第13話 天空を貫くアンテナ! 「クライミング工法」によるタワークレーンの自力上昇
アトランティスを全世界の通信拠点にするための「魔導電波塔」。その高さは雲を突き抜ける500メートル超に設定された。この超高層建築を支えるのは、自ら高さを増していく巨大なクレーンだ。
「フィア、上空の風速はどうだ! エレナ、タワーの垂直精度(垂直度)を確認しろ! これから『マストクライミング工法』を開始する。クレーンが自らの力で、自分を高くしていくぞ!」
聖の号令で、巨大なタワークレーンの脚部がゆっくりと持ち上がり始めた。
「一ノ瀬様、ジャッキアップ開始ですわ。マストの接合部、ミリ単位のズレも許されません。フィアさんの風魔法で、クレーンの旋回体を完全に静止させてください!」
エルフの検査官であるエレナが、魔導測量機を覗き込みながら鋭い指示を飛ばす。
「分かってるって! あたしの翼と風魔法があれば、どんな強風でもクレーンをピタリと止めてみせるよ!」
ハーピーのフィアが空中で旋回し、気流を操る。クレーン本体がジャッキで浮き上がり、空いたスペースに新しいマストのパーツが、ミーナが地上から吊り上げた金属蟹たちの手によって差し込まれていく。
「よし、新しいマストのボルト締め完了! 『クライミング』一段階成功だ。ガッツ、次のパーツを持ってこい!」
クレーンが自らの胴体を伸ばし、一歩ずつ天へと昇っていく。それは、魔法に頼り切るのではなく、物理的な機構と魔導の精密制御が融合した、異世界建築史に残る光景だった。
「所長、ついに塔が雲を超えたわ! ……でも、高すぎて空気が薄くなってきたせいか、空に住む『雷鳥』たちが、この塔を巣作りの邪魔だと思って攻撃してきたわ!」
塔の頂上付近、バチバチと放電する巨大な影が接近していた。
今回の建築・土木用語解説
• クライミング工法: 超高層ビル建設などで、クレーンが自らの重量を支えながらマスト(支柱)を継ぎ足し、上へと昇っていく工法。
• マスト: タワークレーンを支える縦の支柱部分。
• 垂直度: 建物や柱がどれだけ正確に垂直に立っているか。超高層ではわずかな傾きが頂部で巨大なズレになるため、極めて厳格に管理される。
• ジャッキアップ: 重いものを油圧などの力で持ち上げること。クレーンの自重を浮かせるために使われる。
• 旋回体: クレーンの上の、回転して荷物を吊る部分。
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