第17話―3
「え、えっと、じゃあ、ほかのみんなは⁉ さすがに知らない⁉」
「いやー、どうだろうね。面と向かって言ったことはないけど。ハリーはあのセクシーダイナマイトお姉さんを前にしてウンともスンとも言わないし、なんか後ろ暗いことがあるってのは察してそう」
ハリソン先輩、なんだと思われてるんだろ……。
「ナターシャもナターシャで鋭いしねー。初対面で気づかれてそうではあるかな」
確かにナターシャ先輩はそうかも。
「ローレンは……、わかんね。あれでいて結構他人に無関心だしな」
周りのひとをよく見ているこの感じ、間違いなくセシル先輩だ、と思う。
「ま、アンディにもアリスにも黒衣会と接触してたことがバレたわけだし、この際全部ぶちまけちまうか。なあ、アンディ?」
セシル先輩が楽しげに笑いながら、今度は会長の肩に腕を回す。
「……ぶちまけるのはセシルのことだけでよくない?」
「いやいや、オレの深層の部分にはアンディも関わってくるじゃん、おのずと」
「……表現が気持ち悪いんだけど」
会長は辟易とした様子を見せつつも、最終的には「好きにすれば」とぶっきらぼうに呟いた。
「どうせずっと隠しているのも無理があるんだってことはここ最近の出来事でよぉ~くわかったから!」
セシル先輩が情報を売ったことについて言っているらしい。セシル先輩は苦笑いを浮かべつつ、あたしに向かって口を開いた。
「ま、どうせならオレがここにいた理由から話そうかな。……ジェラルドに、学園で魔物保護会をつくるから協力してほしいって言われたのが最初。まあ知らないやつじゃないし、お金くれるなら協力してあげてもいいかなって思ったところで……、白亜会の弱点を聞かれたんだよ」
「ほう……」
これについては会長も初耳のようで、興味深そうに頷いている。
「あ、コイツの目的って魔物を保護することじゃないな、ってそこで気がついて。お金に眩んだフリしつつ、差し障りない程度にみんなの欠点を教えた」
「フリじゃないだろ」
「でもさ、なにかよからぬことを企んでるってことはわかっても真の目的はよくわからなくて、しばらくジェラルドを泳がせることにしたんだよ」
セシル先輩いま、会長のツッコミ無視しましたよね?
「与えた情報もどこに使われるかわからなかったから、ひとつだけ『嘘』を教えた。本当の情報はいつどこでバレてもおかしくないから、嘘も混ぜてオレ自身が『オレが与えた情報だ』ってわかるようにね」
「にしても質の悪い嘘だけどね……」
いーじゃん細かいことは、とセシル先輩が唇を尖らせる。
「でまあ、やっぱりジェラルドの狙いはアンディであることには違いないっぽい」
「そうか……。黒衣会の会長がジェラルドって知ったときから、そうじゃないかとは思ってたけど」
ここからは会長も知っていた話のようだった。というかセシル先輩が二重スパイみたいなことやってたのも初耳なんですけど……⁉
「……えっと、うすうす思ってたんですけど、おふたりとジェラルドさんってお知り合いだったり……?」
「……どこから話すのが早い?」
「ま、いちいち全部言うより流れで説明すれば?」
「雑だな……。……えーっと。ジェラルドは僕の兄、エルヴィスの護衛隊の一員でエルヴィスの熱狂的な信者みたいなひと。グレッグも多分護衛隊のひとり。ジェラルドは名前や評判を知っているだけでよく知らない。話したことはない」
……護衛隊って、どういう世界に住んでるの、会長。
「そんで、エルヴィス兄さんはこの国の第三王子。正妃の長男で王位継承権第一位」
セシル先輩が、ついでと言わんばかりにつけ足してくる。
「……ん?」
「……学園ではあだ名みたいに王子って呼ばれたりするけど……。一応、本当の王子だった。……昔は」
会長が、気まずそうに呟いた。
「え……?」
この状況に理解が追いつかないのはあたしだけではないと信じたい。
「オレはいまでも王子だよー。あ、王女でもある。オレって称号がややこしくて面倒くさいんだよな。その分便利なときもあるけど。なー、アニキ!」
「うざい、馴れ馴れしく肩に腕を回すな……!」
「きょ、きょうだい⁉ 会長と、セシル先輩が……⁉」
ふたりの顔を見比べる。でも、たしかに、さっきセシル先輩の顔に見覚えがあるって思ったのは、セシル先輩に似てたからというより、会長っぽく見えたからなのかも……!
「髪色、金とオレンジでなかなか近いでしょ。そんで目の色、紫で完全一致してんだわ。髪質も結構似てるんで男の姿だと結構アンディときょうだいってバレバレなんだよねー。あ、これでも母親は違うし、女の姿は母親似だから、学園じゃ女の姿でいるってわけ」
「は、はー……、そ、そういうこと……」
だから会長とセシル先輩って仲良しだったんだ。会長って元々ひとによって態度を使い分けるタイプだけど、ほかのみんなと接するのとはまた違った感じだったし……。




