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第1話―2

 生徒会室の扉をノックして、返事も聞かず開ける。そこにいたのは、二人がけのソファに腰かけ優雅に紅茶を飲む女のひとと、その反対側でなにやら宙に浮かんでいるパネルをいじりつつストローをくわえている女のひと。そして、デスクの後ろで大きな窓から外を眺めているひとの三人がいた。窓を見ていたひと――会長はあたしの存在に気がついたようで、その体をひるがえす。


「返事をしていないのに入ってきたね?」

「えっ、だめでしたか?」

「……」

「また無視っ」

「……呆れているんだよ」


 会長はため息をつきつつ、デスクのそばにある大きな椅子に腰かけた。王さまが座ってそうなかっこいい椅子だ。ふかふかしていそう。


「それで、あたしなんで呼ばれたんです?」

「生徒会に入れたいから」

 言葉少なにそう言われ、頭の中がはてなで埋め尽くされていくのがわかる。


「えっ?」

「責任をとってもらうために」

「生徒会に入ることが、どうして責任をとることに~……? むむむ?」


 その理屈がわからなくて、あたしは首を捻った。責任どうのこうのは昨日から言われていた気がするけど、生徒会に入れたいと言われたのは初めてだ。


 あたしが首を傾げていると、会長は再び椅子から立ち上がる。


「君は魔物に怖じ気づかなかったし、攻撃されることもなく、その上契約もしていないのに友好的に接していた」

「……そーですね?」


 腕を組み、肘のあたりを指でトントン叩きながら、会長がデスクのそばを歩き回る。それを視線だけで追いかけていれば、次第に目が回ってきて、あたしは少し後ずさった。


「そして僕の涙を見た!」

「んっ?」


 会長は突然立ち止まり、びしりとあたしを指差してくる。


「僕はこれでも一応、全校生徒に完璧で自信満々で優雅で、なんの屈託もない人間だって思われてるんだよ。それなのに君に陰鬱でネガティブな本性を見せてしまった……! よりにもよって口が軽そうで交友関係も広そうな、君に!」


「えっと、ありがとうございます!」

「褒めてない!」


 ぴしゃりとすぐさまそんな言葉が飛んでくる。交友関係が広そうって言われたからお礼言ったんだけど違ったみたいだ。


「だから君を生徒会の一員にして、僕の言うことを聞かせられる生徒にしたい」


「ふふ、よくない響きの言い回しするわね~」

 ふと、紅茶を飲んでいた女のひとが、カップをソーサーに置いてちらりと会長を見て――そして、あたしに視線を移す。


「アンディの言い方は無視して構わないからね? 色々ねちねちしつこく文句を綯い交ぜにしてるから結局なにが言いたいのかわからないと思うけど、要はキミの才能を買ってるってことよ」


 女のひとは長い脚を組み替えて、ウェーブがかった髪を持ち上げつつ、あたしにウィンクを飛ばしてくる。思わず見とれちゃうくらい魅力的なひとだなぁ、とぼんやり思いつつ。


「才能ですか……。まあ確かに、色んなひとと仲良くなるのは得意ですっ」

 普段は魔法が下手下手言われてばかりで、そう言われるのは別に気にしてはいないけど、やっぱり褒められるのは素直に嬉しい。


「にしてもキミがこの生徒会――白亜会に入ってくれたらワタシも嬉しいわ。キミみたいにポジティブで社交的なメンバー、ワタシ以外いないんだもん」


「……副会長、それもしかして自分も含めてるっすか?」

 宙に浮かび上がったパネルをいじっていた女のひとが、ふと顔を上げて向かい側のひとを見る。


「あたりまえじゃない。ほら、新人(仮)さんに挨拶して?」

「そーやって言われなくてもしますよぉ~……。……えーっと、一年C組魔法コースのアリスティアサンっすよねー。自分は二年の会計、ナターシャって言いまーす」


 くわえていたストローを二本指で摘まみ口から離して、自己紹介をし終わったナターシャ先輩に、あたしは勢いよくお辞儀をした。


「ナターシャ先輩! よろしくお願いします!」

「うわっお辞儀速っ、深っ。体育会系かよ」

 ナターシャ先輩にそうつっこまれつつ、ふと思う。あたしいつ名前言ったっけ?


「ワタシは三年で、副会長をやっているセシルよ。よろしくね? アリス」

「わ~い! よろしくです!」


 会計とか副会長とかみんなかっこいい役職持ってて素敵! あたしも入ったらなにかもらえるのかな? 監査役員、みたいな……!


「会長会長っ、入るんであたしにもかっこいい役職ください!」


 手を挙げて尋ねれば、会長は若干嫌そうな表情を浮かべながらも口を開く。

「そんなあっさり……? ま、まあそれならそれでいいんだけど……。そうだなあ、君は……。空いているポストは庶務くらいしかないけど……」


「ショム⁉ やったーあたしショムだって、先輩方~! ところでショムってなにやるんです?」

 ナターシャ先輩とセシル先輩にそれぞれ視線を投げるが、先輩方は首を横に振るだけで答えてくれない。


「……うるさいのを入れてしまった……。僕の判断は早計だったか……?」


 背後からそんな言葉が聞こえてきたけど、気にしない気にしない!

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― 新着の感想 ―
涙をみちまっちゃーしょうがねぇなぁ〜 ひとはだぬいでやるぜ! じゃないですが(笑)怒涛の勢いで展開して行きますね〜。 もう面白いので星5つです♪ ナターシャ先輩とセシル先輩もあざーすっ。 よろしくお…
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