はじめてのパーティーその2
第16話
「残りは」
こちらに向かっていた2体を倒し残りの個体が居ないか確認する。
一応あの時点で後3体残っていたはずである。
“ドスン”その音をした方を見るとレイファが剣を振って血を払っており、その前には3体のオークが倒れていた。その体はぱっと見無傷であり正直なぜあのダンジョンで苦戦していたのか分からない。
「そっちも終わったの?……あら?怪我してるじゃない。情けないわね」
「ぐっ」
確かに彼女と違い無傷で倒せなかったのだが、そんな事を一々言われるいわれはない。
「はぁこれ使いなさい」
そう言って彼女が投げてきたのは包帯だった。どうやらこれで治療しろということらしい。
「いいのか?」
「足手まといになる方が困るのよ、それだけよ」
そう言いながらそっぽを向く彼女の耳が少し赤くなっているのを竜治は見逃さなかった。
オークの耳を剥いで回る。というのもこいつの討伐部位も耳であり彼女が剥ぎ取りを拒否したからである。
彼女いわく
「包帯あげたんだからそれぐらいは働きなさい」
とのこと。その彼女は今切り株に座り剣を研いでいる。
こちらも剥ぎとりを終えると彼女のもとに合流する。
「さてこれからどうするんだ?」
「いい?オークの群れは最低でも20、後10はいるはず。おそらくここが巣のはずだから隠れてそいつらが戻ってくるのを待つわよ」
そう言うと少し離れた茂みに歩いて行く。
その後を追おうとしてふと横に落ちている斧に目にはいり何となく手にしてみる。
意外としっくりくるそれは打撃武器しかなかった竜治にとっては丁度いい武器であるのでありがたく拝借することにした。
斧とメイスを手にしたまま彼女の隠れる茂みへと足を進めていった。
数時間待ったが未だにオークが現れる気配はなく、本当はこちらが巣ではなかったのではないかと思い始めた辺りで奥の茂みをかき分けて現れる存在があった。オークだ。
全部で8体現れたそれは仲間の死体を見てプギャプギャとなにか話し合っている。
しばらく何事かと観察していると、やつらは中もの死体を一か所に集め始めそれを食べ始めた。
まさかの共食いである。やつらにとっては死んだ仲間などただの肉の塊にしか見えていないのだろう。
だがこれはチャンスである。こちらに背を向けて一心不乱に食事をする姿は隙だらけでまさに攻撃してくださいと言わんばかりである。
右手のメイス、左手の斧に力を込めて持ちレイファの方を向くと彼女も同じ考えだったのかこちらにうなずき返す。
「うおおおおおおお」
茂みから飛び出し一直線にやつらに向かうと、その首を斧で切り飛ばした。
結論からいえば楽勝であった。さっきより数が少なかったのもあるが、先ほどの戦いで動きに慣れていたこともあり苦戦することはなかった。
それに新しく使うようにした斧が意外と使いやすく、戦いが楽になったことも大きい。
これならば新品の斧を街で探してみるのもよさそうだ。
因みにこの戦いでもレベルが上がり13になった。やはりダンジョン内と違って外だとサクサクレベルが上がる。
先ほどまでと同じようにオークの耳を集めて回る。今回も彼女は切り株に座って休憩中だ。
しばらく回収していると茂みがこすれる音が聞こえてきて、思わず警戒態勢をとるがモンスターが現れる気配はない。
少しの間警戒していたが何も起る気配がない為緊張を解くと、彼女の背後からオークが飛び出してきた。
先ほどまでの個体と違ってのその体は全体的に赤く染まっている。
「ちぃっ」
反射的にレイファが切りかかろうとするがやつの方が攻撃するのが早い。
その手に持っていた棍棒を頭に振り下ろすと、知恵を流しながら彼女の体が崩れ落ちる。
「レイファ!!」
救援に向かおうと走り出そうとするとこちらの目の前にもう1体のオークが滑り込んできた。その間に彼女を攻撃したオークが体を担ぎあげて森の中に入っていく。
「どけっ」
追おうとするもこちらの行く手をふさぐように立ちふさがってくる。
攻撃を仕掛けるも先ほどまでの個体とは違い、素早いのか軽いステップでこちらの攻撃を避けてくる。
こちらの武器はどうしても大ぶりになる為相性が悪い。こんなことなら別の武器をとっておくべきだったかと後悔するもそれはそれでうまく使いこなせる自信はない。
「邪魔だ」
何度目かになる打ち合いをしながら森の奥を見ると、既にその姿は見えなくなってしまっている。
少しよそ見をしたこちらにチャンスとばかりに剣をふるってくるのを斧を使いガードする。
このままではらちが明かない、一か八かにかけて全力でオークに向けてメイスを投擲する。
それは盾で防がれるものの相手の視界を一瞬奪うことに成功すると、両手で斧を持ち盾の下に見える足に向けて全力で切りかかる。
一瞬遅れて剣で防ごうとしてくるがスピードの乗ったこちらの一撃を簡単に受け止めることはできず、更にここまでの戦闘で疲弊していたのか半ばから剣が断ち切られる。
その勢いのままオークの足を切断すると、倒れてきた体に斧を振り下ろした。
先ほどの相手が向かって行った先を追いかけながら森を行く。
幸いと言うべきか彼女の流している血がところどころに付着しておりそれが目印になってみ失うことはなさそうだ。
しばらく走り崖の下のような場所に出ると血痕がそこに空いた洞窟に続いているのが見て取れる。どうやらこちらが本命の巣のようだ。
ただ何故かその入り口をゴブリンが守っている。
ここはやつらの巣なのかとも思うが血痕が続いている以上オークがこの中に入っていったのは間違いない。
「考えるのは後だ」
余計なことを考え始めた思考を振りきりゴブリンに向けて駆け出した。
何体目かのゴブリンを倒し洞窟の先を進む。
既にレベルが14に上がっていた。
しかし予想と違いこの横穴はただ掘られているだけでなく途中には机や椅子のようなものも見られまるでやつらが高度な知能を持っているように感じさせる。
さらに奥へ進んで行くとなんだか前方が明るい。慎重に足を進めその角から覗きこむとそこに広がっていたのは異様な光景であった。
大きくくりぬかれた広いスペース、かがり火がたかれた祭壇のようなものがありその中央を囲うように広がる魔法陣のようなもの、その祭壇に向かって膝をつき祈るような格好をするゴブリン達。
「あれは」
その祭壇の中央には先ほどの赤いオークが立ち、かがり火に挟まれた石の台の上にはレイファが寝かされている。その姿はさながら黒魔術に対する生贄を彷彿とさせる。
この会場にいる敵の数は多い、もし突っ込んだらあっという間に囲まれて殺されるかもしれない、それでも竜治には彼女を見捨てるという選択肢はなかった。
幸いやつらは祈りをささげるのに夢中でこちらに気が付いていない、今なら奇襲が可能である。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
雄たけびと共にゴブリンの群れの中に斧を投擲すると数体のゴブリンを巻き込みながら斧が飛んでいく。急な乱入者に相手が反応できないうちに手近な敵の頭をつぶす。
「かかってこいやああああああああああ」
叫びながらメイスを横なぎに振るうとこれまた複数の敵が吹っ飛んでいく。その様はさながら某無双ゲームのようである。
ただ相手もやられっぱなしではない、こちらの死角から飛びかかりその手に持ったナイフで切りかかってくる。
「ぐっ、効かねえよ」
それを意に介さずメイスを振り続ける。とにかく振る、無心で振る。
いつの間にかその場には赤いオークと竜治、そして囚われたレイファしか残されてはいなかった。




