002
「……と言う話をお昼にしてたんだよっ」
「ほんと、リネ先輩の友達は楽しい人だね」
放課後、いつものように待ち合わせをして、リネは彼氏との帰途についていた。
帰り道はその日にあった出来事などをお互いに話ながら歩いていた。
「でも、本当に僕達は一緒に帰るぐらいだね。あと休みの日に電話するぐらい?」
「そうだね。じゃあ、今度の休みにどこか遊びに行く?」
リネの提案に満面の笑みで肯く。
「うん! どこに行こうか?」
「前は映画だったしなぁ。次も映画でもいいけど」
「海……は時期外れだしねぇ」
夏という季節はすぎているので、今の時期に海に行くのは少し時期外れだった。
もし、行ったとしても寂しい気持ちを感じること請け合いである。
「ではプールとかどうです?」
海の代わりになるものと考えて彼氏であるカナタが提案をする。
「近くにあったっけ?」
「あの遊園地にあった気がしますが、……ちょっと遠いですかね」
遊園地の場所を思い出す。電車を使っても学生二人が行くには遠い場所だった。
「じゃあ、二人でショッピングなんてどう?」
「リネ先輩、何か欲しいものがあるの?」
「いや特にはないけど、そういう場所を見て回るのって楽しくない?」
二人で行ける場所なら、駅前のあそこかな? などとリネは計画をたて始める。
「そうかな? でも、リネ先輩と一緒にいられるなら僕はどこでも楽しいですよ」
そんなカナタの言葉に思わず頭をなでたくなるが、リネは必死にこらえた。
男の子にそんなことすると、さすがに傷つくよね。と思いながら。
「あっ、もう着きましたね。じゃあここで」
いつもの分かれる曲がり角に着いて、リネは少し距離をとる。
「……うん。そうだね」
寂しそうにリネを見つめる視線を受けて、少し心残りがあるが笑顔を作りながら
「じゃあまた明日ねっ」
手を振りながら早足で離れていくリネ。
後ろ姿をじっと見つめる彼の顔は、笑顔だけとはいえないような顔をしていた。
空に大きく輝いた丸いものに照らされ始めるより少し前に、一面が真っ赤に染まる時間がボクは好きだった。
この澄んでいく空気の匂いや、遠くで「カァー」と鳴く声が好きだし、この時間になるとボクの前を色々な人が通り過ぎていく姿を見送るそれぞれ少し違った雰囲気も好きだった。
この時間だけは世界とボクとみんなが同じ色になり、孤独でないように感じる。
そんな日々が続いたある日、ボクの前をただ通りすぎる人々の中でボクの顔をのぞき込む小さな子供の姿があった。
顔をじっと見つめてニコッと無邪気に笑ったあと、ボクを抱き抱えながら走り出した。
気持ちよい風がボクの頬を揺らしていく。
ボクには出せないそのスピードに思わず目が細くなる。
この楽しさをもう少し味わっていたかった。