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悪魔のラブコメ  作者: 遊矢
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第4話 住処はペンションです

「さてどうすっかな、樹海から戻れるくらいの負力は残ってるけど小一時間くらい歩くか・・・」


先の戦闘で負力の半分以上を失ったユウはそう呟く。


「私の感じてた胸騒ぎはマリカさんのだったんだ」


敵にさんを付けるあたり育ちがいいネネである。


「俺も予想はしてたがたぶんマリカの負力を感じ取っていたんだろ。ネネ、砂埃やらで汚れてるし俺も休憩したい。一旦俺の家にこないか?」


「!?」


風呂と休憩という何とも盛大な誤解を招く言い方だが悪魔のユウは気が付かない。


「少し帰りがおそくなっちまうけどお袋さんは大丈夫?」


「あ、うんママには友達とファミレスで勉強して帰るって連絡しとくね」


魔界の悪魔たちの戦闘に巻き込まれたとはとても言えないのでそれらしい理由をつけて帰ることにする。


「こっちの都合で申し訳ないな・・・よいしょっと」


ユウは気絶したマリカを背負って立つ。


「ちょ、その人はどうするの!?」


「このままってわけにもいかないし。一緒に家に連れ帰るわ。こんなんでも魔界の、俺の大事な仲間だからな」


人と積極的に関わろうとしなかったユウにしては意外な言葉だった。やはり自分はユウのことをほとんど知らないのだとネネは実感した。


「ネネ、つかまって」


そう言って差し出されたユウの手をネネは少し恥ずかしそうに掴み、3人の姿は瞬く間に消えた。






熱海の温泉街。夏は観光客で賑わう町だが4月の今はシーズンではないためさほど混んではいない。


その観光地でもとりわけ人の少ない海沿いに転移した。


「ここから30分くらい歩いたら俺の家だから。転移魔法の限界がここまでで歩かせることになってすまん」


「大丈夫。・・・ところでユウくんの能力って・・・」


「ああ、わけわかんないことだらけだよな・・そうだな、帰りがてら話すか」


そういって二人と背負われた一人は歩き出す。




「堕天使とは言うが少なくとも俺は天界出身じゃない。天使と悪魔のクォーターなんだ。祖父が天使。だから聖力も扱えこそするがエネルギー全体で言ったら25%くらいだな・・・大部分の魔術は負力に依存してる」


ファンタジーの話を女子高生としながら背中に魔女のコスプレをした女性を背負っているユウはどう見てもおかしな人物に映っていることは間違いない。


「魔界軍の階級は対天界軍への戦力で位置づけられてるから負力を75パーセントしか使えない俺が最下位ってわけかな」


「その、ユウくんも魔界にいったら本当の呼び名とかあるの?聖書だと堕天使はルシファーとか・・・」


「いや普通にユウが本名だけど」


「えええええ!?」


「日本で言ったら外国風な名前の悪魔もいるけど案外名前は地球と変わらないみたいだな。ここでノビてるマリカも魔界でこの名前だし」


やはり根本は地球人とそうかわらないのでは、と改めて思った。


「俺以外にも魔界軍は戦力を失いつつあった。俺が撤退して一年経つからもう壊滅しちまったのかもしれないけどな」


少し寂しそうに語るユウに言葉がみつからない。




「じゃあ・・・年齢って?地球人が月にいってもう大分経つけどその時のことはよく覚えてるって」


「天使も悪魔も寿命自体は長い。けど外見はある程度成長したら変わらないんだ。俺で160歳くらいだけど魔界じゃかなり若い部類。そうだなあ、大体平均寿命が800歳から1000歳くらいだから人間に×10換算したらいいくらいかな」


なるほど、ユウを人間年齢に換算するとまだ16歳くらいということである。




「魔界軍は大部分が100歳から200歳代のメンバーが多かった。人口も魔界で約1万人くらいしかいないから月の魔界が無くなるのも時間の問題かもな」


「ユウくんはその・・・残してきた親とか兄弟とか、あとは仲間とか気にならないの?」


テレビでは戦争孤児やら残された家族のドキュメンタリーをやっているし日本でも70年以上前の太平洋戦争は今でも歴史やら終戦記念日で語り継がれている。


「あー、もうみんな死んでる」


特に感情もなくそんなことを言うユウにネネは返す言葉もない。


「70歳くらいから魔界軍で育ったから親のことも微かにしか記憶ないしなあ・・・ただ」


「ただ?」


「天使だったじーちゃんのことはいくつか覚えてる。天使のきれいな翼が好きでよく触ってたような」


「その頃は魔界も天界も共存していた・・・?」


「正直100年も前のことだから記憶も曖昧だけどな。ただじーちゃんに関わる最後の記憶だとたぶん俺の命を守った?ような気がする。正直いつから戦争が始まったのかわからんな。学校なんてものはなかったし」


聞けば聞くほど全く別の世界だと実感させられた。




「よし!ここが俺の日本での家なんだ」


町を少し外れたところにあるその建物はおおよそ平均的な一軒家の大きさを上回っていた。


「これって、ペンション!?」


「ああ、日本に来た時にちょうど経営難でオーナーが手放したこのペンションが中古物件として売りに出てたから売主を催眠魔術でちょこっと・・・」


バツの悪そうに話すユウだが日本で魔術を使用してはいけないなんて法律はないため何も言わないことにした。



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