第2話 ユウの出身は
初めての下校デート。少し緊張気味のユウは本来の目的について話す。
「今のところ誰かにつけられてる、とかそういう気配はないな」
「うん・・・いつもこう、なんか嫌な感じというかぞくっとすることがたまにあって」
「嫌な感じ・・・か」
「せっかくい二人で帰ってるのにごめんね」
「いや、いいんだ。なんかあってからはこま・・遅いからな」
ユウはつい言い直してしまう。
「ストーカーってやつなのかもな。ネネ人気だからさ」
「そんなことないよ。ユウくんが積極的にクラスに溶け込むようになってからは女子人気あるんだよ」
「・・・今思うとかっこつけて誰とも話さないキャラ演じてたみたいでかなりイタイな、俺」
1年のころを振り返って後悔するユウ。
「うぅ・・この感覚・・・」
突然唸るネネをみて自分の痛さに気づかれたか、と思うユウだったが
「なんか、ぞくっとする・・・胸騒ぎみたいなかん」
ネネが言い終わる前に激しい轟音とともに視界が砂埃でかき消される。
「きゃあああ!!!」
「まずいっ!エネルギー弾か・・・!?」
ユウは一瞬迷うが
「これはもう、仕方ないな・・・」
そうしてユウとネネは一瞬でその場から消えた。
「ここは・・・?」
周りを生い茂る木々で囲まれた場所で目をあけた。ネネにとって目を閉じた一瞬で町から山の中に景色が変わって映っていた。
「ここは富士の樹海だ」
「樹海!?だってさっきまで町中に・・・」
そうして振り返りユウの姿をみるとネネにはあの胸騒ぎと同様の感覚が襲ってきた。
ユウの姿は一見するとなんら人間とは変わらないが背中に大きな黒い、羽毛のような翼が出現していた。
「・・・・」
何が何だかわからない様子のネネにユウは覚悟を決めた。
ここで自分を恐れて関わらなくなるのなら、それまでだったのだろう。
「・・・俺の生まれたところって、実は地球のどこにもないんだ」
さらに信じられない話をしだす。
「俺の故郷は地球と違って魔法とか魔術の概念が発達していた。この世界の言葉で言うならそうだな・・・大きな二つの国があってその片方が俺の故郷だ」
「そんなの・・・信じられるはずがない!!」
ネネは混乱してほぼ叫んでいた。
「信じてもらえなくて当然だ。俺だって地球に来た時こんなに文明が発達した世界があるなんて信じられなかった。でも事実だ、俺は人間じゃない。町から一瞬で何十キロも離れた山中に転移できる人間が地球にいると思うか?」
「・・・・」
ユウは近場の岩に座ってすべてを話し出した。
要約するとこうだ。
ユウのいた世界には魔界と天界の2大国家があり、ユウは魔界の悪魔。天界の住民は天使とよばれる種族。魔術が発達した世界では負力、聖力と呼ばれるエネルギーを魔術として扱っていた。
「俺は魔界の悪魔だから負力由来の魔術を使う。天界では聖力がエネルギーだが・・・地球にきて思ったのは根本的なところは人間と変わらないんだ。食事や睡眠をとればエネルギーは回復するし、魔術の多用をすればエネルギー0で死ぬ。体力がなくなれば衰弱して死ぬのと同じだな」
そしてその魔界と天界が今大規模な戦争をしていた。組織された魔界軍と天界軍が今も戦闘中であるらしい。
「俺は魔界軍で7人いる軍司令官だったんだけど・・・魔天戦争で自分の軍は壊滅した。けど魔界軍に戻ったところで追跡されれば軍本拠地が一斉攻撃される。そんで敗軍の将になった俺は残った負力で転移魔法を使って逃げたんだが・・・」
到着先が日本の静岡県だったのだ。
「しばらく日本で雲隠れして天界軍の様子次第で魔界に帰るつもりだった・・・まあこっちの世界が心地よすぎていまだに決心ついてないっていう情けない話だ」
「悪魔だったり天使だったり・・・架空の存在だと思ってたのに・・・」
いまだ話を整理しきれていないネネ。
「ああ、それなんだがこの世界にも悪魔や天使、魔術なんかの概念があるのは過去に何度か俺の生まれた世界から地球に来てるんだよ。きっとそれが伝説として今の時代にも語り継がれてるんだろうな。悪魔や天使って言っても姿はほぼ人間と変わらない。だから俺もこうして人間の学生に紛れられている。」
「その・・・変な質問なんだけど、地球じゃないってことは宇宙人てこと?」
「あー、まあ言葉にしたらそうなんだろうな」
「地球以外にも生物が生息できる星があるってこと?それって・・・どこなの?」
「ああ、月だよ」
「つ、月!?」
「そう、地球からみて表が天界、裏が魔界だ。月からも地球は見えてた。だから先代の悪魔やら天使は転移魔法で地球にいったりしてたんだろうな」
「で、でも地球人だって月に行ったのに何もない岩石の惑星だって・・・」
「その時の事は覚えてる。ばれるとよくないから天使と悪魔合わさって幻覚魔術で」
「きゃあああ!」
言い切らないうちに再度二人を轟音と砂埃が覆う。
「んふ、見ーつけた」
空中に浮かぶそれはまるでハロウィンのコスプレ、魔女そのものだった。