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† 三の罪――死神と演武(ワルツ)を(玖)

「ん、俺の前にいたっていう――つーか名前だけ似てても意味ねーじゃないすか」

 この名は親父が付けてくれた。さすがに信長はあまりにアレなんで、信雄にしたらしい。せめて信秀にしてくれれば、と何度も思っていたが、歴史オタクであった亡き彼とのつながりを感じることができるので、この平凡な響きも親父の死後、少しは愛着が湧くようになってきた。

「惜しい方をなくしましたね。展男さんほどの実力者がまさか倒れるとは」

「まさか、あの戦闘が彼との別れになるなんて……最後に見た、少し疲れましたって言う彼の後ろ姿、今でも忘れられないよ」

「……激しい戦いだったんですね。やっぱプロでも怪魔の前じゃいつ死ぬかわかったもんじゃねーな」

 追憶の扉も程々で閉ざし、俺も会話に戻る。

「いや、死んでないよ。植物状態だけどね」

 言葉づかいこそ柔和なままの隊長だが、仲間を慈しむようなまなざしが、戦闘の壮絶さや、助けられなかった無念を物語っていた。

「誰もあのときの彼に近づける状況ではなくてね」

 やはり、彼らでも余裕がないほどの死闘だったのか。

「あの現場、むごかったですね。頭が派手に割れて…………」

「真っ赤に染まったタイル、痛々しかったなあ」

「タイル……?」

「ああ――――」

 俺の疑問に、遠くにいる彼を見つめるかのように顔を上げる隊長。

「戦闘後、シャワーを浴びに行って二度と目覚めぬことになるとは思わなんだ」

「えっ、シャワー? タイル…………」

 ようやく理解した。つまり、俺は風呂場で足を滑らせて再起不能になった人より下らしい。何はともあれ、まだまだ修行が足りないということを痛感させられた一日だった。


† † † † † † †


(また、信雄が強くなってる…………)

 口ではああ言ったものの、新人の頃より見てきた桜花は、彼の成長を最も実感していた。

「ぼくも早く強くならないと、チーム多聞丸の初期メンバーで残っているのは、もうぼくだけ……このままじゃ、次はぼくが――――」

 独り言をこぼしながら、夜の回廊をゆく。日本支部の最下層、地下五階の奥にある倉庫の隠し扉を開け、彼女はまだ進んだ。

(……緊急用の裏通路――よし、だれも来てないみたい)


 ハンドルかマイクを握っている時は人格が変わると言われますが、ラノベを書いている時は本来の自分を出せている気がします。

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