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ダンジョンへ行こうその1

お盆は少し休みます。次回は16日予定です。

第10話

結局昨日はあれから何もする気が起きず簡単に食事を済ませると、まだ日も落ち切ってないうちにいつもの宿で眠りに付いた。

一応日銭を稼ぐために冒険者ギルドへ向かうもののその足取りはどうしても重くなりうつむきながら歩いてしまう。


「はぁ」


ため息をつきながドアをくぐろうとすると“ドン”ちょうど出てきた誰かにぶつかってしまう。


「あっすみませ……」


「どこ見てるのよ、このうすのろ」


謝ろうと思って顔をあげると目に飛び込んできたのは、つりめガチの目を更にきつくさせた昨日の女性の姿であった。

思わず謝ろうとした言葉を飲み込んでしまったのも無理はないだろう。

今の竜治の状況を作ったのは目の前の女性なのだ。


「さっさとどいて」


そう言いながら竜治を押しのけるように進むと雑踏の中に消えて言った。


「いやーお前さんも運がないな、レイファに絡まれるとは」


そう言いながら獣人の男が話しかけてくる。その頭から生えているのは犬の耳だろうか、狼の耳だろうか、今の竜治に確かめるすべはない。


「レイファ?」


「今の女だよ、最近冒険者デビューしてめきめき力をつけたんだけどなあんな性格だから誰ともパーティを組めない問題児なのさ」


「そうなのか。それよりあんたは?」


「ああ、自己紹介してなかったか。俺の名前はハサン、しがない中堅冒険者さ。よろしくなルーキー君」


そう言いながらこちらに手を出してくるのでそれにこたえて握手する。


「俺は竜治・山中だ、竜治と呼んでくれ。なんで俺がルーキーだと?」


「最近見かけ始めたのと、いつもギルド内でキョロキョロしてたからなそれくらいわかるさ」


「そうか」


「おうよ。もし困ったことがあったら聞きに来てくれよな、出来る範囲で相談に乗ってやるぜ」


「助かるけどいいのか?」


「まあ普段はこんなことしてないんだがな、レイファに絡まれてるお前がかわいそうでほっとけなくなったのよ。まあこれも何かの縁ってことで」


そう言い手をひらひらと振りながらギルドの受付に向かって行く。

昨日からの事で傷ついていた竜治の心が少しだけ癒されたのだった。


いつものように受付カウンターに免許証を提出すると

「おめでとうございます山中さん、初心者を卒業されましたね。Eランク昇格です」


突然そんな事を言われ戸惑ってしまう。


「えぇっとどういうことですか?」


「最初に説明を受けていませんでした?レベル10を超えると初心者卒業とみなされ、自動的にEランクに昇格するんです」


確かに昨日の薬草採取の途中にグレイフォックスを倒していたらレベルは10に上がっていた。しかし自分のステータスもろくに見れないのになぜ受付は分かったのだろうか。


「そうなんですか?因みに何故レベルがわかったんですか?」


「はい、それはですねここを見てください。強さに応じてレベルは記入されるんですよ」


そう言い受付嬢の示してくれた片隅には確かに10の文字がある。どうやら自動的に書き込んでくれるらしい。


「因みにステータスは?」


「ステータスですか?それは鑑定持ちの人じゃないと確認できませんよ」


「あーそうなんですね」


それからいくつか質問をしていると、どうやら普通の人はステータスは鑑定で確認するしか知る方法はなく、竜治のようにウインドウが出ることはないとのこと。

レベル自体もギルドの受付で更新を行な初めてレベルの上昇がわかるとのことだった。

一応瞬間的とはいえステータスを確認できる竜治は特別な存在らしい。

色々と教えてくれた受付嬢に別れを告げ今日の依頼を探すべくPCに向かう。

今の竜治は昨日からの鬱蒼とした気分は晴れていた。


改めてPCを確認する。Eランクに上がったことにより受けられる依頼の幅が増えていた。

今まではなかった護衛の依頼や、討伐するモンスターの種類といったものが増えている。

その中でも特に目を引いたのがダンジョンである。

ダンジョン、ダンジョンである、ここでテンションが上がらなければ現代っ子ではないだろう。昨日も同じようなことでテンションが上がっていた気がするが、魔法ときて今度はダンジョンである。ファンタジー要素盛り盛である。

しかし竜治の中の冷静な部分が警鐘を鳴らす。それはEランクという低ランクの冒険者が受けてしまってもいいのだろうかということだ。

くわしく依頼を見てみるとどうやら依頼にあるダンジョンはすでに攻略されてしまっているらしい。

ただダンジョンというのは一定時間でモンスターが出現し、外とは違い死体が残らず代わりにアイテムを落とすことがあるとのこと。まさに想像していたダンジョンである。

ダンジョン内で拾ったアイテムはその人の自由にしてもいい、その性質からクリア済みのダンジョンでも入ることにうまみがあるらしい。

その代わりギルドからの報酬は0であるとのこと。それならば勝手にダンジョンに入ればいいと思ったのだが、それだと一般人なども入り込んで命を落としてしまうことがあるため、一応ダンジョンは発見される度冒険者ギルドで管理され門番が常駐しているらしい。

そこで依頼書を見せないと中に入ることができないとのこと。

今回受けられるのは初心者ダンジョンと呼ばれ推奨レベルが10~となっている。

まだ見ぬダンジョンへの期待に胸を膨らませながら依頼書を発行するのであった。



いつもの門とは違うところから街を出る。これだけでも景色が変わりなんだか新鮮である。

依頼書に書かれている地図を見ながらしばらく歩いているとなんだか森の様子がおかしい事に気がついた。

何というか明るいのである。いや、昼間なのだから明るいのは当然なのだが何というか人工的な明るさを感じるのだ。

そのことを疑問に思いながらその足を進めるとそこに現れた景色に竜治は思わず声を失った。

立ち並ぶ屋台の列、周囲に乱立する“冒険者熱烈歓迎”ののぼり達、それはダンジョンの入り口と思われる場所まで続いている。

その肝心のダンジョンもひどい有様で、入口の上にはネオン管でかたどられた“初心者ダンジョンこちら”の文字。更に入口に向けて矢印が何本も設置されており、こちらもネオン管で作られ点滅を繰り返して周囲を明るく染めている。

周囲には先ほどよりも多くのぼりが設置されその様はまさに元の世界でのパチンコ

屋のようである。

入口にはガードマンのように二人のスーツ姿の男が立っておりこの人たちが門番だと推測される。

しかしそんな事よりもこの光景である。

ダンジョンに来たと思ったらまさかのパチンコ屋である、そんな事誰が想像できるだろうか。

確かに一発を狙うという意味では似たようなものなのかもしれない。しかしこれはあんまりではないだろうか。

竜治の中のファンタジーへの憧れがまたも音をたてて崩れ落ちていく瞬間であった。


取りあえず気を取り直しダンジョンへ足を進める。なるべく周囲の光景を目に入れないようにしながら、ここはダンジョンなんだと自分に言い聞かせながら。


「あの、すみません。ダンジョンに入りたいのですが」


「いらっしゃいませー、免許証と依頼書を出してくれるか」


「はい、どうぞ」


「うむ……よし、山中はダンジョンは初めてか?」


「はいそうです」


「そうか、一応知っていると思うがダンジョンの中で手に入ったものは自由にしていい。それと一応の忠告だが人が戦っている時はなるべく手助けをしないことだ、獲物の横取りと取られるからな。だがやられかけているのならなるべく助けてやってほしい、まあ余裕があればだな」


「わかりました」


「それとだ、もし冒険者の死体を見つけたら免許証を回収してくれると助かる。捜索依頼が出たりするからな」


「はい、色々ありがとうございます」


「何気にするな、初心者に説明するのも我々の仕事だからな。では初心者のダンジョンを楽しんできてくれたまえ」


二人の門番に見送られながらダンジョン内へと足を踏み入れた。


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