第1話:幼馴染の無防備すぎる朝
春のうららかな陽光が、カーテンの隙間から差し込む。
「ふわぁ……」
俺、天道湊が大きな欠伸とともにベッドで上半身を起こした、その時だった。
ガラッ!
「おっはよー! 湊、起きてるー!?」
「うおっ!?」
2階にある俺の部屋の窓が勢いよく開き、元気いっぱいの声とともに、一つの影がベランダから飛び込んできた。
幼馴染の、結衣だ。
家が隣同士で、部屋のベランダが近接しているとはいえ、年頃の女子がスパイアクションさながらに男の部屋へ毎朝侵入してくるのはいかがなものか。
だが、問題はそこじゃない。
「お前な、ノックくらい……って、おい!」
振り返った俺は、思わず目を剥いた。
結衣は、絶賛着替えの途中だったのだ。
指定の白ブラウスは、下から半分ほどボタンが留まっていない。そのせいで、はち切れんばかりに実った柔らかな双丘の谷間と、それを包み込む淡いピンク色のレースが、無防備に晒されている。
さらに視線を下げれば、チェック柄のプリーツスカートもホックが開いたままで、動くたびに白い太ももがチラチラと覗いていた。
「ちょっと結衣! 着替えてから来いっていつも言ってるだろ!」
「えー、だって湊の顔早く見たかったんだもん。それに、湊なら減るもんじゃないし」
結衣は全く気にする素振りを見せず、へへっと無邪気に笑う。
そしてあろうことか、そのままの姿で俺のベッドへとダイブしてきた。
「ちょっ、おまっ……!」
「えへへー、湊のベッド、あったかーい」
ドスン、という軽い衝撃とともに、結衣の身体が俺に密着する。
彼女の暴力的なまでに豊かな胸が、俺の腕にムギュッと押し付けられた。
「……っ!」
朝から嗅ぐには刺激が強すぎる、甘いフローラルの香り。
そして、薄いブラウス越しに、いや、もはや直接と言っていいほど生々しく伝わってくる、柔らかな弾力と肌の熱。
一瞬にして頭に血が上り、理性のストッパーが悲鳴を上げ始める。
「ほら、湊の心臓、ドクドクいってるよ?」
悪戯っぽく笑う結衣の顔が、息がかかるほどすぐ目の前にある。
上目遣いの潤んだ瞳。少しだけ開いた桜色の唇。そして、俺の腕に押し当てられたまま、彼女の呼吸に合わせて形を変える双丘の感触。
「ち、ちがっ、これは……その、寝起きで血圧が……!」
「ふーん? 血圧が上がると、顔だけじゃなくて、なんだか湊の身体も熱くなってくるんだね?」
「バカッ! 変なこと言うな! 早く着替えろ!」
結衣を無理やり引き剥がそうとするが、彼女は手足を絡ませてコアラのようにしがみついて離れない。そのたびに、あちこちの柔らかい部分が俺の身体に擦れ、さらなる拷問となって降り注ぐ。
朝からこれだ。
俺の日常は、常に理性の限界との戦いである。
今日一日の波乱を覚悟しながら、俺は下半身に意識がいかないよう、必死に頭の中で円周率を唱え始めたのだった。




