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異世界建築無双《BLUE COLORS》〜BIMとCADが使える俺、美少女領主に雇われ、伝説の職人たちを率いて理想の街を爆速で竣工させる〜  作者: beens
第6章:月面開拓編

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第3話 月を醸す(かもす)心臓――巨大テラフォーミング・プラントの再起動

 ドームの地下深く、俺たちが降り立った場所は、まるで巨大な「肺」の内部だった。

見上げるほど巨大な円筒形のタンクが何百とも並び、それらが血管のような太いパイプ――『メイン・マニホールド』で繋がっている。これは、月の地殻に含まれる酸素化合物を加熱・分解し、大気を生成する『惑星改造テラフォーミング・プラント』だった。

「一ノ瀬様、プラントの出力が暴走していますわ! 生成されたガスが排出されず、地殻内の圧力容器に溜まり続けています。このままでは月面基地が内側から弾け飛びますわよ!」

エレナの叫びと同時に、足元から激しい突き上げが襲う。原因は明白だ。数千年の放置により、ガスを地表へ送るための『排気ダクト』の先端が、月面の細かいレゴリスによって目詰まりを起こしていたのだ。

 俺は即座に指示を飛ばした。地上のドームを守るためには、溜まりすぎた圧力を安全に「逃がす」必要がある。

「ガッツ! その巨大な*『減圧弁げんあっぷべん』を回せ! 固着しているなら潤滑剤をぶち込め! ミーナ、お前はパイプ内部に溜まったレゴリスを、高圧の空気で一気に押し流すんだ!」

「任せなさい! 水が使えないなら、空気の渦で掃除してやるわ! 【旋回気流トルネード・ブロー】!!」

ミーナがパイプに魔法を流し込むと、配管全体が悲鳴のような音を立てて震え始めた。同時に、ガッツが巨大なレンチを振り下ろし、錆びついたバルブを力技で開放する。

だが、問題はそれだけではなかった。長年の圧力により、地殻の岩盤そのものに亀裂が入り、そこから未精製のガスが漏れ出していたのだ。このままでは地盤沈下が起き、プラントそのものが崩落してしまう。

「……岩盤のヒビを塞ぐぞ! ガッツ、建設用の『薬液注入やくえきちゅうにゅうポンプ』を用意しろ。ただのセメントじゃない、月面の砂と反応して瞬間硬化する、特製の魔導樹脂だ!」

俺たちは、岩盤の亀裂に数本の細い管を打ち込み、そこから高圧で樹脂を流し込んだ。これは地上のトンネル工事やダム建設で使われる、地盤を固めて止水しすいする技術の応用だ。


1. 地盤の強化: 樹脂が岩盤の微細な隙間まで浸透し、月面のスカスカな地層を岩盤へと変えていく。

2. 圧力の封じ込め: 漏れを止めることで、ガスの流れを本来の「浄化装置」へと誘導する。

3. 大気組成の安定化: エレナが制御パネルを操作し、酸素と窒素の比率を人間が呼吸できる黄金比へと調整していく。


「一ノ瀬様、ガスの流れが安定しましたわ! フィルターユニットが作動……集塵機しゅうじんきが月面の塵を完全にシャットアウトしています!」

ゴォォォォ……という重低音が、やがて心地よい「風」の音へと変わった。

ドーム内に設置された通気口から、精製されたばかりの、少し冷たくて清らかな空気が吹き出し始める。

「……はぁぁ。聖様、この空気、少しだけ地上の森の匂いがします」

リアナがヘルメットのバイザーを上げ、深々と息を吸い込んだ。魔法の酸素ボンベではない、惑星そのものが生み出した「本物の空気」だ。

「よし。これでこのドームは、宇宙服なしで歩ける『月面の公園』になったわけだ」

俺は作業着の襟を緩め、ようやく汗を拭った。

真っ黒な宇宙を背景に、ドームの中だけが柔らかな光と風に満たされている。それは、極限の環境に俺たちが打ち立てた、新たなる居住のくさびだった。

「所長、空気が通ったのはいいけど……この広いドーム、次は何を作るつもり? まさか、ただの空き地にするわけじゃないわよね?」

ミーナが期待の眼差しで俺を見てくる。

確かに、空気が確保された今、次に行うべきは「自給自足」の基盤作りだ。


今回の建築・土木用語解説

• メイン・マニホールド: 複数の配管を一つにまとめたり、逆に分配したりするための集合管。流体の流れを制御する心臓部。

• テラフォーミング: 惑星の環境を、人間が住めるように改造すること。

減圧弁げんあつべん: 高すぎる流体の圧力を、一定の安全な圧力まで下げるための調整バルブ。

• ダクト: 空気やガスなどの気体を運ぶための専用の管。

薬液注入工法やくえきちゅうにゅうこうほう: 地盤の中に化学薬品や樹脂を注入し、地盤を固めたり水の漏れを止めたりする工事手法。

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