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3度目の人生ーーsideローゼリアーー

お待たせしました。最終話です。


リアルがかなりバタバタしてました。すみません。

グェン様の腕の中で息を引き取ったと同時に、またも旅人の守護神様とお会いしました。色々とお話を聞いた結果。私の立場は逆だったものの、アリリルさんに殺される事が本来の私の死であり、寿命だったそうです。ですが。きちんと私が寿命を迎えて死んだのだとしたら、私の目の前に守護神様が現れない、とのこと。それなのにこうなってしまったのは、守護神様も困惑されているようです。もしかして、死ぬ原因がちょっと違う事が原因かもしれない。と、守護神様は困ったように仰いました。そこで教えて下さったのは、なんとお母様のこと。お母様が異なる世界から魂が渡って来ただなんて、驚きましたわ。


そんなわけで、お母様と話をしたところ、お父様にもお話をして、それからケビンとグェン様、出来れば殿下のお話も聞きたいのだ、と仰いました。それから直ぐにケビンニルが我が公爵家に来ました。

ケビンが、私を優しく慈しむ目で見ています。まだ11歳のはずなのに、大人の方に見えてしまったのは、きっと2度の人生を送ったから……なんて思っていました。思っていましたけれども! 私がケビンに2度の人生を打ち明けた時でした。


「ローゼ。妻に迎えたい」


なんて、言ってきました! な、何を言っているのかしら! 私の気持ちは先程話しましたわよ。それなのに。確かに3度目の今はまだグェン様にお会いしておりませんけれど。私、ケビンに対して恋い慕う気持ちなど持った事など有りませんわよ! そんな私の気持ちを知っているかのように、髪に手に目尻に口付けを送られた私は、身体をプルプル震えさせてしまいました。


は、恥ずかしいですわ!

それに、こんな恋人か夫でもない限りはしないような口付け。姉弟では有り得ませんわ! えっ、あ、でも、ケビンの気持ちが、私を妻に迎える事なら良いのでしょうか。とにかく、ケビンを待っているお母様のところへ2人で向かい、そうして3人がそれぞれの2度の人生を語り合いました。


そして話を共有しますと、お母様が考えていらっしゃいます。やはり、グェン様と出来れば殿下の話も聞きたい、との事でした。でもグェン様はともかく殿下がご協力下さるとは思えませんわ。どういたしましょう?

そんな事を考えつつ、私は殿下の側妃候補としてお側に上がるための、顔合わせを終えたのですが、その際、殿下から私と話をしたい、などというお節介を仰いました。首を捻るような出来事ですが、まぁ仕方ないですわ。そんな矢先にグェン様が公爵家を訪ねて参りました。私、グェン様を見て思いました。


やっぱり私はグェン様が好き。


そんな事を思いながら、私達はお互いの人生を語り合いました。グェン様とケビンとお父様とお母様が、私の死後に家族になった話は、素直に嬉しい、と受け入れられましたわ。ここで、お互いとお父様の認識が済みました。それから殿下から連絡が有り、そんなわけで、3度目の人生で初めて、殿下が我が家を訪問にいらっしゃいました。


そこでお母様が、殿下に喧嘩を売りました。お母様ぁ!!!⁉︎ そ、そ、それは不敬ですわぁ⁉︎

そんなふうに焦る私とは裏腹に、お父様もケビンもグェン様もお母様に意見が賛成なのか、何も言いません。ですが、それ以上に殿下が珍しく黙っていました。あら。不敬だと騒ぐと思ってましたのに。まぁ好都合ですわ!


一触即発の危機感溢れる中、私達は殿下に協力を仰ぐべく私達の気持ちと人生を話しました。殿下は私達に協力することに難色を示されていましたが、人生を繰り返すのは嫌なようで、渋々ご自分の2度の人生について語って下さいました。

これで本当に繰り返す人生が終わるのでしょうか。


どうやら私もお母様と同じ異世界から魂が来た存在だそうです。守護神様は、そんな事、少しも話してくれませんでしたが。お母様が仰るには、お母様と私の魂をこの世界に連れて来て下さった神様の方が、力が強いそうで、だから守護神様は、私も異世界からきた魂だ、と忘れてしまったのかもしれない。とのことでした。

その異世界の神様に好かれた私は、長生き出来る事を祈って、この世界に連れて来てもらったようです。でも私は若くして死んでしまい、長生き出来なかったのです。


そんな事を思い出しながら繰り返す人生について、考えてみました。でも考えがまとまらなくて。結局お母様を頼るしか無さそうです。全てを語り終えた殿下の話に、お母様が「成る程」と仰る。どうやらお母様は、繰り返す人生の終わり方に対する予測が当たったようです。そのお話を聞く寸前。


「ローゼリア、尋ねたい事がある」


殿下の真剣な表情に、私もきちんと向き合いました。思えば、この繰り返す人生の中で、殿下が私と向き合って、話し合おうとする意思を、初めて見せてくれた事が嬉しくなりました。そうして尋ねられた事は、2度目の人生で、私が殿下を庇って死んだ事の理由でした。


「殿下。王子妃教育で最初に教わることの内容をご存知でしょうか」


私が尋ね返すと、怪訝そうな表情を見せられました。そこで私は、その答えを話しました。


「王子妃教育でまず教わる事は、王族の血筋を残す。それは妃として子を産むという事以外に王族そのものを残す、というものです。親が子を守る。これは当然ですが、妃も殿下を守る。これも当然なのです。平時において、妻として夫を支える。非常時においては、妃はお子を宿しているなら、まずはその子が助かるように考えて行動。

子が無い場合で、夫に命の危機が迫っているならば、妃は夫である殿下……王族を守る事が最優先です。

それは基本中の基本。それで咄嗟に身体があなた様を庇ったのでございます」


「まさか」


「まさか、とは?」


「嘘だろう?」


「何が、でしょう」


「妃教育とは、そんな自己犠牲を強いるものなのか? アリリルは、そんな自己犠牲を教えられたようにはみえなかった」


「それは。正妃様が妃教育を施されていない事を表しますが。正妃様が、殿下の奥方になられるという自覚がありましたなら、必ずそのように教わります。第一王子妃様も第二王子妃様も、そのような教育を受けておられますよ」


私の説明に、殿下は黙ってしまいました。けれど私は殿下に構っている場合ではありません。


「お母様。それで、どうすれば繰り返さなくて済むのでしょう?」


「それぞれの話を聞いていて立てた仮説ですが。皆がローゼを認める、という事です。ローゼを知っているのではなく。その存在を認めるということ。端的に言えば、そういうこと、かしら」


「私を認める?」


「認めるとは意外と難しいものです。でも、ローゼを認めることで、ローゼに自信を付けたいと思うのよ」


「私に自信……」


「おそらく、あなたの前世は、人に認められることなく逝ってしまった。生まれ変わって、両親以外に会う初めての日に。殿下に地味だ、と平凡だ、と否定され。自信を無くしてしまった。それ故に輝きを失った……。あなたを大切にしたい神様は、それを悲しまれたのでしょう。あなたが私達親以外の周りに認められ、殿下にも認められて初めて、あなた自身が自分を認められる。

そうしてあなたが自分を大切に出来るようになれば、その先に通じる。……多分、あなたが周りに認められ、自分を認めないと、あなたの中で人を愛する事が出来ない。別に愛する人に愛される事が全ての幸せだとは言わないけれど。あなたが自信のないままでは、ローゼリアは人からの愛を疑ってしまう。それは悲しい事だと思うわ。……だから、これで殿下があなたを認めてくれたなら、きっとこの繰り返す人生は終わるはず」


お母様の推測に、私もお父様を含めた男性陣も言葉を飲み込むまで暫し黙ります。


「……ああ、そうか。僕は1度目の人生で、ローゼも義父様も義母様も否定していた。けれど、ローゼと義父様と義母様を失ってから、受け入れた。つまり認めた。そういうこと?」


「ええ、ケビン。そういうことだと思うわ。だからあなたは、2度目は自分に素直になった。そして3度目は尚更に。だからローゼは少し変わったでしょう?」


「はい。美しくなりました」


ケビンとお母様の会話がなんとなく理解出来た矢先に、ケビンは、そうやって私を褒めてきます。甘い。甘いのですわ、ケビン。……でも少しだけ、思います。


“私”を認めて受け入れて愛してくれている事が嬉しい、と。


「1度目の人生で俺は自分の気持ちに気付いた。2度目は最初からローゼリアを大切にしたつもりだった。それでも守りきれなかったから、俺は3度目の今、ローゼリアを最優先している。それが俺なりの認め方だ」


グェン様が真っ直ぐに私を見つめます。まるで他を見る事を許さないような、強い視線で。その視線は、1度目も2度目も無かったもの。けれど、その視線が嬉しいのです。


「グェンが他に目を向けないでローゼを見つめるから、ローゼは自分を大切に出来るでしょう?」


お母様に諭されて、私は頷きました。これだけ私を見つめる視線を浴びて、私は、誰かを助ける為だとしても、もう自分の命を引き換えに守る、なんて、自己犠牲は出来ません。この先はきっと、自分も誰かも両方が助かるように行動するはずです。


「俺は、お前を認めたりしない。地味で、平凡なお前など!」


殿下にそう言われて、1度目は傷つきました。2度目は最初から諦めていました。


「いいえ。殿下は、認めて下さっています。ローゼの話を聞こうと、自ら歩み寄った。アリリルさんと距離を置いて、自分の中で客観的に見る事を覚えた。そして、ローゼがあなたを庇って死んだ事の理由を受け入れた。それは全て、ローゼリアを認めている事です。容姿ではなく、ローゼの内面……心根の方、です」


殿下の言葉をお母様が否定します。殿下は、ハッとしました。


「それは……そうだ。俺は確かに、2度目の人生で思った。アリリルを最初から正妃として迎えるべく動いたのに、癇癪持ちで、自分に足りないものを得ようとしない姿勢に嫌気が指していた。そして、教育をしっかり受けたお前が、俺を支える姿は教育の大切さを俺に教えた。そして、俺を何故庇って死んだのか、それはずっと尋ねたかった。そうか、この全てがお前を認めるという事に繋がるのか」


殿下の言葉に、私の目から涙が零れ落ちます。ああ、1度目の人生からの私が報われた気がしました。


殿下を男性として恋慕っていたわけでは無いけれど。婚約者として歩み寄ろうと努力していた全てが否定され、蔑ろにされていました。それに私は自分でも気づかないうちに、後ろ向きな気持ちになっていました。


殿下に認められなくて、何故妃教育を受けているのだろう。そう思っていた私の心。でも、その心から目を逸らしていました。そうしていつしか諦めていました。それが楽だったから。


そうね。これが、私の罪だわ。


私は自分の心から目を逸らし、自分を大切にする事を諦めたのです。


本当ならそのまま私は死ぬ人生でした。けれど、こんな私を愛して心配してくれる神様が居たおかげで、私はこうして3度目の人生を生き直しています。


そして、お父様とお母様の愛情も頭では分かっていたつもりでしたけれど。こうして気持ちが楽になって、ようやく両親の愛情をきちんと受け入れている気がしました。


私は、楽になりたかった。

自分を認めてあげたかった。

自分を認めてもらいたかった。

自分を愛したかった。

周りから愛されたかった。


今、それが叶ったのね。


その時だった。なんだかパリン……と音が聞こえた気がしました。


「今の音は何?」


そう言ったのは、お母様。じゃあ私の空耳じゃない? 何かが割れる音。でも、別にティーカップも窓も割れていない。他の物も大丈夫。なんだったのかしら?


「……ああ、そういうことか」


お父様が笑いました。


「お父様?」


「別に、ネージェとローゼの話を疑っていたわけじゃないんだけど。私は人生を繰り返していなかったから、どこか疎外感があってね。でも、今、神様の声が聞こえたよ。割れる音は、繰り返しの人生が終わった音。ローゼがお婆さんになるまで、この先、生きていけるってさ」


お父様は楽しそうに、嬉しそうに教えて下さいました。では、私は長生き出来るのですね。


「じゃあローゼ。これから僕との将来について話し合おうか。結婚も含めてね」


ケビンニルが私の手を取って指先に口付けてきます。だから、甘いのです! それに、人生を繰り返して来たから忘れがちですが、あなたは11歳。私もまだ12歳! そういう話は社交界デビューしてからです! なんて抗議する前に。


「いいや、ローゼは1度目から俺を好きになってくれていた。認められなくて弱腰だったみたいだが、2度も俺の腕の中で死んだ。だから今度は俺の腕の中で年を取るべきだ。ローゼリア。君がお婆さんになるまで、俺と共に生きよう」


と、グェン様に強い視線で請われました。ええと。嬉しいですが、まだ12歳なので考えたいです。


「ダメだ。お前は、俺の側妃に決まっている。これは国王陛下から直々の命令だ。俺もきちんと妃教育を受けた女が俺を支える事は納得してやる。アリリルも遠ざけたから正妃の座は空いた。側妃から正妃に位をあげてやってもいい。そうだな。地味で平凡だが、地味さを無くせば少しは見た目も良くなるだろう。そうすれば、また認めてやる」


……えっ。殿下と結婚は嫌です。お断りします。と、口にしたいけれど、王家直々の命令を私が断れるはずもなく、黙る。


「ローゼは、嫁にはやらん! そもそもバシリード殿下は、2度もローゼリアを蔑ろにしていますから却下です。あと、グェンとケビンニルは、まだローゼが12歳だ、という事を忘れるな! あと3年経ってから出直してこい! バシリード殿下。私は中立派ですが、それなりに公爵として王家と取引出来ますからね。ローゼとの話は白紙にさせて頂きますよ!」


お父様、素敵です! そんなお父様を、お母様が幸せそうに微笑んで見ています。


「まぁそうねぇ。私は恨んでますし、バシリード殿下とのお話は、白紙に戻すとして。グェンとケビンは、もう少し男を磨いていらっしゃいな。ローゼが15歳で社交界デビューを果たしてから考えましょう」


お母様の一声で、この場は終わりました。


ああ、私はこの先の人生について希望を持てるのね。さて、この先、私はどなたと恋をして結婚して子を産んで育てるのでしょうね。

日付が変わる前に書き上げたかったのですが、かなりの難産でした。書き出してから4時間以上かかってしまいました。どういう着地点にしようか、悩みまくったせいです。


結局、誰とも結ばれない、という方法に落ち着きました。


1話目の書き出しは、こんな酷い目に遭ったけど、バシリード殿下が気持ちを入れ替えて、バシリード殿下と結婚を考えたのですが。

いやいや、繰り返してるって気付いたらバシリードみたいな性格って、こうなるんじゃ?

って思ってからは、思い通りにいかず……


そのうち、ケビンニル視点とグェン視点を書き出したら、なんだか更に思い通りにいかず……。


結局、誰ともくっつかないで終わるのが1番自分が納得いく内容でした。1度目のグェン視点を書いている時は、グェンと結ばれて終わりかもなぁ……って思ってたのに、ケビンニルが意外にも頑張ってしまったので、これでグェンとくっつくのもどうなんだ?


ってことで。年齢的にもまだ誰ともくっつかないで終わるのもアリか……とくっつかないで終わりです。


この後ですが。

名前を付けたのに、なかなか呼ばれなかったローゼパパ。公爵の力を発揮して、バシリード殿下との側妃の話は白紙にしました。じゃあ正妃にって話ものらりくらりと躱します。ローゼパパ、本気になったら中々やります。


バシリード殿下は、公爵夫妻であるローゼの両親と、義弟のケビンニルと、グェンにチクチクチクチク虐められながら、懲りずにローゼリアを口説こうとします。自分では、妃教育を受けたまともな性格の女だからってだけのつもりですが、1年とかきちんとローゼと向き合ううちに、ローゼに惚れます。……でもバシリードは気づかないアホの子ですけど。


ケビンニルは、ローゼの側妃話が白紙になっても、そのまま公爵家の跡取りとして居座り、毎日毎日ローゼを甘やかしまくります。溺愛派。ローゼを射止める事が出来るのかは不明。


グェンは、王家の駒をやめます。まだ深入りする前なので、王家の秘密もあまり知らない事になってます。(1度目の人生だと既に深入りしているけど、2度目の人生の続きなので深入り前)そして、ハイムール侯爵家と話し合って、勘当されて、ベルヌ公爵家でローゼの専属護衛です。日々、ローゼを守ることが最優先。なんだかんだで1度目に自分がローゼの命を奪った事を後悔しているので。溺愛というより執着・ヤンデレ派。ローゼを射止めるかは不明。


といったところで完結です。

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