎の幼女をまじまじと見つめ、頭に被っている触角のような飾り物をツンツンといじくる、百八十センチ超えの中年男性。
「あ、ちょっと……!」
三条が制止したが、時すでに遅し。丸々とした目がゆっくりと開く。その、あまりに愛らしい顔立ちに、一同が思わず息を呑んだ瞬間――――
「なんじゃそちはーッ!? ぶ、無礼者め……吾輩は地獄元帥だぞ」
飛び起きた彼女が隊長の手を振り払い、甲高い罵声を浴びせた。
「えっとー、地獄元帥でハエっつーと、ベルゼなんとか?」
「そこまでわかるなら言ってあげなよ。あと、この子ハエっていうといじけちゃうんだ」
困り笑いを浮かべる三条。
「ま、けっこーブラックな仕事だし、ちっちゃい生き物でも飼いたくなるのもわからんでもないなあ」
「動物禁止っすよー」
「えー、そうだっけー? まあ犬とか役に立ったりするじゃん」
「警察じゃねーんで」
「そっかー。猫も?」
「アレルギーで戦闘に支障が出そうだから、とか? そういうのじゃねーすかね」
「ベルゼブブは?」
「まあ虫ぐらいなら」
「虫ではないわ! なにゆえここには吾輩も知らぬ阿呆しかおらんのだ。まさか、ご主人さまも存ぜぬというのならば、たっ……ただじゃおかぬぞッ!」
まくし立てて、顔を近づけてくる。小学生ほどの体格だが、羽を小刻みに動かして、目線を合わせているようだ。語勢に反して、高度を維持するのに精一杯なのか、必死にプルプルしている様子が申し訳ないけど滑稽だった。
「ああ、あいつなら俺ん中だ」
「なっ――そち、喰ったのか……ご主人さまを喰いおったのかー!」
川中島の戦いっていつも思うけど、あれ引き分けじゃないでしょ




