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完章*白華の篇

予告してました白聞編ですヽ(´o`;


後は、エピローグ編で騒乱と後日譚を補足して最終的な区切りにしたいと思っております。


白鴛清華大付属学園 新聞部。

学内新聞の制作、配布を一挙に担う組織として対外的に知られている組織である。

しかしその内情は全く異なる。






白聞と称される彼等は、学内の風紀を司っている。

正式名 学園風紀統率役員会。

そこに所属するメンバーは六人。全員が部員ではなく、役員であり。

同時に彼等が学園内で名乗るのは偽名である。

出自、経歴、指名、年齢を詐称することを学園内で許されている彼等は生徒の監査を秘樒裏に担う。

学内で彼等ほどに情報に精通する組織は存在しない。

そもそもその存在さえ、生徒たちは認識していないのだ。

表向きは生徒会が、裏では白聞が掌握する学内。


今日もまた、学園の裏側で彼等は思い思いに独白する。











「ねえ----、あの中庭の光景が今日も僕の良心を痛ませるんだけど。ね、会長ってば」


「……煩いなあ、エリ。あれは不可抗力だ。わざわざ会長の耳を穢すな」


僕、と称する少女と向かいからその少女の頭を手にした冊子で叩く少年。

彼らの学内名称は其々以下のとおりである。



久礼野 江利

兎束 郁。


彼らは共に白聞の役員だ。



「ぶー、そんなこと言って兎束こそ気にしてるでしょ。あの子の情報流したの実質僕らの責任だもんね」




少女のその言葉に、背を向けつつも反応する少年。肩が揺れている。

それを横目で見ながらも、言葉を切らさない少女は大概性格が悪い。




「やっぱり彼の言動を学内新聞に掲載したのはリスク高すぎたよねー…。お陰で現状は彼に手綱を握られてるもの、僕ら」



そうなのだ。

白聞の存在を、歴代の生徒会でさえ把握に至らなかった。少なくとも今に至るまでは。

藪を突いて蛇を出したのは他でもない、彼ら二人なのだ。



「だから初めから榊の継嗣に関わるのは止めておけば、って忠告したのにね」


「そうそう。この事が紫園に知れたら君たち大変な目に遭うよ」



そこへもう二人、参加した。



頬杖をついてにやにやと二人の遣り取りを眺めている少年は緋叉眼 織。

緋叉眼に同意しながら応接用ソファーで仰向けに寝転んでいる少年は柊 灯。


彼等を含めた四人に、白聞の王と王佐を含めれば総勢六名役員全員が揃う形になる。




「柊、君たちでは済まないの。正確には私たち全員。不本意ではあるけれども、まだ時は熟していないわ。だから彼女にはもう暫く我慢をしてもらわないとならない。それを……紫園も了承した上で今は見逃してくれているだけ」




白聞の王佐、伊織 樒。

彼女の声に、四人は揃って嘆息する。




内心の声は皆同じ。

ああ、やはり魔女は気付いていたのだと。



この時点で彼らの逃げ道は閉ざされたも同然である。




「紫園は、彼女を連れて学院に戻る気なのかなぁ?」


久礼野の呟きに、その可能性はないなーと呟くのは柊だ。


「榊家なめんなよ、って感じ。そもそも僕等の詐称だって、そんな簡単に突き止められるような甘いセキュリティーじゃなかった筈だよね。あれ個人でも手に余るのに、家の力を借りたら厄介だよ、実際」


「少なくとも国内では紫園といえど、逃げ切るのは難しいよ。それは本人も分かってるよね?」



緋叉眼の問いは、王佐である伊織に向けられたものだ。



「ええ、その通り。紫園は国外への逃亡も辞さないつもりでいる」


それに対する返答は、ここ数日の間で彼等が辿り着いた答えそのものでもある。






「大変だな……紫園」


「そうだよー。常々愚痴を零したくなるのもよく分かるよね。何せ相手が相手だもの。私たちも他人事じゃないけど、名のある家に生まれるって言うことは、それ相応のリスクを生まれた時から握ってるってのと同義だもの。抑制が利く内は良いけどね……ああ、やだやだ。平凡いちばーん」


同情の籠る一言をぼそりと呟いた緋叉眼に続けて、やはりここでも柊は補足に回る。



基本的に彼ら二人の意見は普段から同調することが多い。



一方、その二人の発言を横で聞いている兎束の顔色は悪い。

それを眺めていた久礼野は、タイミングとしては最悪の形で爆弾を投下する。





「……抑制が利かないってことは、つまり逃亡の計画が少しでも彼の耳に入った時点で、彼女の身が危ないってことになるよねぇ? 貞操的な意味か、生命的な意味で」





床に崩れ落ちた兎束を尻目に、収拾がつかなくなるほどに重く立ち込めた空気。

しかしこんな時こそ、王が真価を発揮するのだ。





「駄目ですよー、久礼野。推測の内はむやみに口にしてはいけないのです。それが我々の立場から言える基本姿勢ですから。それにその点は心配ありません。仮にも『魔術師』が彼女の守護についていますから。最低限は守る筈です。そこは入学時点で確認済みです。当時ほどの力はありませんが、今世でそれほど複雑な結界を必要とする事態、まず無いですからね」





ほのぼのと場を和ませる声が落ちてくる。


白聞に与えられている特別室には、螺旋階段と二階部分に書庫が完備されている。

数冊の資料を脇に抱えて、とてとてと螺旋階段を下りてくるのが我らが王にして白聞の長。

学園内では、雪白 雲雀と呼ばれている少女だ。



彼女は一言で言おう。大変愛らしい。


ふわふわの腰までの金色の巻き髪は眩しいほどだ。

更に言えば、日差しが差し込む様な微笑み。半強制的に場の空気を彼女の側に付けてしまう凶器である。

これで素だから、性質が悪い。

王佐の彼女が常日頃から零すのも、頷ける破壊力だ。





「……そもそも『魔術師』はどっち側なのかそろそろはっきりして欲しいんだよね。あのおっさん、マジ性質悪い。仮にも養父だろ? これも初めから予期してたとしたら相当だよ」




緋叉眼の悪態交じりの発言も、王はやんわりと窘めてみせる。




「『魔術師』……いえ、正確には理事長とお呼びすべきでしょうか。……いずれにしても、あの方の望みは彼女の幸福には間違いありません。ただ、事象を歪める程の力を持つあの方だからこそ、安易に手を貸すことは出来ないのです。加えて、あの方は元々善人ではありませんよ? 当人が日ごろからおっしゃる通りです」




後半でかなり辛辣な言葉があったが、幸いなことにそのギャップもまた彼女の愛嬌の一つとして認知されている。

……だから問題はないのだ。




「でも『王子』も先の行いが行いだからねー…。やっぱそういうとこは男よ、懲りろって感じかな。虫が良すぎ。甘えんのも大概にしろって言いたいかなー。…うーん、不可侵協定破りたいよ」




ぼそぼそと言い紡ぐ柊。

それを半眼で見詰めるのは久礼野だ。




「君も男だからね。見た目こちら寄りだからって、他人事口調止めてよねぇ…」


「ふん、君こそ外見と口調を一致させてから言いなよねー。僕っ娘とか今時流行んないから」




凍りつく様な空気のなかでも、王は何のその。

王佐に頼んでおいたハーブティーを啜りながら、何事も無い様に本題に入った。





「さてと、紫園から昨晩の内に連絡来てますからそろそろ動きますよ。澪君への接触は慎重に慎重を期してね。あの子も基本的には中立だけど、今回の提案をすれば恐らく協力してくれる筈ですから。誰かに強制されたものではない、そんな当たり前で掛けがえの無い幸福を守るお手伝いをしましょう。私たちは学内の風紀を取り締まる以前に、生徒一人一人の平穏を守る役を担っているのですから。……一時は彼女を守れずに無能を晒した私たちの償いでもあります。

『魔女』と共に『彼女』をこの学園から解放する。それを叶えるために、力を貸して下さい」





王の言葉に、まず頷いたのは王佐である樒だ。

その後に残る四人が続く。




白聞が結束し、『彼女』の学園逃亡計画が当人の知らぬ間に進む。

決行は二日後の終業式直後だ。
















































今はまだ、その時に生じる学園始まって以来の騒乱を予期するものは限られている。



しかしその時の『彼女』の選択も。

かつての『王子』が流す涙の理由も。

学園を出た『魔女』が姉の選択に、笑み零す結末も。



まだ誰も見ぬ、この先の未来。






ここまで読んで頂いた方々へ、感謝の気持ちを込めて白聞編をお届けしました(^-^ゞ


前回があれなだけに、今回は現実世界で頑張る人たちのお話です。


コインの裏表のようにして学園に存在する彼ら。

次回は、まだ見ぬ生徒会の他のメンバーも強制参加で、学園を舞台とした彼らの因縁に一役噛んで貰おうと思います。



それでは、今回はこの辺りでヽ(´o`;



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