一人で新年会へ その2
ここから二人の視点がちょくちょく入れ替わります。
視点入れ替わり時に必ず注を入れておきます。
リシアside
お姉さまはもう晩ご飯食べましたかね…?
私は烏龍茶をいただきながら残してきたお姉さまに想いをはせる。
少なくてひもじいことにならぬよう、普段より少し多めにオムライスを作っておいたのだ。大丈夫とは思うのだが。
「西条さん大丈夫?」
「あ、はい。楽しんでます。」
いかん。とりあえず今はこちらに集中しよう。
お姉さまもあれで良い大人なのだ。
困ったら自分で何とかするよな。
「お料理、美味しいですね。」
「でしょう?ここらで飲み会するときは大体ここなんだ~。」
私を誘ってくれた高原さんは、ここまで付きっきりで横に座って色んなサポートをしてくれる。
受け答えが下手くそな私に代わって補足してくれたり等々。
ありがたいことだ。
それはそうと、先ほどからちらちらと高原さんの視線が行っている女性がいる。
「もしや、あれが高原さんの…?」
「ばれちゃった?まだ告白出来てないんだけどね。」
「へぇ。そうなんですねぇ。」
高原さんは恥ずかしそうに私の耳元でごにょごにょと話す。
それを聞きながらその女性を眺めていると、ふと目が合う。
少しの間見つめ合っていると、だんだん視線がこう、何というか。
怒ってるときのお姉さまとそっくりになってくる。
これはうーん、たぶんそういうことだよな。
「高原さん?」
「ん?」
「私は大丈夫なので、少し挨拶に行かれては?」
「え、でもなぁ…。」
「大丈夫ですって、ほらほら。」
私は高原さんの背を押して、その彼女ところへ行かせる。
挨拶する高原さんを見て彼女はとても優しそうな目で見ていた。
◆ ◇ ◆ ◇
麗香side
「…来てしまった。」
私は少しずつ走るペースを緩め、一休止する。
走ってみると15分ほどでついた。
普段よくリシアは歩いて大学まで行くものだと思う。
「どこで飲み会しているんだろうな?」
ペットボトルの水を飲みながらそう呟く。
常温で持ってきた水が冷たい空気で冷やされて暖まった体にはちょうどいい冷たさだ。
「リシアが居たらこの美味しさを共有出来るのだが…いや、リシア離れしないとな…。」
先ほどから何かある度にリシアの陰を探してしまう。
ここ数月、長くそばに居ることが多かった。
そのせいか、少しこうして離れるだけで寂しく感じる。
でも、それじゃあダメなんだ。
今までの生活は例外で、これからは二人自分の人生を生きながら共に歩んでいかねばならないのだ。
こういう時間も慣れないとな。
「こんな時でもファーストフードはやってるんだな。」
まだ年明けすぐ、まだ冬休みだ。
大学生向けの店舗だろうに開いている。
…なんだか喉が渇いた気がするなあ。
今水飲んだけど無性に喉が渇いた気がするんだよ。
これはファーストフードでゆっくりコーヒーでも飲まないといけないのじゃないか?一時間くらい。
そうすると、リシアの帰宅時間と偶然噛み合ってしまうな。偶然。
うん。まぁ帰宅時間と噛み合うかはともかく、とりあえずコーヒーでも飲もう。そうしよう。
私はそう決めてファーストフード店へと入っていった。




