叛逆の幕開け
誤字訂正しました。一がニになってた。スマン。
◇◆ロロ視点◇◆
暗殺を決行の翌日、私はミラ嬢から計画の進捗を聞くために朝早くから大隊本陣を訪ねていた。
現在、天幕の中には私とミラ嬢の2人だけである。
イワン殿もリザも行軍の準備中だ。
……眠い。
「昨夜はご苦労だった。おかげで私の方も上手くいったよ」
「では、ご帰還なされるので?」
「ああ、だが、あちらでも一騒動ありそうだ」
「大変ですな、貴族というものは」
血縁に派閥に権益と、なんとまぁ、しがらみの多いことよ。
その絆と忠義の強きこと云々と言う人もいるが、私にはそのようにあやふやな物は頼りにできないな。
別に彼や彼女を不信に思っているわけではないが。
「なに、お前の気にすることではない。それよりも自分の手柄を気にしておくのだな」
「…と、言いますと?」
「私が王都に帰還することで部隊は解散。隊員のほとんどは補充兵に回され、お前は本陣付の騎士団に配属。……ここまでは貴様の予想通りだ。だが、私も掌の上で転がされたままというのは気に喰わないからな。一つ、手を打っておいた」
……?
「喜べ。お前が配属される騎士団は、本陣は本陣でも第一軍団の方だ」
「…………は?」
「第一軍団は現在、度重なる戦闘で物資が不足しているらしい。よって、予想される会戦場所に到着する前に第二軍団の余剰物資を輸送することになったから、その輸送物資一覧にお前の名前を書いておいたのだ」
どうも、補充物資のロロです。
「お前とて、弱い軍にいるよりも強い軍にいる方が手柄も立て易かろう」
それもそうなのだが、私の計画としては武勲を立てることが目的ではないのだ。
まぁ、どの道彼女に接触するには第二軍団に向かう必要があるので、むしろ適当な理由が出来て好都合なのだが。
「ご配慮に感謝します」
「うむ、結構。帰還に際しての見送りはいらんから、お前も出発の準備をしておけ」
……見送りが必要だったのか。
「それではヒスティア卿。準備に当たって一つ、お頼みしたいことが」
「…………言ってみろ」
今の間はなんだ。
「これを、学院のヨゼフ教授に」
火槍の入った袋と実験結果と考察を記した手稿を渡す。
どうにも戦場で実験するのは無理があるようなので、現状のデータだけでも確実に届けておきたい。
私が死んで、貴重な資材が失われては堪ったものではないからな。
「なんだこれは?」
「教授から借りていた天文観測の機材と結果を記した資料です。せっかくの南に行く機会でしたのでお借りしましたが、乱戦で失うのを避けようと思いまして」
自由な研究のために、教授は内密で兵器開発をしているのだ。
それを権力者に知られるわけにはいかない。
それがたとえ主人であったとしても、人の口に戸は立てられぬからな。
「……ふむ。相手が教授だから構わんが、高位貴族を遣うとは、貴様は王侯か何かなのか……」
そういう安いプライドに拘るのは貴族の悪癖だ。
「それは暗に『私に王侯たる資質がある』とおっしゃるので?……たしかに、今でこそ私はこの身分に甘んじておりますが───」
「違う」
「でしょうな」
「はぁ……。共謀者の無礼な頼みを適えてやるぐらいは気にする程でもないのだが、他の貴族にはやるなよ?」
「もちろんです。ヒスティア卿の器が大きいことを知っているから頼むのですよ。そうでなければ、面倒ですがイワン殿に頼みます」
「……道理を弁えているならば、筋を通し給え」
「………。……道理とは、共通認識です。ですから、時代や状況によって自ずと変化します。で、あれば、戦場での道理とは効率の最大化を言うのではないでしょうか」
「『それは詭弁だ』と言いたいが、誤りが見つからんな……。……ふむ、ならばそれが道理なのだろう。思えば、戦の最中で役職ではなく身分の上下云々を言う奴ほど鬱陶しい者はいない」
「ご理解いただけてなによりです」
「少々話が過ぎたな。下がって良いぞ」
「ハッ。それでは、『戦場から』ヒスティア卿のご健闘をお祈りしております」
「フッ、皮肉がキツイな。……ならば、私は王都で凱旋式の準備をするとしようか」
「一等派手に頼みますよ」
「フッハハハハハ!良いな!ならば、それに見合う手柄を立てて参れ!!!」
「では、失礼します」
ミラ嬢は上手い冗句と思っているのだろうが、既に見合う手柄の算段は立ててある。
ただ、それを王都で祝えるかはわからんがな。
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戦況:ダンメルク王国VS神聖帝国
・神聖帝国 帝国軍:集結完了(北部諸侯及び南部諸侯 不参戦)
・ダンメルク王国 王国軍:行軍中
・ガリア王国 王国軍:進軍開始(神聖帝国 南西部国境)
戦況:スヴェーリエ王国VSスエビ諸侯(プルサイ王国)
・スヴェーリエ王国 王国軍:急速行軍中(海路 スエビ海)
※スエビ海は北海の一部。半島と大陸の間にある湾のこと。
・プルサイ王国 王国軍:略奪中
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