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第4話―2

 あたしがセシル先輩との世間話を再開させようとすると、再びドアが開いた。来たのはローレンで、ソファに座っているハリソン先輩を見るなり目を開いた。


「うわ、ハリソン先輩がオレより先に生徒会室に来てる……。珍しいこともあるもんだな……」


 唇を戦慄かせるローレンをハリソン先輩は気にも留めていないみたいだ。


「よっす! ローレンはきょうも運動部の助っ人?」

 ローレンに駆け寄れば、ローレンはハリソン先輩からあたしに視線を移して顔を綻ばせた。


「よっす。そーなんだよ、練習に付き合ってほしいって言われてさー。いやぁ、いいプレーするたび女子からキャーキャー言われて大変だったわぁー」


 ローレンは自慢気に前髪を持ち上げ、そのまま後ろに撫でつける。

「えー、いいなあ、あたしも女の子にキャーキャー言われたい!」


「……」

 あたしが素直にそう羨ましがれば、ローレンはいきなり黙りこくり、げっそりとした顔になってしまった。口角と肩が連動しているかのように同時に下がる。ローレンってば落ち込んじゃったみたいだ。あたし、なんか落ち込ませるようなこと言っちゃった?


「……こればっかりはローレンに同情しちゃうわ……」

「ローレンも苦労してるんだね……」

 背後からも先輩たちがやいのやいのと言っている声が聞こえてくる。すると、なにを思い至ったのかローレンはなにかを振り払うように犬のように頭を振って、会長のほうを見た。


「会長! 新しい任務かなんかないんですか! コイツと行ってくるんで……!」

「ああうん……。ええっと……、あ、あった。学園近く、森を出た先に村があるのは知っているよね? 最近、その村に夜な夜な魔物が出るらしいんだ。悪夢を見させる能力があって、むりやりペインを生み出させられるらしい」


 会長はリボンで結ばれた依頼書をめくったのち、目当てのものを見つけたらしく顔を上げる。


「悪い夢を見させて、ネガティブな感情にさせるってわけですか……」

 ローレンが神妙に呟いた。夜にやってくるということは夜行性なのかと思ったけど、悪夢を見させるという目的があるならそうとは限らないのかも。


「そういうことになるね。これは必然的に夜に赴く必要があるし、赴いた日に魔物が出現するとも限らない。夜に森を抜けて学園の寮にまで帰ってくるのは危険だ。村人たちの護衛も兼ねて数日村に泊まることになるんだけど……平気そう?」

「大丈夫です!」

 ローレンがいつになく語気を強めにして叫ぶ。そんなにこの任務が楽しみなのかな。あたしとの任務を楽しみにしてくれているのは素直に嬉しいから、喜んでおこう!


「んじゃ、アリス。任務の日までにそれなりに戦えるよう特訓すんぞ……!」

 闘志に燃えているのか、ローレンは拳を顔の前で力強く震わせている。そんなローレンに駆け寄って、あたしはるんるんと体を揺らした。


「特訓! なにやるの?」

「とにもかくにもお前にゃ魔法のセンスがねえ。苦手な分野を普通レベルに引き上げてやっと一般人と肩を並べられるようにするよりも、得意分野を突き抜けさせてプロになれるレベルになるほうが圧倒的にいい。っつーわけで、お前には得物を使えるようになってもらう……!」

「エモノってなに……!」

「剣とか槍とか……、まあ要するに武器のこと。オレは生身で戦うのが好きだけど、ハリソン先輩とかは魔道具の狙撃銃を使って魔物を討伐してる」


 ローレンが、今度は退屈そうに読書をしているハリソン先輩をびしりと指差す。あの肩に背負われていたものは狙撃銃だったのかと納得した。


「いいか、お前は魔物を傷つけるためじゃなく、お前自身を守れるようにするために武器の使い方を学ぶんだ。お前が友好的だからって、相手がそうとは限らないんだからな」

「はーい!」


 ローレンの両手があたしの肩に優しく、けれど力強くのせられる。ローレンってば、あたしがどうすれば納得するかわかりきっているみたいだ。優しい言葉選びに思わず頬が綻ぶ。


「あ、悪ぃ。肩怪我してるんだったよな、平気か?」

「あ、うん、大丈夫だけど……。なんで知ってるの?」

「きょうの体育、合同だっただろ。ボール投げるとき一瞬痛そうな顔して……、左手に持ち替えてたからさ。お前の友達……、サナだっけ? に聞いたら、怪我してるっつってたし」


 ローレンの言葉に、あたしは思わずあんぐりと口を開けてしまった。


「……なんだよ、その顔……」

 あたしの視線に気がついたローレンが眉をひそめる。


「いや……、ローレンってあたしのことすっごく見てるんだなーって……。いや、嫌がってるわけじゃないんだよ」

「は、はあっ⁉ ちっげーし見てねーし! 他クラスの知らない連中の中に知ってる顔があったら思わず見ちまうのはしょうがねーだろうが……!」

「ん? 結局見てたの?」

「見てねー……!」


 勢いよく言葉をまくし立てたからか、ローレンはぜーぜーと息を荒げる。おまけに顔が真っ赤だ。



「アオハルしてるわね~――って、アンディにまたきのこが生えてる……!」

「ピンピンしてるって言ってたのは嘘じゃないか……! また僕は、なんにも考えていなさそうな後輩に、気をつかわれて……! そのうえ、僕は額面どおりに言葉を受け取る阿呆に成り下がり……!」

「あらあら、ネガティブ無限ループに入っちゃった」

 セシル先輩が、呆れたように笑った。

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