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3 ファッションが大事

 昨日の通勤時、私の愛車、スーパーカブ90が死んでしまいました。突然死です。20年連れ添ったバイクです。病める時も、病める時も、病める時も互いに支え合った愛車でした。彼女の冥福を祈りつつ、筆をとります。

 Ninja ZXの納車を待つ一月の間に、私はライダー用のヘルメットや服を買う事にします。

 先ずは、書店に行って、バイク雑誌の立ち読み。

 男性ライダーが多い中、女性のライダーもかなり載っています。みんなカッコいいです。テンション爆上がり。

 私はこれでもスタイルには自信があります。顔はヘルメットで隠れるので、良くても悪くても関係ありません。少々目つきがきつくても関係ないのです。

 胸は少し控えめですけど、スレンダーな私はライダースーツが良く似合うと思っています。

 アウトローなジャケットも、ブーツもカッコいいです。

 私が、妄想を膨らませて、立ち読みを続けていると、いつの間にか、オッサンと呼ばれる男性たちに取り囲まれていました。

 こ場所は男性向けの雑誌を陳列しているコーナーだったようです。


 うーオッサン臭い。

 やむを得ず、私は手に持っていたバイク雑誌を購入することにしました。

「おのれ、オッサンどもめ、女性雑誌コーナーに迷い込んだら、生かして返さない」

 私は復讐を誓いつつ、レジで支払いを済ませました。


 帰りの電車の中、袋から雑誌を取り出して、妄想を再開させます。

 スキーウエアは好感度UPと聞いた事がある。ライダースーツも同じことが言える。と思う。

 絶対そうだ。要は、似合う色合いとスッキリとしたシルエットだ。

「ふふふ、このジャケットとパンツならビジュアル好感度、30%UPね」

 私はそのジャケットを着てNinja ZXに跨る自分を想像する。

 悪くない。益々購入意欲が高まって行く。

 でも少し値段が高い。

 中古のバイクを買おうとしたが新車になった。免許の取得もまあまあの費用が掛かった。

 その上、ヘルメット、グローブにシューズが必要。

 服も最低2つは欲しい。一つの服にお金をかける訳にはいかない。

 ・・・・。

 少しテンションが落ちてきた。


 車窓から外をぼんやりと眺める。

 外は、少し日が落ちてきている。

 ゆっくりと走る琴電。その線路の隣には並行して走る公道がある。

 そこには帰宅を急ぐ自動車と、少ないがバイクも走っている。その多くはスクーター型、ヨーロピアンやアメリカンタイプのバイクはあまり見かけない。

 暫く眺めていると、後方から緑のバイクが現れ電車と並走する。Ninja ZXだ。もしかして、私が買おうとしていたバイクでは。

 そのような偶然、ありえないと思いながらも敵意が浮上する。

「あの野郎、私のNinja ZXを横取りしやがって」

 少しの時間、並走していた緑のバイクは、殺気を感じたのか、スピードを上げ離れて行った。

 怒りの対象が居なくなって少し落ち着いた私は、再度バイク雑誌に目を落とす。

 しかし、雑誌の字が頭に入らない。先ほどのNinja ZXが気にかかる。

 公道でのバイクの勝負はスピードではない。

 勝負はビジュアルだ!

 横取り野郎に負ける訳にはいかない!

 落ちていたテンションは再び浮上する。

「このジャケットが欲しい」


 その要求は自宅に帰っても続きました。

 卓上のパソコンのスイッチを入れ、アマゾンでライダースジャケットを検索する。

 有るわ有るわ、私にお似合いの服が、カッコいい。それも安い。

 私は、プッチと購入ボタンを押します。


 机の上に肘を乗せ、口の前で手組む。

「勝ったな」

 解る人には解る、碇ゲンドウの勝利宣言。気持ちいい。



 物欲は、2,500年前に釈迦も問題視していたような。でも良いよね。欲は無いより、有った方が幸せを感じる。私も新しいバイクが欲しい。でも修理して乗る事にしました。健やかなる時も病める時も支え合うのです。決してお金がないのではありません。

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