第一話 う◯こもれる危機! ゴウウンガー登場!
青い光が横なぎの稲妻となって爆裂した。
この時多くの人々が声もなく消え去った。
赤子の顔、大腸を思わせる蛇のような姿。
天をつくその異形は声を震わせる。
その声のみでオペラ座は崩壊し次にかの化け物が口から放った紫電にてハーバーブリッジは崩壊。
ポートジャクソン湾は沸騰した。
生き延びた人々は幸運だったのか。
彼らは必死ではるか彼方、死そのものである怪獣から離れようと走る。
ジェラード屋のパラソルを上から落ちてきたガラスの塊が両断し、炎あがるなか。
『急がなきゃ。急がなきゃ』
人々をかき分け怪獣の方向に立ち向かうかのように走る可憐な少女がいた。
ビルは倒壊し、下半身千切れた母親が赤子抱えて末期の頼みを叫ぶのを無視する人々。
戦闘機撃ち落とされ誰も聞くこと叶わぬ家族の名。
彼女はただ一途に、彼ら彼女らの仇たる怪獣に負けまいとするかのように炎も風も惨禍すら振り切り怪獣のほうへ走る。
『……うん◯もれちゃう!』
【2030/6/15 オーストラリア シドニー】
国民は街を歩く。女性首相が大型モニターで訴える内容はいつも通りの平穏かつ退屈なもの。
彼女の横のニューステロップもまた【ロシア連邦と中華民国休戦】【アメリカドル崩壊。台湾沖縄香港マカオ中華人民共和国は滅亡か。人類は怪獣ハイヴ破壊に共闘せよ】【南北アメリカ滅亡とカナダ主義台頭。ヨーロッパ絶対防衛圏成立。『移民混ぜ物は全て銃殺』。ヨーロッパ総統】【中東戦争終結に伴う新ゲットー問題。平和国家のため働かない者たち】【南アフリカ共和国黒豪主義を問う。相次ぐ黒魔術。白人虐殺の真相】など不穏な風が吹き荒れる各大陸からは遠く離れたこの平和国家の治安の高さを証明するものばかり。
モニターに目もくれず彼女は歩く。
新しい友達たちにジェラートを持って。
つらいことはいっぱいあるけど前をむかなきゃ。
『命の壁は永遠に突破されることはございません。何故なら……』
女性首相の言葉とともに一瞬映った工事現場映像にはCGなのか人のようなものが落ちる小さな影。
その映像すみの工期を示す看板には。
Construction period:Thursday, 5/20/(※ペンキで打ち消し線)『永遠に無理!』
……日本語による落書き。
かつての同盟国日本帝国の勤勉な移民を寛大に受け入れたことで首相が命の壁と呼ぶ防護壁の完成近づき、世界の都目指して経済成長を目指す絶対平和国家オーストラリアの州都シドニーはますます発展を遂げんとしていた。
この日までは。
曇空を引き裂く青。
三つの機体が雲すら吹き飛ばして鋭角に切り刻んで進んでいく。
彼女はその衝撃波に頭を抱え空を見る。
一瞬括約筋が活躍し損ねた。
危なかった! かわいいぱんつは無事だ!
『合体!』
国際テロリストと大統領暗殺犯がスイッチを押す。
高速で生成される腕が衝撃波を受けて機体を苛むもその生成速度が勝るのは。
脚が伸び、熱で変形したロケット部にもう一つの機体がクラッシュしてなお人形取るのは。
どこからか飛行マント取り出し、怪獣に向かうその魔神が女子高生抱えて疾るのは。
「またなのぉ?! タイくんパックんーー?!!」
このロボット兵器が人間の情念受けてパワーアップするからである!
「乗るのか漏らすのかはっきりしろ」
「ナオン濡らすのは好きだがじっくりするのは嫌えなんだよ俺は!」
二人操るロボットは赤ちゃんが伊万里の茶器をぶん回すように彼女を。
「わかったわかった! 二人とも乗るから振り回さないで?! ……怖くておしっこもれちゃう!?」
……図らずしてこの可憐な少女、『清川春奈』の便意とそれを防がんとする乙女の羞恥心はその条件を満たす領域に達していたのである!!
「さっさとのれやぁハルナ!」
「クソ日本人が全滅しても俺は困らんが、オイタを楽しめねえからなキヨカワ!」
腕は脚部、もっと簡潔に述べればロボットの股間部分に春奈を叩きつけるようにし。
春奈はコクピットにぶち込まれる。
春奈が入りたいのはトイレで目的はうんちだ。
間違っても平衡制御装置兼兵器倉担当者になりたいわけじゃない。
『チェインヂ! ゴウウンガー!
うんち! ……じゃなかったぁ!!』
しかし機体は春菜の要望を高度に受け入れ、春奈に操縦主導権を渡す!
春奈の機体はロボット下半身を狙った攻撃から離脱、素早く残ったロボット上半身は春奈の機体を被る。
ゴウウンガーは音声入力に情念込めた魂の叫びを必要とする!
奇しくも春菜の便意意思表示は周囲3キロ圏内に生存するいけるものの聴覚に影響を及ぼした!
「こ、こ、こいつ乙女に何言わせるのよっ!」
便意に悶えつつ、落ち着かないシートが余計な刺激を与えないよう悶絶しつつ春奈は敵を睨む。
逆ギレである。
たちまちその姿は再構成し、脚部がキャタピラとなり蛇腹状の碗部もつロボットが、空から奇態なる赤子の姿した怪獣に襲いかかる!
「トマホークぅ! ミサイルぅ!」
ミサイルで牽制し、春菜の操る腕の蛇腹が敵に絡みつく。本来蛇腹は力を出すには不向きな構造である。
「地球拳! 愛国富士山落としぃ!!!」
しかしながら春奈の溢れてモリモリしそうな便意は不可能を可能にした!!
そのまま腸だか蛇だかわからぬ異形を絡みついた腕は巻き取りその鼻ひっ掴み頭から一本背負い。
さらにその速度は真空波もって周囲を薙ぎ倒した。
「やるぅ」「あたし濡れちゃう」
おまえこそ早くおしっこしにトイレ行けパク・ザ・テギョンダー! 痩身長躯長髪の彼は国際テロリストである!
「おいおいハルナァ! 俺にも残してくれよ。背中煤けてねぇか。僭越ながら推算すっぜ!」
巫山戯る彼は大統領暗殺者ドツキタイ。なんか演説がムカついたから軽く殴ったら生首が隣のビルまで吹っ飛んで行った経歴ある巨漢である!
しかしながらこの場は春奈の闘志が勝ったらしい。彼は舌打ちして武器管制に回る。地上戦モードとなったゴウウンガーは胴体を伏せて突撃。大量に放たれる自爆ドローン兵器群はひとつの形となる。
うんこマークである。
「おい、春奈、そろそろ限界でね?」
爆笑するパクにフン慨、もとい憤慨する春奈。
パクは電子部品をハッキングせんとする怪獣の電波に対抗して意外と繊細なタッチでコンソールを叩く。まるで乙女の柔肌に触れるように。
匂い立つような美しい音楽とともに衝撃波が怪獣に跳ね返され、逆ハッキングを生体脳に喰らった怪獣は鼻に加えて目玉から血を噴き出す!!
「おっしゃトドメさしなキヨカワぁ!」
「う、う、う……」
うんちもれちゃう。
春奈は涙目になりながら攻撃レバーを全力で前に押し込んで。
見た。彼女には見えてしまった!
なんと怪獣の後ろには無傷の公衆トイレが!
春奈の括約筋がこの先生きのこるには!?
怪獣は春菜の攻撃を避けられずビームに被弾した!
よかったトイレは無事だ!
ご存じのように女子トイレはいつも大混雑だ。
理論上男子トイレの二倍以上混む。おならをするためだけに籠る婦女子も多い。身だしなみは大事だ。女子はその為に延々と籠って出すものを出さねば出る事は出来ない。壁に小便を引っかけて立ち去ればいい男子とはそこが違うのだ。
「キヨカワぁ! 根性たりねぇぞさっさと漏らせ!」
胴体だったパクの機体が飛び出し、先頭のドリルが怪獣の頭蓋を砕くも致命傷に至らない。
足だけになっているドツキタイの機体がトラースキックをぶちかまし、支えを失った春菜の機体は自由落下。
トイレを見事にたたきこわした。
「許さない……許さないわよ二人とも!」
春菜の機体は二人の機体無くして物理法則を無視して地上海戦モードを維持して二人の機体を追っかけ回す! それどころじゃないだろトイレ探せ!
「ヒャハァ! イキがいいなキヨカワ!」
パクがドリルミサイルで応戦するのを叩き壊し、巨大トマホークで殴りかかるドツキタイの機体とがっぷりのこったのこった。
怪獣はしょんぼり地面を這っている。
怪獣の潰れた瞳が『なにか』の方を向いた。
むりゅむりゅともれいずるうんちの如く目玉が形成され、その生き物の匂いを嗅ぐ。
下半身失い赤子掲げたまま事切れた母が差し出したままただ泣いている赤子を。
『ごめんね。でも無理なの』
「まぁんまぁ」
怪獣は地球意思群だが、人類を憎むにたる感情は人間由来のそれだ。
母に捨てられたまま汚物にまみれて死んだ赤子の記憶持つそれは長い舌でその儚い命をすくいとる。
ひとつになろう。
「!」
「? どうした春奈」
「ヒャハァ!」
春奈は救おうとした。
ドツキタイは手を止めた。
パクは状況は掴んだが放置した。
『んまんまぁあああぁあぁっっ!!』
怪獣の牙の中ではそれは小さなシミにもならない。
だが大人の指ほどしかないその小さな手のひらはゴウウンガーに乗ったことで感覚強化された3人にははっきりと見えた。
「……ゴウウンビーム」
「あゝ! いっちゃう!」「ヒャハァ!」
音声入力された超必殺技はシドニーを破壊して空を砕く。
かつて侵略者たちの末裔からは地球のへそとも呼ばれ現地住民もまた何万年もウルルと呼んでいたエアーズロックはゴウウンガーが握るゴング攻撃の獲物となった!
ただしテンカウントは認めない!
おまえが! 泣いても! 殴るのをやめない!
6億年の歴史こもった攻撃に叫ぶ怪獣ひっ掴み、ゴウウンガーはそれを捕食しておとなしくさせたのである!
「……アイラ、オリビア。
……ばいばい」
「ふん。まあなかなかじゃないか」
「墓標にしちゃ贅沢だぜ」
彼らは砕けたエアーズロックを見上げ、国際防衛機構の救助隊を待っている。
かつて、人狩を楽しみ、あるいはエミューと戦争して敗れた連中の末裔が住んだ国があったという。
(※『ドツキタイくんの知識』春奈談)
ーー涙も喜びも2500万年前に沈んだジーランド大陸のように今では等しく海の底に戻ろうとしているーー
全ては怪獣が悪い。日本人よりクジラの方が大事なのは共感する。つまりあいつら全員はクジラの代わりに死んでも誰も困らん。クジラウメェし。
(※『パクくんの言い分』春奈談)
灰燼と化し海に沈もうとする大陸。
今は砂漠。かつては緑の大地。人々が消え如何なる変化が起こるのかあるいは地球意思の権化たる怪獣たちにはそれすら些細な違いか。
夕焼けを背に大型ヘリコプターが近づいてくる。
新たなる英雄物語がこの地球に刻まれる予兆かはたまた破滅の序曲かそれはまだ3人にもわからない。
あるものはさりし人々を想い。
あるものはさらなる凌辱の楽しみに震え。
あるものはこれから始まる殺戮に期待する。
今日からまたも大統領暗殺犯、国際テロリストが操るロボットが新たなる激闘に挑むであろう!
約1名変なの乗せて。
如何なる奇跡をも起こすゴウウンガー!
しかし便意を抑えることはできない!
早く便所に行け春菜!
戦えゴウウンガー!
世界平和を守る前に春菜の括約筋を守るのだ! その決壊の瞬間は待ったなしなのである!
人間を全滅させるべく生まれた地球意思群と犯罪者共の戦いの中、唯一の常識人春菜の明日は何処だ!
春奈:耐えきれず野糞しました。
見た目に反してヘリコプターくるの遅すぎ。
パクくん見んな。
ドツキタイくん紙ちょうだい。
これ埋めるから二人とも見たら埋める。
日本列島北に存在したかつて半島だった島。
その島を砕いて現れし恐るべき殺人ウサギ。
月まで駆ける奴を追えゴウウンガー。
祈りの聖杯を手に入れる騎士となれ。
次回第二話!! たま桂ぐしゆきて! トイレは月にもありますか?!
……ご期待ください。