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異世界建築無双《BLUE COLORS》〜BIMとCADが使える俺、美少女領主に雇われ、伝説の職人たちを率いて理想の街を爆速で竣工させる〜  作者: beens
第7章:海底都市浮上編

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第6話:軋む巨軸――「超高粘度オイル」強制注入と潤滑改修

 アトランティスが自航を開始したことで、都市の最下層にある動力室は、地獄のような熱気と轟音に包まれていた。数千年の眠りから覚めた巨大な『タービン主軸しゅじく』が、猛烈な勢いで回転を始めている。だが、その軸を支えるビル一棟分ほどもある巨大な『流体軸受りゅうたいじゅううけ』からは、金属同士が激しく擦れ合う、身の毛もよだつような絶叫が響いていた。

「一ノ瀬様、大変ですわ! 軸受の温度が摂氏八〇〇度を突破! このままでは熱膨張によって軸と受けが完全に固着する『焼き付き』が発生し、動力室ごと大爆発を起こしますわよ!」

エレナの絶叫に近い警告が飛ぶ。長年の沈黙で、本来なら軸を浮かせるはずの潤滑じゅんかつシステムは完全に朽ち果て、オイルはタールのように固まっている。今、この巨大な回転軸は、潤滑なしで直接、金属の台座を削りながら回っているのだ。

「ガッツ、主軸の注油口ちゅうゆこうを全開放しろ! ミーナ、お前は魔法でオイルの『粘度』を極限まで高めて維持しろ! 水圧に負けず、かつ数千トンの重さを支えられる『最強のクッション』を作るんだ!」

俺が指示したのは、現代の巨大船舶や発電所でも使われる『強制循環潤滑きょうせいじゅんかんじゅんかつ』の魔導強化版だ。俺たちは、ドラム缶数千本分にも及ぶ特殊な「魔導合成オイル」を、高圧ポンプで軸受のわずかな隙間にねじ込み始めた。

「おうよボス! だが、隙間が狭すぎてオイルが入っていかねえぞ! 軸の重さで入り口が潰れてやがる!」

「フィラ、浮力を担当しろ! 都市の浮力を一瞬だけ前方に傾けて、主軸をコンマ数ミリだけ浮かせろ! その瞬間にオイルを叩き込むぞ!」

フィラがアトランティスの姿勢制御を強引に操作し、都市全体がガクンと大きく揺れた。その刹那、軸受に生じたミクロン単位の隙間を狙い、ミーナが魔法で圧縮した超高粘度オイルを一気に流し込む。

「いっけぇぇぇ! 固まれ、滑れ! 最高の『油膜ゆまく』を作れぇ!」

ミーナの魔力によって、オイルはまるで生き物のように軸の周囲を包み込み、金属と金属の間に「流体の層」を形成した。それまで動力室を揺らしていた暴力的な振動が、一瞬で「シュゥゥゥ……」という滑らかな回転音へと変わる。

「……温度低下、確認しましたわ! 軸受の表面温度、急速に安定域へ。一ノ瀬様、主軸が完全に『浮上』しました。これで、どれだけ回転しても焼き付くことはありませんわ!」

エレナがホログラムのグラフを見て安堵の溜息をつく。俺たちは、金属が溶け合う寸前のところで、この巨大な機械の心臓を繋ぎ止めたのだ。

だが、潤滑が完璧になったことで、タービンの回転効率は皮肉にも最大化してしまった。オイルという最高の足を得たアトランティスは、制御不能のまま、さらに速度を上げて北の海へと突き進んでいく。

「……よし、焼き付きは止めた。だが、次はこいつの『暴走』を止めなきゃならん。舵が効かないなら、物理的に止めるまでだ!」

俺は、油まみれになった作業服の袖を捲り、加速し続ける伝説の都の行く先を睨みつけた。


「所長! 滑りが良くなりすぎて、今度は時速八〇ノットを超えちゃったわよ! このままだと、北極の巨大氷山に正面衝突して、アトランティスがタイタニック号の二の舞になっちゃう!」

ミーナの叫び通り、水平線の向こうには白く輝く巨大な氷の壁が迫っていた。


今回の建築・土木用語解説

• ベアリング(軸受): 回転する軸を支え、摩擦を減らして滑らかに動かすための部品。

主軸しゅじく: エンジンやタービンなどの動力を伝える、最も太くて重要な回転する棒。

• 焼き付き(やきつき): 摩擦熱によって金属同士が溶け、くっついて動かなくなってしまう致命的な故障。

粘度ねんど: 液体オイルなどの「ねばりけ」の度合い。重いものを支えるには高い粘度が必要になる。

油膜ゆまく: 金属の表面を覆うオイルの薄い膜。これが金属同士の直接の接触を防ぎ、摩耗を抑える。

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