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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
五章 残響のパンドラ

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確定枠と推薦枠

教室に戻ると、スイロウ先生がこほん、と息を出して教壇に立つ。

自分の机に集まっていた皆が首を傾げると、スイロウ先生は改まった様子で言う。


「ごめんな皆!ちょっと各々の席に着いて欲しい!大事な話なんだぁ!」


休み時間を押してまでスイロウ先生がこういった頼み事をするのは今までになかった。

それだけ大きな事だと理解し、皆は席に戻る。

スイロウ先生はそれを見て、決意したように口を開く。


「実は……皆も薄々聞いていた、トーナメントが実施されるんだぁ」

「あ!なんか噂で聞いてたやつです!本当にやるんですね!」


ニアが元気に答えると、スイロウ先生は大きく頷く。


「その通り!トーナメント……正式名称は『四方魔術学院総力戦』というのだが!」

「へー!総力戦……総力戦?トーナメントなのに、ですか?」


ファレスが皆の言葉を代表して言うと、スイロウ先生は頷く。


「うむ!トーナメントと言っても、全てが一対一で決まる訳では無いからな!中には他学院と共闘することから、総力戦と名付けられているわけだなぁ!」

「なるほど!」


ファレスが納得したところで、スイロウ先生は言葉を続ける。


「そしてこの四方魔術学院総力戦。これがイシュリア史上初の共闘であることから、各学年のSクラスから一人ずつと、学年を問わない推薦枠が二枠用意されてある!

推薦枠には自分で応募してもいいし、他推薦でもいいぞぉ!」

「……なるほど。Sクラスから一人ずつ、ですか……」


ミトロが呟くと共に、一斉に視線が自分の方に向く。


「……いや、だからさ!?皆揃ってお前が出るみたいな顔と視線は何!?」

「そりゃそうだろレテ。お前が出なかったら誰が出るんだよ」


クロウの意見にショウも頷く。

それに対して、ポツリと呟かれた言葉があった。


「……出てみたいなぁ」


それはふと漏らされたような独り言であったが、自分や皆は一斉にそちらを向く。


「お?マジで?」

「あのダイナが自分から出たいなんて。珍しいな」


その言葉にハッとしたのか、ダイナは周りを見渡して頭を搔く。


「え!?く、口に出てた!?だ、大丈夫だよ〜。レテがいいよ〜」

「……いや、寧ろだ。ここは三年生代表としてダイナが出るべきじゃないか?」


レンターが口に出す。そこにニアが素直な疑問をぶつける。


「まぁレテ君あんまり乗り気じゃないから分かるけど……。何か言い方が気になる……。

レンター君、三年生代表として、ってどういう事?」

「……あぁ、なるほどね。そういうこと」


質問と同時にフォレスが大きく頷いて、その後ぷっと噴き出す。


「……レンター君、本当にそれ通そうとしてる?」

「え?え!?どういうこと!?フォレスちゃーん!教えてー!」


ニアの泣きつくような声に二人が苦笑いを浮かべると、順番に言う。


「スイロウ先生の話では、各学年のSクラスが一人ずつ出る。これが所謂決められた六人だ。この他に入るとしたら、推薦枠の二枠しかない。

当然、推薦枠は学年、自他推薦を問わないとはいえ実力の高い上の学年から選ばれるだろう。……だが」


そこでレンターが区切ると、フォレスが引き継ぐ。


「……もしも、三年生のSクラス代表がダイナ君で、レテ君が選ばれなかったとするよね。

そうしたら、私たちより上の学年の人は『どうして顕現の神童を選ばないんだ?』ってなる」


そこまで言われて、ニアが「あっ!」と気づいて呟いて言う。


「そっか!この史上初の総力戦に、魔術学院でも頭ひとつ抜けてるレテ君の姿が無いのは納得いかない!でも、三年生の枠は埋まってる……!

だから、自分達で推薦枠に押し込んじゃおうってこと!?」

「そういうことだ」

「そういうこと」


その言葉に自分は机にガコン!と頭を当てそうになりながら二人の方を向いて言う。


「本気で言ってるのか!?自分は別に参加しなくても……」

「いや、レテは参加するよ〜。確実に〜」


確定のハンコを押したのは、まさかのダイナだった。


「スイロウ先生〜。これって、決まったら他の人にも言ってもいいんですよね〜?」

「ん?ああ!大丈夫だぞ!」


そう回答が来ると、ダイナはニヤリと笑って皆に向かって言う。


「ってことは〜。今回、確定枠では顕現の神童出ないんだって。残念だよね〜って噂を流すのも……」

「待て待て待て!盤外戦術もいいところだろそれは!」


自分がツッコミを入れるも、ダイナは止まらない。


「でも〜。レテは確定枠では出る気、無いんだよね?」

「う……ま、まぁそうだな……」

「でもでも〜?大人数から推薦されて推薦枠に入ったら〜?」

「……はぁぁぁぁ……。参加するよ、その時は……」


自分が完全に机に轟沈すると、スイロウ先生も笑いながら言う。


「うむ!じゃあ三年生からはダイナ君でいいかな!?先生もそれっぽく噂は流しておこう!」

「せんせえええええ!?!?」


まさかのスイロウ先生まで協力者になるとは。

とんだ誤算だと思いながら叫ぶ。

その横で、シアとリアーが笑う。


「ふふ、大変だねー?」

「レテ様、振り回されてます!」

「……じゃあ二人は自分側に着くのか?」


一縷の望みを抱いて質問をする。


「ううん?私は噂を流す側にまわるけど?」

「私もです!」

「知ってたよ!逃げ場は最初から無かった!」


自分の言葉に、どっと教室で爆笑が起きた。




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