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異世界建築無双《BLUE COLORS》〜BIMとCADが使える俺、美少女領主に雇われ、伝説の職人たちを率いて理想の街を爆速で竣工させる〜  作者: beens
第2章:天空へ届く道

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第4話 王都の監査と、秘密のバーベキュー大会

「……ふん、下賎な職人どもを集めて、肉を焼くのが『団結』だと? 笑わせるな」

 特命監理官ゼノンは、現場事務所前に特設されたBBQ会場を冷ややかに見下ろした。

彼の背後には、抜き身の剣を携えた魔導騎士たちが威圧的に控えている。

「ゼノン監理官。俺の現場じゃ、職人の『腹の虫』をなだめるのは、図面を引くのと同じくらい重要な仕事なんだよ。……ほら、ガッツ! 焼き加減はどうだ!」

「おうよ、ボス! ドラゴンの吐息ブレスで表面をカリッと仕上げた『A5ランク魔牛』だ。今が一番の食いどきだぜ!」

 ドワーフのガッツが、巨大な鉄板の上で肉を躍らせる。香ばしい脂の匂いが、夕暮れの現場に立ち込める。

「聖様、こちらのお野菜も焼けましたわ!」

 リアナがエプロン姿でトングを手に微笑み、エレナが「この自家製タレ、化学的に計算された完璧な配合レシピですわね」と、肉を頬張りながら感嘆の声を漏らしている。

だが、ゼノンは懐から一枚の羊皮紙を取り出し、叩きつけるように広げた。

「無駄なことを。一ノ瀬 聖、お前の工期短縮には『不正な魔力流用』の疑いがある。本日をもって、この高層住宅の使用停止命令を発付する。さらに、この現場の職人全員のライセンスを剥奪……」

「――待ちなさい」

 エレナが、口元のタレを拭って立ち上がった。その瞳は、首席検査官としての冷徹な光を放っている。

「ゼノン監理官。この現場の工期管理は、私がすべて監査済みです。不正など微塵もありませんわ。それとも……私の鑑定眼に異を唱えるおつもり?」

「……ちっ、エレナか。相変わらず甘いな」

 ゼノンが舌打ちをした瞬間。彼が密かに合図を送った騎士の一人が、魔法で周囲の「仮設足場」の支柱を密かに斬りつけた。

ギギギ……ッ!

「あぶない! 足場が崩れるわ!」

 フィラが悲鳴を上げる。高層住宅に組まれていた巨大な足場が、騎士の嫌がらせによってバランスを崩し、BBQを楽しんでいた職人たちの方へ倒れ込もうとした。

「させねえよ。……全工種、【緊急時・安全確保レスキュー・プロトコル】発動!」

 俺の声が響くと同時に、BBQで和んでいたはずの職人たちが、一糸乱れぬ動きを見せた。

「ハーピー隊、上空からワイヤー保持ホールド!」

 フィラたちが肉を放り出し、瞬時に空中で足場の四隅を掴み上げる。

「ドワーフ班、下部支柱の応急ジャッキアップ!」

ガッツたちが手に持っていた串を捨て、スライム・ジャッキを足場の下へ滑り込ませる。

「スライム班、接合部の緊急シーリング!」

足元のスライムたちが、斬り裂かれた支柱に絡みつき、魔力で固まって即座に補強材となる。

わずか数秒。倒れるはずだった数トンの足場は、微動だにせず空中で固定された。

「な……なんだ、この連携は……!? 魔法も使わずに、これほどの速度で……」

ゼノンが驚愕に目を見開く。

「ゼノン。あんたには見えてないだろうが、俺たちは毎日、『KY(危険予知)活動』でこの事態を想定して飯を食ってるんだ」

俺はゼノンの目の前まで歩き、指を突きつけた。

「仲間の命を守れない奴に、いい建物は建てられない。あんたが斬ったこの足場の一本一本に、俺たちの血と汗が染み込んでるんだ。……それ以上のライセンスが、この世にあるか?」

「……っ、おのれ……!」

「いいから、あんたも食えよ。腹が減ってるから、そんなに心が歪むんだ」

俺は焼き立ての肉を串ごとゼノンの口に押し込んだ。

「んぐっ……!? ……な、なんだこの味は……! スパイスと肉汁の……圧倒的、調和ハーモニー……!」

 ゼノンの顔が、一瞬で「食」の快楽に支配される。

「現場の団結力は、恐怖じゃ作れない。美味い飯と、同じ目標だ。……ゼノン。あんたの命令書、そのタレで汚れて読めなくなったな?」

 俺が指差すと、彼が持っていた羊皮紙には、ガッツが飛ばした肉の脂がべったりと付着していた。

「……ふん。今日のところは、この肉の味に免じて見逃してやる。だが、王都のギルド本部は、この程度では引き下がらんぞ」

 ゼノンは負け惜しみを言いながらも、肉をもう一本奪い取って絨毯に乗り込み、去っていった。

「「「「やったあああああ!!」」」」

現場に歓声が上がる。

「聖様……本当にかっこよかったですわ!」

リアナが後ろから抱きついてくる。

「一ノ瀬様、後でこの『組織管理術』について、二人きりで詳しく……」

エレナも負けじと距離を詰めてくる。

「おい、二人とも、火傷するぞ。……ガッツ、肉の追加だ! 今日は竣工まで飲み明かすぞ!」

 焚き火の光に照らされる、建設途中の摩天楼。

妨害を跳ね返すたびに、この街の地盤はより強固になっていく。

俺たちの伝説は、まだ始まったばかりだ。


今回の建築用語解説

安全確保レスキュー・プロトコル: 事故発生時に被害を最小限にするための緊急手順。

仮設かせつ: 工事中に一時的に設置される足場や囲い。完成後は撤去されるが、現場の安全を支える要。

• シーリング: 隙間や亀裂を充填材で塞ぎ、気密性や防水性を高めること。

支柱しちゅう: 構造物を支える垂直の棒。一本でも欠けると全体のバランスが崩れる。

• KY(危険予知)活動: 「危険(K)予知(Y)」。作業前に事故の要因を話し合い、対策を確認する最も重要なルーティン。

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