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異世界建築無双《BLUE COLORS》〜BIMとCADが使える俺、美少女領主に雇われ、伝説の職人たちを率いて理想の街を爆速で竣工させる〜  作者: beens
第7章:海底都市浮上編

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第11話:世界を巡る「蛇口」を回せ! 巨大バルブのオーバーホール

 アトランティスの最深部、そこには「世界の心臓」とも呼べる巨大な空間が広がっていた。中心にそびえ立つのは、観覧車ほどもある鋼鉄製の『ゲートバルブ(仕切弁)』だ。このバルブが世界の海流を制御し、地球の気候バランスを保っていたのだが、数千年の歳月は無情だった。

「一ノ瀬様、見てください。バルブの可動部ステムが、海水に含まれる塩分と石灰分で岩のように固着していますわ。このまま無理に回せば、ハンドルが折れるか、内部の弁体が粉砕されますわね」

エレナがライトを照らすと、そこには錆と貝殻に覆い尽くされた無残な巨軸が姿を現した。本来ならスムーズに動くはずのネジ山は、もはや一つの岩塊と化している。これが回らなければ、世界の海は淀み、異常気象は加速する。

「……要は『世界一デカい錆びついたネジ』ってわけか。よし野郎ども、力任せに回す前に、まずは徹底的な『ケレン(錆落とし)』だ! ガッツ、魔導サンドブラストを用意しろ! 金属の素肌が見えるまで磨き上げるぞ!」

 ガッツが担ぎ出したのは、高圧の空気で魔法の砂を吹き付ける強力な洗浄機だ。

「おうよボス! この数千年分の『垢』、綺麗さっぱり削り取ってやるぜ!」

凄まじい音と共に、バルブの表面を覆っていた錆が剥がれ落ちていく。ミーナは横で、飛び散る粉塵が機械の内部に入らないよう、風の魔法で塵を誘導する。厚い錆の層の下から、鈍く輝く古代の合金がようやく顔を出した。

「よし、次は『浸透潤滑剤しんとうじゅんかつざい』だ。エレナ、金属の隙間にスルスル入り込む、超低粘度の魔法オイルを調合しろ。それをネジの根元にたっぷり流し込む!」

オイルがシュゥゥと音を立てて錆の奥深くに吸い込まれていく。だが、これだけでは足りない。俺はさらに指示を飛ばした。

「ミーナ、バルブの外枠ハウジングだけを魔法で均一に熱しろ! 中の軸は冷やしたままだ。『熱膨張ねつぼうちょう』の差を利用して、食い込んだ隙間をコンマ数ミリだけ広げるんだ!」

外側が温まって膨らみ、内側が冷えて縮む。その瞬間、固着していた接合面に「パキン!」という乾いた、だが希望に満ちた音が響いた。

「今だ! ガッツ、重機の回転軸をバルブのハンドルに直結しろ! フィラは上からレバーを引いて、テコの原理を最大化させるんだ。ゆっくり、じわじわと『トルク(回転させる力)』をかけていくぞ!」

重機が唸りを上げ、ワイヤーがギリギリと鳴る。俺はバルブの軸をハンマーで軽く叩き、振動でオイルをさらに奥へと送り込んだ。

「動け……動けよ、世界の大蛇口!」

……ズ、ズズ……ッ。

鈍い音と共に、巨大なハンドルが数ミリ動いた。一度動き始めれば、あとは潤滑剤と魔力が導いてくれる。

「回ったわ! 軸が上がっていく!」

ミーナが叫ぶ。

勢いよく回転を始めたバルブの奥から、ゴーッという地鳴りのような水の流れる音が聞こえてきた。アトランティスから解き放たれた巨大な海流が、再び世界の海へと循環を始めたのだ。モニターに映る地球の海流図が、絶望的な赤から、命の脈動を示す青へと塗り替えられていく。


「ふぅ……。これで気候変動も収まるはずだ。……さて、エレナ。さっき言ってた『未払いの管理費』の督促状ってのは、一体誰が持ってくるんだ?」

俺が腰を下ろした瞬間、部屋の奥にある巨大な石扉が、重々しい音を立てて開き始めた。そこから現れたのは、金色の鎧を纏い、片手に巨大な「領収書」と、もう片手に「巨大なハンマー」を持った、全高10メートルの古代ゴーレムだった。

「……一ノ瀬様、あれが伝説の集金人、『徴収の守護者レヴィ・コレクター』ですわ。どうやら、数千年分の滞納利息を、労働か命で支払えと言っているようですわね」


今回の建築・土木用語解説

• ゲートバルブ(仕切弁): 板状の弁体を垂直に上下させて、水の流れを止めたり通したりする装置。大規模な配管によく使われる。

• ケレン: 塗装や補修の前に、錆や汚れを削り落として表面を整える作業。地味だが、工事の成否を分ける最も重要な工程。

• 浸透潤滑剤: 非常にサラサラしたオイルで、錆びついたネジの僅かな隙間に入り込んで動きを良くする薬剤。

熱膨張ねつぼうちょう: 温度が上がると物質が膨らむ性質。これを利用して、固着した部品を外すテクニックは現場の知恵。

• トルク: 物体を回転させるために必要な力の大きさ。長いレバーを使うほど、小さな力で大きなトルクを生み出せる。

• オーバーホール: 機械を一度分解・点検し、部品の交換や清掃を行って、新品に近い状態に戻す大規模な整備。

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