間話:王都の夜を焼く――勝利の美酒と独占禁止(?)BBQ
王都建築コンペの熱狂が冷めやらぬ夜。
俺たちは王都の高級住宅街にある、エレナの別邸の広大な庭を「現場」へと変えていた。
「よし、火おこし完了! 投光器(魔法灯)点灯! これより、王都制覇記念・第2回現場親睦BBQ大会を開催する!」
俺の号令とともに、ガッツがドラゴンの吐息で炭を赤々と燃え上がらせる。
「ガハハ! 王都の貴族どもの青ざめたツラを思い出すだけで、酒がうめえぜ!」
「本当よ! 聖の図面が出た瞬間、会場の空気がピリッとしたもんね!」
ガッツとフィラが、王都の最高級食材――霜降りの魔導牛や、大ぶりの大海老を鉄板に並べていく。ジューシーな音が夜の庭に響き、食欲をそそる香りが風に乗る。
「聖様、あーんしてください。コンペの間、ずっと緊張して、私……お腹が空いてしまいましたわ」
エプロン姿のリアナが、焼きたての野菜を手に隣に座り込んできた。少しだけ潤んだ瞳で、俺の口元に串を差し出してくる。
「おいおい、リアナ。俺は現場監督だぞ。自分の食事くらい自分で――」
「あら、一ノ瀬様。勝利の立役者である私を差し置いて、領主様ばかり贔屓するのは『不公平な工事発注』ではなくて?」
反対側から、シルクの部屋着に着替えたエレナが、キンキンに冷えたエールのジョッキを持って俺の腕を抱きしめてきた。
「エレナ、お前もか。……というか、距離が近くないか?」
「いいえ、これは『密着による魔力供給』ですわ。聖様の素晴らしい脳内BIMを支えるには、こうして……物理的な接触が必要なんですの。ね?」
エレナが俺の耳元で囁き、リアナが「もう! エレナ様、それは監理官の権限乱用です!」と頬を膨らませる。
「ふん、二人とも甘いわね。聖! 私が空から獲ってきた新鮮な果物、あげるから。こっちに来なさいよ!」
フィラまで空から降りてきて、俺の背中に飛びついてくる。
右にリアナ、左にエレナ、背中にフィラ。
まさに現場の「三点支持」ならぬ、三方向からの抱擁攻勢。
「……ボス、大変だな。図面を引くより難易度が高そうだ」
ガッツがニヤニヤしながら、特大の肉を俺の皿に放り投げてきた。
「笑い事じゃない。……いいか、お前ら。俺たちは今日、大きな勝利を掴んだ。だが、これはスタートだ。明日からは王都の古い下水道の全点検と、再開発の測量が始まる。……英気を養うのはいいが、ほどほどにな」
俺はそう言いながらも、差し出された肉を頬張った。
噛みしめるたびに溢れ出す肉汁と、ヒロインたちの温もり。
前世の現場での食事は、いつも冷めたコンビニ弁当か、歩きながら流し込む栄養ドリンクだった。
誰かと一緒に、温かい火を囲んで食べる飯が、これほどまでに美味いとは。
「聖様、これからもずっと……私の隣で、この街を、世界を創っていってくださいね」
リアナが、俺の肩に頭を預けて静かに呟く。
「ああ。地図に残る仕事は、一人じゃできないからな」
俺は彼女たちの頭を順に撫で、夜空に浮かぶ二つの月を見上げた。
この平和な夜を守るために。俺は明日も、最高の図面を引き、無茶な工期を爆速で竣工させてみせる。
「……よし、お前ら! 残りの肉も全部焼くぞ! 無事故無災害で、明日の着工を迎えるんだ!」
「「「「おー!!」」」」
王都の夜に、職人たちの笑い声がいつまでも響き渡っていた。
今回の建築用語解説
• 三点支持: 梯子や高所を移動する際、手足の4点のうち3点で体を支える安全の基本。
• メンテナンス: 建物や設備の性能を維持するための保守・管理。
• 親睦: 現場の結束を高めるための交流。チームワークが品質に直結する。
• 三方向からの抱擁: ある意味で最も危険な過積載。
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