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樹海の中の決意

 出会いは絶望の中だった。

盗賊に身代金目当てで誘拐されたが無事に帰れる保証はない。

ただ自分が何をされるかわからないという恐怖が全身を襲っていた。


 『誰か助けて…』


 泣きながら心の中で誰かに助けを求める。

それが誰にも届かないと思っていても…


 ドォゴゴゴゴゴォン‼︎


 急に爆発音が聞こえたと同時に収容されている建物が燃える。

まさか火炙りにされるのか…

絶望と恐怖で視界が滲む。

生を諦めた瞬間に燃え盛るドアが吹き飛ぶ。


 「目標発見。直ちに帰還する」


 長い黒髪を三つ編みにして眼帯をしている異様な姿の男の子が入ってきた。


 「ルミーナ様ですね。もう大丈夫。安心して」


 男の子は優しくルミーナを抱きかかえた。


 「よく頑張りましたね」


 男の子はさながら姫を助けにきた騎士のように見えた。

その優しい声に安堵して意識が遠のいた。


 それからというもの男の子のことが頭から離れない。

後で聞いたがアメル商会で働いている十兵衛という名前だった。


 助けてくれたお礼を言いに行ったら彼の横には金髪の女の子がいた。

あの女はなんなのか。

今まで感じたことのないドス黒い何かが体の奥底から這い出る。

調べたらアメル商会の御息女であるジェシカ=アメルという女だった。


 『彼の横には私が似合うのに…』


 『いいえ…彼の横には私しか居てはいけないの…』


 『なぜ私ではなくてあの女が居るの?』


 ルミーナの中でドス黒い何かが激しく渦巻く。


 それからというものアメル商会に通い続けた。

そのうちにジェシカともよく顔を合わせるようになった。

ジェシカは自分が思っていたよりもいい子でルミーナは困惑した。

自分の予想通り嫌な女ならどれほどよかったのに…

イメージのジェシカと実際のジェシカとのギャップに困惑していたのだ。

自分の気持ちを押し殺しながらただただ十兵衛の事を想う。


 しかし自分が望まない形でジェシカとの優劣をつける場が与えられた。

もし自分が勝つ事ができたなら十兵衛に想いを告げよう。

ルミーナはそう決心をしていた。


 燃え盛る火炎のを見つめがら茂みの中で息を殺して時を待つ。


 『ジェシカはいい子で友達だ。だけどあの時から十兵衛ちゃんに心を奪われている』


 ルミーナはじっと見つめる。


 『ジェシカにだけは負けられない』


 ルミーナはじっと機会を伺う。


 『ジェシカだからこそ負けられない』


 長い年月をかけた彼への想いを胸にルミーナは茂みの中でじっと息を殺して麻痺してきているジェシカを魔術で創造した鏡で見つめていた。

ルミーナの魔術であるモニタライズは対象の顔と名前を認識していれば遠隔視できる魔術だ。

十兵衛のことが知りたくて、十兵衛のことをもっと見たいという気持ちがこの魔術を完成させた。


 ルミーナにはジェシカの召喚魔術ほどの火力はない。

確実に勝てるまで樹海降誕(ヤルンヴィド)で弱らせてトドメをさす。

積年の想いがルミーナを慎重にさせる。


 『ジェシカだけには負けたくない』


 心の中で何度も唱えながらじっと鏡を見てジェシカを観察するのだった。

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