初めての依頼
第4話
ミノタウロス門番に見送られながら街を出る。
今の竜治の装備はボロボロの鞄、と新調したリュックサック、先ほど武器屋で購入してきた武器――メイスである。
あの箱の中にあったもので今すぐ使えそうなものがこのメイスだ。
殴打に特化したこの武器は弓等のように特別なスキルも必要ない。
第一ろくに訓練も受けてないのだ、竜治にまともにできるのは殴ることぐらいである。
一応メイスを振れるかどうかが唯一の心配だったのだが、レベルが上がって筋力が上がったおかげか全く問題なく振ることができた。まあ本当はメイスの出番になるような事態にならないのが一番なのだが。
森に入って30分もすると目的のクレール草が見つかるようになってきた。
ただ意外と群生はしていなく、一か所に5本程度しか生えていない。これでは20本集めるのに結構かかってしまうと思いながらも取りあえずここにあるだけの分を摘み取りリュックサックに入れる。これは道具屋で銀貨1枚で購入したものであるが意外と大きくこれからも役立ってくれそうである。
そうしてまた別の場所にクレール草を探しになるべく奥には入らないようにしながら移動する。
“ガササ”茂みの揺れる音とともに警戒を強める。
小鬼なら何度も対処しているから楽なのだが、その願いもむなしく表れたのは柴犬を一回り大きくしたモンスター(もしかしたら狼かもしれない)だった。
勢いよく飛びかかってくる犬の口にここ数日の間におなじみになった動きで鞄を口に叩きこみ、鞄ごと地面に放り投げる。
モンスターは地面に着地するとこちらに目もくれず鞄にかじりついたまま激しく頭をふっている。
この前の小鬼と違って見慣れた形のモンスターに思わず躊躇してしまう。
しかしその鋭い牙で涎をったらしながら噛み付いている姿を見ているとそれよりも本能的に恐怖を感じてしまう。
幸い今は謎行動をしているおかげでこちらに注意を払っていない。もう既に小鬼は殺している、これも一緒だ、そう言い聞かせてその無防備なその頭へメイスを思い切り叩きつけた。
殴ってみれば意外とすんなり受け入れられるものでこんなものかといった感想である。
それよりも無事モンスターの撃退に成功した竜治はその死骸を前にして途方に暮れていた。
というのもちらりとギルドで見た情報ではあるがモンスターにはそれぞれ討伐証明部位というものがあり、それを持ち帰るとそれに見合った報酬が受けられるというものだ。
しかし竜治はこのモンスターの部位について調べていない。第一ナイフなどがないため知っていても剥ぎとれない可能性がある。
せっかく倒したのにと思いながら移動をはじめようとすると。
「gaaaaaaa」
また今のと同じモンスターが飛びかかってきた。
完全に不意を突かれ、普段の盾の鞄も死骸に咥えられたままの状況、思わず腕でその一撃を防ごうとするが、こちらの予想に反し、モンスターは鞄に飛びかかっていった。
そして先ほどの個体と同じように鞄に齧り付く。
「くらえ」
またも隙だらけのその頭をメイスで思いっきり叩き割った。
““パンパカパーン レベルが7に上がったよ”
おっ、と思いながら表示されるステータスを確認すると
山中竜治
Lv 7
Str 57
まさかのこれだけしか表示されなかった。正直このランダムな表示時間はやめてほしい。
特に下の方のスキルやLukといったステータスは最初にしか確認できていない。
そんなステータス表示に気を落としながら今襲われたモンスター達について考える。
彼らは俺に向かっ来たはずなのになぜか鞄にしか興味を示さなかった。
そのおかげで助かったのもあるがこれは明らかに変である。
そもそもあの中には食料も入ってないし、散々鈍器代わりにしてズタボロになっているのだが。
そこである仮説を思いつく、もしかしたらあのモンスター達は小鬼の血の匂いで襲ってきたのではないかと。
あの鞄にはかなりの量の血がしみ込んでしまっているし、あのモンスターも犬型ということで嗅覚に優れていたのだろう。だから鞄の血のにおいに誘われてしまったのだ。
そう考えるとこの鞄は早々に手放さないと大変なことになってしまう。
この前は犬型モンスターに襲われなかったあたり、このモンスターはこの辺りが縄張りなのだろう。
そんななかで襲われる目印を持っている、具体的にはあのモンスターに狙われ放題ということだ。
竜治はあわててメイスで穴を掘るとそこに鞄を埋めてその辺にあった木の棒をさして軽いお墓のようなものを作る。
本来は放り出すだけでよかったのだが、ここまでお世話になった鞄である、無碍に扱うことができなかった。
そしてふと気付く、このモンスター達の血のにおいに寄ってくるのではないかと。
仲間の死体を襲うことはないとは思いたいが共食いをしない性格ともわからない。
なんにせよいつまでも死骸と一緒にいたくなくて、竜治は足早にそこを立ち去った。
「よし、こんなものか」
誰に言うでもなく集めた薬草を前に呟く。
本当は午前中のうちに数を集めて報酬を増やしたかったのだが、結局うまく群生地を見つけることができず20本でしか集まらなかった。
今は太陽が真上に来ているからお昼を回ったところだろうか、いったん休憩も兼ねて途中で見つけた木の実を出しながら少し開けた場所に座る。
この実は最初のサバイバルの時に見つけた種類で甘酸っぱくて意外とうまいのだ。
そんな事をしながらゆっくりと休憩をしていると。
「キャァー」
少し離れたところに悲鳴とともに女の子が転がり込んできた。




