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第66話



 クリスマス会が終わり、生徒が全員帰ったのを確認した後、大石は学校の扉に鍵を掛けた。


「はぁ……」


 大石はため息を吐きながら、車を止めてある駐車場に向かった。


「あ、幸輔さん来たんですね」


「えぇ、鍵を掛けてきたので……もう呼び方を変えてるんですか……」


「はい! あ、幸輔さんも二人っきりの時は名前で呼んでくださいね!」


「いや……私はまだ心の準備が……」


「呼んでくださいね!」


「いや、ですから……」


「ねっ!」


「うっ……はい……」


 愛奈に圧倒され、大石は思わず頷く。

 そんな大石を見た愛奈は満足そうに笑い、大石の車の助手席に乗る。


「さぁ! 早くクリスマスデートの続きをしましょう!!」


「本当に私の家に来るんですか……」


「む、なんですか? その嫌そうな顔は?」


「だって……絶対に襲いますよね?」


「もう、何を言ってるんですか~、私だって大人の女性ですよ? そんな自分からだなんてはしたない」


「自分からキスを迫っていた人が言わないでください……」


 大石は愛奈にそう言いながら、運転席に座る。

 すると愛奈は素早い動きで、大石の手を握った。


「……運転しにくいんですが?」


「幸輔さん、運転の時はほとんど片手で運転してるじゃないですか? たばこを吸いながら運転してたこともあったし」


「それとこれとは状況が違います……」


 大石はため息を吐き、車のエンジンをかけて車を動かし始める。


「大体……確かに付き合うとは言いましたが、物事には順序と言うものがですね……」


「キスしたら次にやることは決まってるじゃ無いですか?」


「……貴方のその考えは間違ってると思います……」


 大石は愛奈にそう言い、胸ポケットのたばこに手を掛ける……しかし……。

 

「あれ? 吸わないんですか?」


「はい……あぁ……なんか今から禁煙しようかなって」


「え? なんでですか?」


「はぁ……貴方も結構鈍感だと思いますけど?」


「え?」


 大石はたばこに手を掛けていた手を愛奈の手に戻す。


「あ、そう言えば幸輔さん」


「なんですか?」


「まだクリスマスプレゼントを渡してませんでしたね、後でベッドの上で渡しますね」


「なんでベッドなんですか? シチュエーションが怖いんですけど……」


「怖くなんてありませんよ! 安心してください、きっと気に入ります!」


「何がですか……」


 大石は愛奈に静かにツッコミながら、自分の家まで車を走らせる。





 高志は家に帰宅していた。

 最低最悪のクリスマスだと、高志自身はそう思っていた。

 いくら紗弥に連絡を取っても相手にされず、自分が完璧に振られてしまったと高志はそう思っていた。


「にゃ……」


「ん? あぁ……ちょっと一人にさせてくれ……」


「んにゃぁ~」


 高志が自室のベッドの上で背中を丸めていると、チャコが高志の背中に自分の体を擦りつけてきた。

 恐らく慰めようとしているのだろうと思い、高志はチャコの頭を撫でる。


「ありがとよ慰めてくれて……でも……これは俺の自業自得なんだ」


「ふにゃ~……」


 高志はチャコをベッドから下ろし、スマホを操作し始める。

 優一や土井、繁村などからメッセージが来ていた。

 内容はどれも紗弥と仲直りしろと言う内容だった。

 繁村のメッセージでは瑞稀の事が書いてあった。

 すべてがバレてしまい、瑞稀にも悪い事をしてしまったと高志は罪悪感を感じていた。


「はぁ……俺……何してたんだろ……」


 肩を落とし、帰ってきて何度目かも分からないため息を吐く。


(でも……助けてくれた優一達の為にも……騙してしまった紗弥の為にも……俺はもう一度紗弥と話しをしなくてはいけない。今度はちゃんと……俺の本音をぶつける)

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