ルースの理由
「何でそんなこと思い付いたの……」
「……同じように捨てられてた犬を、女の子が拾っていくのを見たから」
リーナは呆れて何も言えなかった。
(その女の子はきっと、元の場所に戻してきなさいって親に言われたわよ)
リーナがそんなことを考えてると、ルースはソワソワしながら彼女を伺うような目で見てきた。
「怒ってる?」
「……別に。怒ってない」
「よかった」
ルースがホッとしたように笑顔になった。
それを見ながら、リーナが「呆れてるだけよ」と呟くと、途端にルースはしゅんとしてしまった。
その様子に、リーナは笑ってしまった。
するとまたルースが笑顔になって「リーナさん、機嫌直った?」と訊いてきた。
(まったく、おバカ過ぎて笑っちゃう)
リーナはもう、ルースを責める気にはなれなかった。
こんなおバカで一途なやつ、リーナが引き取るしかないではないか。
「しょうがないわね。拾ってあげるわよ」
そうリーナが言うと、ルースは嬉しそうに「リーナさんが飼ってくれるの?」と訊いてきた。
だから、リーナは答えた。
「ええ。お婿さんに来てくれるならね」
「……! 行く! お婿さんになる!」
ランスは尻尾をブンブン振って喜びを表していた。
それを見ながら、ルースが一人前になれる日は来るのだろうかと、リーナは考えていた。
(まあ、半人前のままでもいいけどね)
リーナはルースの尻尾を気に入っていた。
だから今のままの彼でいいと思うのだった。
ルースは『拾ってもらおう作戦』の前にも、竜の求愛行動として食べ物を贈ろうとしたのですが、リーナの家の前に鳥の死骸を置いたら「何これ、気持ち悪い」と言われて、次に果物を置いたらスルーされました。
なので、この作戦を思い付いて実行したのです。
おバカですよね。(笑)
ここまで読んで下さって、ありがとうございました。