第3話:火山を駆ける生命線! 避難用「防護ロックシェッド」と高断熱舗装
「……所長、この『火の粉山』、ただ事じゃないよ。地面の温度が平均より15度も高い。普通の道路じゃ、アスファルトが飴細工みたいに溶けちまうね」
ベルタが地面に耳を当て、地鳴りを聞き取る。隣領との境界に座する活火山。いつ噴火してもおかしくない状況下で、住民の命を守るのは「逃げ道」の確保だ。俺たちは、火山の麓を貫く、避難用の「シェルター付き高速道路」の建設を開始した。
「よし、ベルタ。お前の得意な『要塞級の頑丈さ』を、この道の屋根にぶつけてくれ。エレナ、火砕流のシミュレーション結果をもとに、最短かつ安全な『線形』を割り出してくれ!」
まず着手したのは、道路の土台だ。通常の舗装では地熱に耐えられない。
「地熱を遮断するために、まずは『断熱材』の層を敷き詰める。その上に、俺たちがアトランティスで培った技術――魔導銀を配合した『耐熱セラミックコンクリート』を流し込むぞ!」
「一ノ瀬様、コンクリートの硬化熱と地熱が干渉し、クラック(ひび割れ)が発生するリスクがありますわ。フィア、空から冷気を送り込み、急激な温度上昇を抑制してください!」
エレナの指示で、フィアが氷の魔法を混ぜた風を路面に吹き付ける。ベルタの指揮の下、スライムのスポットがコンクリートの隙間に入り込み、気泡を完全に追い出して密度を高めていく。
次に、降り注ぐ火山弾(火山からの岩石)から車を守るための巨大な屋根――『ロックシェッド(落石防護トンネル)』を建設する。
「ベルタ、この屋根の傾斜(勾配)がキモだ。岩が直撃するんじゃなく、滑り落ちるように『片流れ屋根』にするぞ。衝撃を吸収するために、屋根の上には『サンドクッション(緩衝材の砂)』を3メートル積み上げる!」
「わかってるよ所長! 支柱は鉄筋を今の3倍入れて、魔法で『焼き入れ』した最強のやつを立ててあげるよ!」
ベルタの女親方魂が爆発する。彼女が魔法で圧着させた巨大な石柱が、次々と道路の脇に並び、その上に分厚いコンクリートのスラブ(床板)が載せられていく。
「フィア、上空から『電光掲示板(魔導発光サイン)』を設置してくれ。煙で視界が悪くなっても、避難者が迷わないように地面に誘導灯を埋め込む!」
パニック時の渋滞は死に直結する。俺は、道路の幅員を広めに確保し、緊急停車帯を100メートルおきに設置した。これが、命を繋ぐための『避難導線』の設計だ。
数日間の突貫工事により、火山の麓を一周する、頑丈なシェルターに守られた高速道路が完成した。
ズシン……!
時折、山から転がり落ちてくる巨大な岩がロックシェッドの屋根に当たるが、ベルタの作った要塞屋根は、パチンコ玉を弾くようにそれらを谷底へと受け流した。
「……ふぅ。これで、いざという時の『逃げ道』はできたな」
俺は、噴煙を上げる火口を見上げた。道はできた。だが、この火山の「怒り」そのものを鎮めない限り、根本的な解決にはならない。
「所長、逃げ道ができたのはいいけど……。火山のマグマが溜まりすぎて、山自体が『パンパンに膨らんでる』ってエレナが言ってるわよ。このままだと、道どころか領地ごと吹き飛んじゃう!」
リアナが、エレナの解析データを見て顔を青くしている。どうやら、溜まりすぎたエネルギーを「抜く」ための、もっと積極的な工事が必要なようだ。
今回の建築・土木用語解説
• 線形: 道路や鉄道の平面的な形状(カーブや直線)のこと。
• ロックシェッド: 落石や雪崩、火山弾から道路を守るために設置される、屋根付きのトンネル状の構造物。
• 耐熱コンクリート: 通常のものより熱に強く、高温環境下でも強度が低下しにくいコンクリート。
• 片流れ屋根: 一方向だけに傾斜がついた屋根。雪や岩を一方に逃がすのに適している。
• 幅員: 道路の横幅のこと。
• 火砕流: 火山噴火の際、高温のガスや火山灰、岩石が斜面を猛スピードで流れ下る現象。極めて危険。
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