オスムニアでの1日
「遅くなってすみません。なんとかクロノスタイガーを倒しました」
「おお、本当にありがとうございます。今日はこの村全員でお祝いしますのでどうぞ休んでいってください」
「ありがとうございます。ですが僕達は人間の国オスムニアに行かなければならないのです」
「そうですか。私達は何もできませんが、本当にありがとうございます。どうかお気をつけて」
「いえいえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
そうして俺達は人間の国オスムニアに足早に向かった。
「さっきの魔物の種族はイエティ族と言ったが、どういう種族なんだ?」
「彼らは水の扱いが非常に上手な種族でな、彼らの作る農作物は人間の国でも最高級のものなんだ。だから、こういう所で恩を売っておくことで、困った時に助けてくれるかなって思ってな」
「ラミルって結構そういうタイプなんだな」
「そういうタイプってなんだよ。どっちにも利益があるからいいじゃないか」
ラミルが笑いながら言う。
「まあ、そうだな」
「そんなこと言ってたら、いつのまにか着いたぞ、やっとだ。日が落ちる前に着いて良かった」
「わぁ、すごいな。やっぱり人間の国はたとえ異世界でも親しみを感じる。木の温かい家の枠組みとそれに囲まれる無機質なレンガ。これらが上手く噛み合っている。ただ、まあどっちかと言うと日本の家ではないな」
「キク!あそこに行こうよ」
「え?どこ。なんだあの建物?」
「図書館だよ。色々な本があるんだ。スキル関係で役に立つものもあると思うよ」
「本当か、今の俺にぴったりだな。早く行こう」
そうして俺達は巨大な図書館に入った。
「図書館の中は大部分が木の造りなんだな」
「この木の温かさが図書館には合うのだろう。なんだか、この壁を見ると落ち着く。ごめん、キク、トイレに行ってくる」
「え?魔物ってトイレに行くのか?」
「僕達魔物は排泄をしないんだ。でもなんか行かないとソワソワしちゃって。どうしてか図書館に来るといっつもなんだよな」
「まじかよ、図書館に行くとトイレに行きたくなるこの現象は、こっちの世界にもあるのか。それに排泄の必要のない魔物まで、これもうなんかの魔法だろ。まさか、現実世界に魔法があるなんて……」
「ラミル。ごゆっくり」
「なんか恥ずかしいな。待っててね。キク」
「それにしても、この図書館は趣きがあるな。そうだ、スキルの本を探そう。なんか役に立つものがあるかもしれない。すいません。スキル関係の本はどこにありますか?」
近くにいた司書さんに話しかける。
「こちらですよ、付いてきてください」
そうして俺はエントランスを抜けて違う部屋に移動した。
「広!!なんだここ!4階まである。すごいなー こんなに大量にスキルの本があるのか。さてと、下位のスキルの本はどこかな?」
そうして俺は一冊の本を手に取った。
「たぶんこれか。なになに?(下位スキルは全部で、月、火、水、木、金、土、日の7つある)と。えーっと、それで(土、日は他のスキルと一線を画していて、それを獲得できるものは僅かしかいない) へえー なんか奥が深いな。下位スキルって言っても難しいのがあるんだな。まあ、一番使いやすいが故に極めるには難しいってことか」
隣のページには技に関することが載っている。
「技っていっぱいあるんだな。6割くらいみたことがないやつが載っている。本で読んでも使えるようにならないのかな?あれ?これってカルベロスの技だ。コメットダンスって下位スキルの月の技だったんだな。でもアルティメット級だよな、あの猫って結構すごいな。こっちの本も読んでみよう」
そう思って歴史の本を手に取った。
「ここら辺の歴史なのか?何これ、バフーマ大戦?この時に初めて戦力として魔物が使われたって。なんだこれ、ダメだ一個もわからない」
「キク、探したぞ。しかし、ここの図書館広すぎて見つけるの本当に大変だったよ」
「ごめん、ラミル。つい気になって」
「そろそろ夕飯を食べよう。近くに知り合いが経営している店があるんだ」
「わかった。そういえば、まだ今日は何も食べて無かったな」
そうして、俺達は図書館を出て、大通りを少しそれた脇道に入った。
「もう少しだ、あったここだ」
「ここかあ、なんか、ザ路地裏みたいな所だな。なになに?ら、あ、め、んってラーメンかよ!この世界にもあるのか。なんと言うか意外だけど、結構嬉しい」
「ここのラーメンはここでしか食べられない。味噌味が美味しくてな。たまに食べたくなるんだ」
「味噌って、まじかよ!他の店はこの地域特産のコース料理だけど、なんでここだけラーメンなんだ?」
「サヤ、久しぶり。元気か?」
「ラミルではないか、久しぶり。うちの店は相変わらずだよ」
「そうなんだな。元気そうでなにより。そうだ、紹介するよ俺の相棒のキクだ」
「よろしくキク。ラミルと同じで結構強い力を持っているな」
「え?なんで分かったんだ?」
「キク、味噌ラーメンでいいか?」
「いいよ」
「わかった。じゃあ味噌ラーメンで二つで」
「はい、かしこまりました」
中華鍋のコンロに当たる音と香ばしいけど中華料理特有の匂いがしてくる。
「サヤはな、昔からの友達なんだ。よく技を打ち合って遊んでいたのさ。魔物である僕を他の人間と同じように扱ってくれた。僕の今の強さはサヤがいたからこその強さなんだ」
「はい、お待たせ」
「ありがとうサヤ。さあ食べよう」
熱々のラーメンが前に出される。
「これって俺が現実世界で食べるような普通のラーメンじゃん。いや〜なんか納得できないな」
「やっぱり美味いなここのラーメンは。そうだキク。さっき図書館で本読んでたけどなんか役に立つのはあったのか?」
「ぜんぜん、まあ強いていえばカルベロスが月の下位スキルを使ってるってことかな」
「カルベロスは月の使い手だからな。キクも使えるようだし次のヒーデルスネイクの時に使ってみたら?」
「え!俺も使えるのか?」
「なんだ、知らなかったのか。てっきりウォータープロテクトから聞いてると思ったんだが」
「すっかり忘れてた。ウォータープロテクト!」
「お知らせします。月のスキル獲得。それに加え、空系統のリーチダンス。音系統のミネック。心系統の星の構えを会得しました」
「へえー また新しい技を覚えたのか」
「お知らせします。火の技の系統、燃を獲得しました」
「燃系統の技ってなんだろう」
「燃系統はまあ、攻撃向きでは無いね。暗い所を照らしたり、何かを燃やしたり。普段生活する上では便利だけどね」
「そうなんだ、ラミル。なんかもう技が多すぎて何を使えばいいかわかんないよ」
「火と水は技の系統が多いからね。まあ、自分の得意な技を極めるのもいいと思うけどね」
そうして俺達はラーメンを食べ終え、今日の宿泊場所に向かうことにした。
「うわ、外は寒いな」
「この地域は夜はひどく冷えるからね」
「にしても昼とは比べ物にならないくらい寒い」
「ねえ、キク」
「何?ラミル?」
「寒いんでしょ」
「手、繋がない?」
「え?」
「いいから」
そう言うとラミルは強引に俺の手を握る。
「なんだこの感覚。ラミルの手はすごい柔らかい」
心臓の鼓動が速くなっているのが分かる。
「何これ、やばい。すごいドキドキする」
「よし、キクこれで温まっただろう。キクは火のスキルを使えるけど、まだ加減はできないだろうからね」
そういうと、ラミルは優しく笑った。
「なんか、今日のラミルはこの前よりも可愛くなってる気がする……。てかスライムにこんなこと思うって俺ってどうかしてるよ」
そうして俺達は宿に着いた。
「今晩は、部屋が少ないらしいからキクとの二人部屋だ」
「え!一緒の部屋?」
「なんだ、嫌なのか?」
「嫌じゃ無いけど……」
「まあ、泊まるって言っても寝るだけだからな」
そうして、俺達は珍しく夜遅くに寝たのだった。
日常シーンが苦手です。がんばります。




