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第五話 たまにはうんこして寝ておきたい! ドツキタイくんの休日!(前編)

春奈:おたよりコーナーだよ!

留竜牙トマルリュウガくん護大虎マモルタイガさんのイラストです! ベルリンのアドルフくん素敵なイラストありがとう!

挿絵(By みてみん)

「うわわわわわああぁぁぁぁあんっっっ!?!」


「やかましいキヨカワ!」

「合体だ!」



「今日はっ! 今日だけはやめてぇぇえ!」

「よし、行こう」「ククク聞こえんなあ!」


「バーゲンがあるのよっ!」



 マジで戦いたくない春奈!


 戦災により多くのブランド品が二束三文の今!

 女子高生にとってはインフルエンサーやセレブしか身に纏えなかったあんなブランドこんなブランドが!


「いつもその服だろ」

「そうだけど違うのよ!」


 パクが他人の服装に気を配るなど珍しい。


「何も入らんバッグなんていらないだろ」

 曲がりなりにも巨大なニトログリセリンの入ったビンや戦災難民のためのトイレ施設を大量に持って移動できる戦闘機を使える春奈が役にも立たないものを欲しがる理由がいまいちわからないドツキタイである。


 ……なんせ春奈は二人にめちゃくちゃ持たせるつもりなのだから!

 素直に「バーゲンの荷物持ちだと?」「いいぞいいぞ急ごうか」と拉致られ、前回倒し損ねたヒマラヤ山脈ハイヴキノコ野郎討伐作戦に参加させられた春奈。


 いい加減懲りた方がいい。



「わたしのバックぅー!」


 珍しくうんこ漏らしそうになっていないのに殺意MAXの春奈に二人はご機嫌である!



 春奈にとってレジィナたちの仇ともいえる宿敵だが、やつは己自ら動くことはできない。


 時々ボコボコと胞子を撒き散らし、それが地熱により引火して爆発、胞子が宇宙空間に逃げて何度でも復活するとのことで追撃は延期されたのだ。



 しかるに、万全の体制を持って人類はやつを一撃殲滅すべく策を練った!



 まず、陽菜に美味しいものを食べさせる。


 アイスクリーム、天ぷら、スイカ、そうめん、うなぎ、そば……全部食い合わせがよくないが、新しい女性スタッフたちと久しぶりの珍味を彼女は堪能しまくった!


 まさに至福の時である。


 春菜の体調をはかり、絶妙のタイミングで彼女をゴウウンガーに乗せる。


 これが難しい。そそそと春奈はお花を積みに行くので男性スタッフは気づきにくい。

 バシッと他の女性陣が彼女を捕獲し怒涛の女子トークで惹きつける。

 もちろん話題はバーゲンである。


 春奈のテンションが上がり、理想の荷物持ち二人を確保に春奈が動くのを確認。

 その進路上のトイレは全てIoTトイレであり、春奈が近づくと『使用中』になる。


 あとはすでにスタンバイしている二人が言葉巧みにゴウウンガーに春奈を載せる。もとい乗せる。



 頑張れ春奈。人類の為に(棒)。



「チェーンジ! ゴウウンガー!」


 ドツキタイが叫ぶ。

 彼は空戦タイプとして主導権を握ると。

「トマホーク! ブーメラン!」

 まずは牽制とばかりに巨大な斧を次々と投げる。

 小型中型怪獣が薙ぎ倒され、それでもなお人類を苛む最大のハイヴでもあるキノコ野郎は揺らぐ気配なし。

 人類はプロトタイプゴウウンガーや核兵器、ありとあらゆる戦力を投入している。


 春奈たち以外、皆生きて帰ることなど考えていない。まさに決戦なのだ!



 ヒマラヤ山脈キノコドラゴン(仮称)は割とどうでもいい春奈の情念を受けてパワーアップ中のゴウウンガーに初めて戸惑うかのように蠢く。


 胞子をばら撒き新たな小型怪獣を生み出すために。


「核兵器全投入!」


 人類は核兵器を地球に放つことを嫌がる『こすもすねっと』を接収して社長たちを脅してでもこの作戦に協力させた。


 人類に残されし核兵器のバーゲンセールである。

 アメリカ大陸の北側はぶっ飛んで怪獣大陸になっているし、南アメリカ大陸もいつ落ちるかわからない。

 今反撃を行わねばならぬ。


 人類がこの先生きのこるには?!



「ちょっ、ちょっと二人とも……悪いんだけどさ……もうすこっ!?」


 うっ。

 あわ危なかった。



「きたきたきたー!」「ハルナの便意きたー!」


「だからどうしてエネルギー残量で人のがまんしていることがバレるのよー!? みんなのばかぁ!?」


 生き残っている戦士たちは彼女の明るい声に女神をみて散っていく。


「あとは任せました!」

 懐かしい日本帝国の言葉と共にミサイル発射装置に不調を出した旧式機は火柱となる。


「……劣等民族にしてはやる」

 パクはドツキタイの悪罵を無視して笑う。

 その火柱を合図に、完全なるタイミングで人類が持つ核兵器の全てが一点投下された。


『雨に歌いましょう』


 全ての核兵器をその一撃に。


「重力爆弾発動だ!」「吹き飛べや!」

「……レジィナさんお願いっ! みんなを救って!」


 3人は溢れる情念を込めて世界中から降り注ぐ核兵器をひとまとめにし、小型ブラックホールを生成する。

 ともすれば地球ごと消し飛び太陽系がブラックホール化し沈もうとも、いや宇宙が滅びようとも。



「グラビティブラストぉぉぉおおおおおっっぅお!!」


【2030/9/21 神大英帝国 神倫敦】



 シケモクが大量に積もった灰皿は人類の至宝たる名画だったもの。きっとタイトル通り涙を流していることであろう。

 ゴミのように積み重なった書類は今なお排出されるFAXにより追加され続ける。


 強い酒と煙草。

 そして『眠気覚ましの薬』のアンプル。


 大柄ゆえに形の良さ際立ちあまり豊かに見えない双丘は横臥おうがしてなお充分な体積を示しており、千切れかけた先端からは赤い血潮が今なお流れていた。

 あちこちに傷や痣あれどその女性は美しい部類に入る。とりあえず隣にていびきする二人組に蹴りを入れる。反応なし。


 紫炎が揺らぎ、その元となった炎の先端をその一人の頬に押し付ける。じゅっと皮膚が焼ける臭いと寝ぼけた反応。


「終わったらでてけ」

 すでにもう一本吸い始めている。

 長い長い紫炎を吐いた彼女はもう一人の股間にそれを押し付けた。


「あ~。朝かよたく……」

「このヘッタクソどもやるだけやってさっさと寝やがってクソが」


 股間をバリボリ搔きながらドツキタイは身を起こす。

 パクは額を掻くと「まぁ悪くはなかった」とだけコメントした。

 こっちの相手は別に劣等民族でもいいらしい。


 囃子はやし不足だらず博士はあちこち噛まれるわ殴られるわ二人がかりで散々なことをされつつもとりあえず生きていた。


 彼女もまたゴウウンガーに選ばれたものなのである。

 選ばれていないのは春菜だけだ。


「なぁダラズ」

 親し気にドツキタイは博士の下の名を呼ぶ。

 もともと日系人南アメリカ連合国育ちだからだが。


「なんだ? もう一回か? いい加減にしろヘタクソ」

「いや、なんか違う気がするんだよなぁ」


 使うべきものは全部使っているがなんか違う感がある。


「なぁ。パク。博士を乗せたほうがよくないか」

「……」


 相方は特に何も言わない。

 プロトタイプゴウウンガーは通常の人間でも使えなくもないがやはり出力に問題がある。普通に戦闘機の方が使いやすい。


「唾でもつけときゃ治る」

「いや、そういう話ではないと思う」


 珍しくパクは博士を気遣うように言うと。

「まぁ前に拉致られた時は博士……ハヤシが乗ってたな」

「アレはしんどいぞ。おまえの3寸よりは」


 テメェ! 殴りかかるパクをハプキドーで殴る蹴る博士。合気道も習得していて弱くはないのだ。


「やめろ。殺すな」

 ドツキタイは相方を止める。

 とりあえずぞうさんをやめようぜ」



「いやな、キヨカワは本当に3人目なのか?」



 自ら連れてきたドツキタイもパクも今更なことを言い出した。



「博士どこかなぁ」


 春奈が新しい基地をうろちょろ。

 探検を兼ねているが、護衛の女性にも親しげだ。

 普段春奈の隣にいる二人が一番春奈に危ないのだが、春奈がアレすぎて『萎える』(※パク談)『面倒』(※ドツキタイ)でそう言うことにはなっていない。


「まぁ、博士も忙しいですから」

 割とファションは適当な女性だが、腰に巻いたボロボロのあまり灰色になった空手帯が剣呑だ。


「トラちゃん、いつもありがとう」

「ふふ。私としてはかわいい妹みたいで」


 荒々しい雰囲気に反して意外と可愛らしい笑みを浮かべるのは空手女子60kg級型の部金メダリスト『護大牙(マモルタイガ)』。型なんてダンスとあざけるパクを軽く投げ飛ばした女傑であり、ドツキタイとも組手をほどほどにこなせるひとだ。

 背丈は実に百八十を超えている。それでもゴウウンガーパイロットには力負けするのだが人類の中ではもっとも強い女の一人であろう。



「で、二人とはうまくいってる?」

「ち、ち、ちがいます! たまたま! 時々! ロボットに乗せられるだけだもん! ……この間買い物付きあってもらったけど」


「やっるぅ〜!」

 意外とかわいい声と可愛くない打撃で春奈の背が叩かれた。



 結局付き合わされた!

 泣く子と猫には勝てないようなものである!



「私にもいるのよ。赤い糸で繋がれたひとが」

「えー!? 聞いてない!? だれだれ?! 基地の人?!」


「絶対生きていると思うけど、私のために怒ってくれて除名処分された柔道男子75キログラム、護竜牙まもるりゅうがってひと。



 この場にリュウガがいたら意見は違っただろうが、彼女の中ではそうだった。

 とりあえずオリンピック委員会の上層部は彼一人に壊滅された。



「おーい。リュウガ。アレじゃね」

「マジかヨシツネ。ドーバー海峡泳いだ甲斐があったわ」


 義経の名に反する巨漢は彼を振り返る。

 小型怪獣ボコったりアイアンショックとばかりに大型怪獣討伐したり水をがぶ飲みしつつ彼らは進む。



「神大英帝国首都神倫敦だな」

「酒。女。そしてメシ!」


 とりあえず作者の母も10日間の旅行初日から『野菜が出てこない』と嘆いたとか、他にもきゅうりの北限のためきゅうりサンドイッチがご馳走だったとか色々言われてしまう国であるが、この世界においては比較的湿気も解消され気温も高く農業プラントも稼働している。



「女……女ねぇ」

「をいをい。アレはいい女だったろ? 勿体無い」



 ムカつくオリンピック委員会の連中ぶち殺して回ったら、セクハラされていた(※自称)というデカ女に惚れられ付き纏われ、『勝ったら結婚しろ』と四六時中決闘を挑まれ、寝込みに服を剥がされ、用便中にトイレの扉叩き壊して襲われ、戦うたびにこちらの技を覚えて使ってくるヤツをいい女と呼ぶならそうなのだろう。


 無差別級オリンピック金メダリスト候補でありながら飲酒喫煙怪しい葉っぱで除名された柳田義経と暴力沙汰でオリンピック候補から外された衛竜牙はそんなノリのまま終末世界を逞しく生きていた。



「あっ!」


 キュピーン。


 ゲート飛び越え銃撃かわし警備をひねってなげたのを何事もなくと言うならば彼らの感覚でにて『のんびり』街に入ると遠くから聞き慣れた声。


「マイダーリン! 運命ね!」

「ゲゲッ?! マモル!?」


 二人はテーブル飛び越え、石垣素手で登り、垂直の壁を次々蹴って陸橋の上に登りと恐るべきパルクールアクションをしながら追いかけ合う。


「つーかまえた! 春奈。このひとが私のダーリン!」

「バッキャロー!? 何がダーリン……」

 荒々しい少年の瞳が同年代の春奈と合う。

「こ、こんにちは」

 タイガから聞いていた話とは違うが春奈は挨拶。


「か、かわいい」

 少年が少々不穏な発言。


「なんですって?! 私の魅力をさらに認識したのね!」

「いや、テメェじゃねえ」


 少年は春菜の手を握る。


「ヤろうぜ」



 春奈はニコニコ笑いながらススススっと引き下がった。




「で、おまえ何してるの」

「ドツキタイくんもパクくんも手伝って! 名付けて『恋の大作戦』!」


 喫茶店外の窓に張り付く浮浪者たちにまじってこちらに貼り付いたままの少年と相棒を無視して春奈は叫び、二人はダルダルで返事する。


「ハルナぁ! 契ろうぜ!」

「パフェうまそうだなぁ!」


 春奈はとりあえず知人となった二人の痴態を無視することにしたようだ。


 春菜の頭の中では少年、リュウガに対して『誠心誠意で』『ふたりっきりになって』タイガが告白すれば『ロマンチックな雰囲気になってうまくいく』らしい。



 もちろんタイガの言う『ロマンチックな雰囲気』とは物理的かつ少々乱暴な手段となる。


 春奈は愛用の大学ノートに『恋の大作戦』と大書しハートをいくつか描いてマルをした。


 概要は簡単。

 二人を二人っきりにする。

 終わり。



「……ハルナ」

「なにドツキタイくん」


「どうやって二人っきりにするんだ」

「なんとかして」


「そ、そうか」

 クリームソーダの氷がカランと崩れた。



「おい、キヨカワ」

「なんでも聞いてパクくん」


「とりあえず後ろで悶絶している変な女はおまえに任せるとして」


「ああん。マイダーリンガラスに素手で張り付く姿もワイルドで素敵!!」


 さすがのパクも劣等民族の変な女は同族に任せることにしたらしい。


「2人きりにできるところなどないだろ」

「うーん。そうだね。パクくんならどうする」



 春奈の作戦とは。

 ……完全に二人に投げっぱなしだった!

ナレーター兼博士:豪運牙……。(レッドイーグルとブルーシャークを前にメチャクチャ悪そうなパクとドツキタイと博士のアイキャッチ)

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