お掃除
ムラマサが店を出ると、以前ハボの屋敷に襲撃に来た者たちと同じ黒い外套に身を包んだ5人組が立っていた。
「お前ら。ハボんとこに来てた奴らの仲間だな?」
「今回はこの前みたいにはいかねえぞ。」
黒の集団に一人が顔を隠していた外套のフードを取りながら言った。
ユリスを襲っていた奴らの生き残りの男だ。
その男、ムンドからは前回の怯えは消えていた。余程自信のある仲間を連れて来たのだろう。
「俺ら魔王が配下“玄武”に手を出したこと。後悔させてやる!!」
ムンドが怒りを浮かべながらそう叫ぶと玄武の5人はムラマサを囲む陣形をとり、ムラマサを睨みつける。
「おいおい。焦らすなよ。ほれ、さっさとかかってこい。」
ムラマサはそう挑発しながら首を鳴らす。
「なめんなよ…!」
玄武の5人は一斉にそれぞれの武器を抜き、ムラマサに斬りかかる。
まず正面にいた奴のスピアがムラマサの右肩に突き刺さる。一瞬硬直したのを見逃さず次の瞬間には背後から戦斧が首を刎ねた。
あまりにあっけない結末に玄武の一人が嗤った。
「はっはっは、ムンド。おめえら。こんなのに手こずってたのかよ。」
だが、別の一人が異変に気付いた。
「ガズラ、ちょっと待て。こいつ、血が一滴も出てねえぞ。」
「ミルズ、さすがにそんなわけ…!?」
ガズラは自分の手で首を刎ねた死体に目をやる。
胴と頭の切断面から黒い霧が漏れ出てきて、霧同士が絡み合う。
そしてそれらはたがいに引き合い、頭は何もなかったように体にくっついた。
「あらら。まあ、流石に血が出ないと気付くよな。ははは。」
死体が…いや、先ほどまで死体だったはずの男は軽く笑いながら起き上がった。
「おいムンド!こいつ、いったい何モンだ!上位不死者か何かか!?」
「い、いや、知らねえ!!でも!前回は”夜”が来たんだ!そうなると手に負えねえ!リーダーは夜の奴の力を魔王様級だとも言っていた!」
「魔王様級…言い過ぎな気もするが。アイツの残した言葉なら信用に値する、か。よしお前ら!リミットは夜が来るまで。日が暮れるまでの3時間以内に奴を始末する!全員!魔力を開放しろ!!」
ミルズがそう叫ぶと玄武の5人は武器に、体に、力を込めた。
「「魔力開放!!」」
5人の体から魔力が溢れ出す。
「盛り上がっているところ悪いが…」
ムラマサは余裕の笑顔で呟いた。
「”夜”ってのは自然の摂理じゃねえ…。 おれのモンだ!!!!」
ムラマサはそう言うと手のひらをミルズに向けた。
辺りから太陽の光が消えた。
代わりに星が煌めく”夜”が来た。
それは正真正銘の“夜“だった。漆黒の空間を妖しく照らす赤い満月。王都の動物達はざわめき、それとは裏腹に王都の人々はまるで寝静まったかのように、驚きのあまり静まり返る。喧騒と静寂が共生する。
「さて、第2ラウンド。始めようか。っと、その前に!」
ムラマサが背後の建物に向かって腕を振るうと闇が放たれた。
バタッッ…
建物の陰から黒の外套に身を包んだ何者かが倒れてきた。
呼吸は…なかった。
「これで一発かよ…そんなんなら隠れてんじゃねえよ。つまんねえな。おら、他に隠れてる4人も出てこい!」
ムラマサの声に呼応するように黒い外套に身を包み潜んでいた玄武の4人が殺気を放ちながら姿を現した。
「悪かったな、一人減らしちまった。お詫びにもうこの技は使わねえから許してくれや。」
「くっ…!?ばれていたとはいえ一撃だと…!だが奴1人に対してこちらは9人だ!油断せずに行けば必ず葬れる!いくぞ!!」
ミルズの言葉に一斉にムラマサに殺到する玄武の刺客たちだった。が…
「はっ。さっきのは嘘だ。ばぁぁぁぁぁぁか!!!!」
ムラマサは笑いながら両手を広げた。
夜の空間を一際|昏≪くら≫い闇が覆う。
断末魔を上げることすらなく…
玄武の者たちの命は散った。




