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異世界建築無双《BLUE COLORS》〜BIMとCADが使える俺、美少女領主に雇われ、伝説の職人たちを率いて理想の街を爆速で竣工させる〜  作者: beens
第2章:天空へ届く道

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第3話 天空への初運転、そして予期せぬ来客

「これより、辺境第一号『垂直輸送システム』――通称、魔導エレベーターの試運転を開始する。各員、異常がないか最終確認!」

 俺の声が、完成したばかりの高層住宅のロビーに響き渡った。

 中央にそびえ立つシャフト(昇降路)は、ドワーフたちが磨き上げた漆黒の魔導鋼で覆われ、その表面にはエルフたちの施した繊細な彫刻が施されている。

「ボスの旦那! スライム圧、規定値で安定だ! 漏れは一滴もねえぜ!」

 ピットから顔を出したガッツが、親指を立てて合図する。

「空中に異常なし! いつでもいけるよ、聖!」

 シャフトの最上階付近でホバリングするフィラが、窓越しに手を振る。

 俺はロビーで待機していたリアナと、視察に来ていたエレナに向き合った。

「さあ、お二人さん。記念すべき『初乗り』だ。案内するよ」

「……これが、魔法の空間転移なしで上へ昇る箱……。ドキドキしますわ」

 エレナが、BIMで描かれた設計図通りの実物を前に、科学者的な好奇心で瞳を輝かせている。

一方のリアナは、少し緊張した面持ちで俺の作業着の袖をギュッと掴んだ。

「聖様と一緒なら、怖くありません」

 俺たちがケージに乗り込み、俺が魔導パネルの「10」のボタンを押した瞬間。

ゴォォォ……という低い駆動音とともに、スライムの圧力が滑車を押し上げ、箱が滑らかに浮上を開始した。

「わっ……!? 浮いている……本当に、浮いていますわ!」

 エレナが手すりを掴み、窓の外を流れるシャフトの内壁を凝視する。

「揺れが……ほとんどありませんわね。一ノ瀬様、この滑らかな加減速、どのような術式を……?」

「術式じゃない。スライムの弾力を利用した『オイルダンパー』と、滑車による三倍力だ。物理の法則だよ、エレナ」

 箱が加速し、やがてシャフトを抜けて最上階へと到達する。

ピンポーン。

聞き慣れた到着チャイムが鳴り、扉が左右にスライドした。

 扉の向こうに広がっていたのは、十階、地上約三十メートルの「天空」だった。

「……っ!!」

 リアナが息を呑み、バルコニーへと駆け寄る。

そこには、かつて泥濘にまみれ、呪いとまで称された辺境の地ではありえない絶景が広がっていた。

 整然と区画整理された道路、等間隔に並ぶ街灯、そして遠くまで見渡せる豊かな森と、夕日に輝く川のせせらぎ。

 自分たちが手塩にかけて作り上げた「街」が、巨大なジオラマのように眼下に広がっている。

「綺麗……。私、自分の領地が、こんなに美しい場所だったなんて……知りませんでした」

 リアナの目から、一筋の涙がこぼれ落ちる。

「これが、俺たちの仕事の結果だ。お嬢さん」

 俺は彼女の隣に立ち、沈みゆく太陽を見つめた。

「図面を引いている時はただの数字だが、こうして形になれば、それは誰かの『思い出』になる。それが、現場監督のやりがいってやつさ」

「……素晴らしいですわ」

 エレナもまた、隣で深く頷いていた。

「一ノ瀬様。あなたはただ建物を建てたのではない。この地に『誇り』を建てたのですわね。……私、ますます興味が湧いてきましたわ。あなたの『現場』と、……あなた自身に」

 エレナが俺の腕をそっと抱き寄せる。

「ちょっと! エレナ様、どさくさに紛れて何をしているんですか!」

 リアナが慌てて俺の反対側の腕を確保する。

 天空のバルコニーで、二人の美少女に腕を引かれる俺。

前世の現場の徹夜明けでは、一ミリも想像できなかった光景だ。

「おいおい、ここは高所だ。危ないから――」

その時だった。

バルコニーの柵のすぐ外側、空中から不敵な笑い声が聞こえてきた。

「――なるほど。確かに面白い。王都の『古臭い』連中が腰を抜かすわけだ」

「ッ!? 全員、下がれ!」

 俺は瞬時に二人を背後に隠し、腰のコンベックスを構える。

 夕日を背にして宙に浮いていたのは、巨大な「空飛ぶ絨毯」に乗った、見上げるほどに豪華な衣装の男だった。

 その男の後ろには、数人の重武装した魔導騎士が控えている。

「誰だ、あんた。ここは土足厳禁……じゃなかった、立入禁止の建設現場だぞ」

「はっはっは! 無礼な物言いを。だが、その度胸は嫌いではない」

 男は絨毯からひらりとバルコニーに降り立つと、仰々しく一礼した。

「私は王立建築ギルド・総帥直属。特命監理官のゼノンという。……一ノ瀬 聖。お前の『爆速竣工』の噂、そしてこの『魔導エレベーター』の報告を受け、王都が黙っていられなくなってな」

 ゼノンの瞳が、冷酷な光を宿して俺を射抜く。

「お前を、ギルドの反逆者として処断するか……あるいは、我が派閥の『所有物』とするか。それを決めに来た」

 せっかくの竣工記念の絶景が、一気に「厄介なトラブル」の気配に塗り替えられた。

「……あいにくだが、俺のスケジュールは来年まで埋まってるんだ。予約なしの来客は、お引き取り願おうか」

俺は不敵に笑い返した。

ここからが本当の「政治と建築」の戦いになりそうだ。


今回の建築用語解説

• シャフト: エレベーターが上下に移動するための縦穴(昇降路)。

• ケージ: エレベーターの「カゴ(箱)」のこと。

• オイルダンパー: やスライムの粘性を使って振動や衝撃を吸収する装置。

• オーバーラン: 停止位置を通り越してしまうこと。安全装置で防ぐ必要がある。

施主検査せしゅけんさ: 引き渡し前にオーナーが最終チェックを行うこと。

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