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最終話 あなたを忘れない

最終決戦、開幕。

アデルが拳を繰り出す。それだけで垓を超える数の宇宙が破壊され、創造されるほどのエネルギーが発生した。ミライはそれを片手で弾き、同時に自身のワルキューレによる刺突を放つ。これもまた、アデルの拳と同じ量のエネルギーを発生させた。アデルはミライの攻撃を受け流し、今度は蹴りを繰り出す。穣を上回る数の宇宙が破壊され、創造されるほどのエネルギーが生まれる。ミライはアデルの蹴りをのけ反ってかわし、その勢いで自身も蹴りを放った。同時に、アデルの蹴りと同じ量のエネルギーも発生する。当然喰らうわけもなく、アデルもそれをかわして拳による反撃を…このやり取りを、両者はもう何度も繰り返している。必殺技ではなく、ただの体術でコレだ。もう一体どれだけの宇宙が破壊され、創造されるだけのエネルギーが発生したのかわからない。ただ宇宙が創造されるほどのエネルギーが発生したのに宇宙が生まれないのは、発生した宇宙をその瞬間にミライが分解しているから。その際に発生したエネルギーの半分はさらなる宇宙の破壊に使われ、もう半分はミライに吸収される。アデルはミライを攻撃すると同時に、強化してもいるのだ。もちろん、アデルが意識してやっているわけではない。セイヴァーモードの高すぎるパワーが、裏目に出てしまっているのだ。しかし、セイヴァーモードとなったアデルは、一秒毎にミライの強化を上回る速度でパワーアップしている。本来なら拮抗することなく、ミライは瞬殺されているのだ。にも関わらず拮抗できているのは、先にクロノクライシスを発動してセイヴァーモードと戦闘を始めたから。予めクロノクライシスが発動していたため、今まであった宇宙を破壊した時のエネルギーと、アデルが発生させたエネルギーとで、より多くのエネルギーを吸収できるのだ。二つのエネルギー吸収と強化を同時に行っていたため、ミライはセイヴァーモードのアデルとも互角に戦えるだけの戦闘力を得ていた。


(土壇場でこんなパワーアップをするとは…もしクロノクライシスを使わずに戦っていたらと思うと、ゾッとしますね)


真の最終強化形態となったアデルと戦い、その力を実感して戦慄していた。とはいえ、今の二人は完全に互角。このままでは決着がつかない。


「一気に決めるぞ!!アンジェ!!ネリー!!」


『オッケー!!』


『うん。』


アデルは勝負に出た。右拳にエネルギーを込め、


「アクセラレーションパンチ!!!」


全力で殴りつける。


「エンドオブディメンジョン!!!」


それに対抗して、ミライも右のワルキューレにエネルギーを込めて、振った。二つの技はぶつかり、正を超える宇宙を破壊し創造できるエネルギー量の衝撃波が発生。それに煽られて、アデルとミライは弾き飛ばされた。


『シャイニングフェザーストーム!!!』


「アグレッシブレイン!!!」


すかさず、羽とエネルギー弾の嵐が衝突する。一発一発が載を超える宇宙の破壊と創造を行える、壮絶な激突。力と力のせめぎ合い。もはやそれは、人知の及ぶところではなかった。この戦いの行方がどうなるのか、もはや誰にもわからない。だが、


「俺達は勝つ!!ミライさんを救うために!!」


アデルは固く決意していた。何が何でもこの戦いに勝ち、ミライを救うのだと。



その時、アグレッシブレインと撃ち合っている感覚が消えた。


『パパ!後ろ!』


「!!」


魔術を使って感覚を研ぎ澄ましていたネリーは、感知した危機をアデルに知らせる。アデルは瞬時にプライドソウルを精製し、背後を向く。そこにはミライがいて、ワルキューレを振り下ろしてきていた。途中で手応えがなくなったのは、ミライが瞬間移動したからだ。ネリーのおかげで気付けたアデルは、ミライの攻撃を受け止めることができた。しかし、一撃放っただけでは終わらない。残ったもう片方の手で、二撃目を繰り出してくる。アデルは剣形態のアークスを精製することでこれに対応し、難なく受け止めた。


「私を救うと言いましたね?何から救うというのです?」


つばぜり合った状態から、ミライはアデルに尋ねる。


「今の私はかつてないほど満たされている!ずっと前から求めてやまなかった真の完全平和が、目前まで迫っているのですから!」


それから蹴りを繰り出し、アデルを蹴り飛ばす。対するアデルは、ダメージを受けていない。ただの蹴りでは倒れない。


「そんな私を、一体何から救うというのです?心当たりがあるとすれば、あなた達という脅威から身を守り、始末することぐらいですが。」


皮肉混じりに質問するミライ。確かに彼女から見れば、限りなく満たされており夢が叶いつつある。あとはアデルさえ始末できれば最高という状態だ。


しかしミライから見ればの話。アデルからは、全く違って見えた。


「あなた自身の思想からだ!!」


だから言った。自分が一体、何からミライを救おうとしているのかを。


「私自身の思想…?」


「そうだ!!」


アデルは武器をチャウグナルファングに替え、超スピードでミライの右側に回り込んで斬る。それを受け止めるミライ。


「あなたは平和を目指すあまり、その思想に囚われて極端になりすぎている!!人々を幸福にするために、幸福になるべき人々をその世界ごと滅ぼす。そんな平和では誰も幸福になんてなれない!!」


「虐げられながらいつ来るかもわからない幸福を目指して苦しみ生き続けるより、最初から生まれない方がずっと幸福だということがあなたにはわからないのですか!?」


「それはあなたが勝手にそう思っているだけだ!!!」


アデルはパワーを上げ、チャウグナルファングを振り抜く。飛ばされたミライは体勢を立て直し、アデルに向けて両手からエネルギー弾を乱射した。アデルも武器をダゴンとヒュドラに替え、弾幕勝負となる。


「誰も幸福になれない平和を作ろうなんて思想は、結局あなたの自己満足でしかない!!俺はその思想を破壊し、あなたを解き放つためにここにいる!!!」


「完全平和が私の自己満足だと!?よくも言ったな貴様ぁぁっ!!!」


逆上したミライはエネルギー弾のパワーとスピード、量をさらに増大させ、押し切った。アデルは直前にクトゥルフサンクチュアリを発動することで、身を守る。だがすぐにミライが接近し、ワルキューレの一撃でクトゥルフサンクチュアリを破壊。アデルは二撃目を瞬間移動でかわして逃れる。ミライはアデルが逃げた先へとさらに瞬間移動し、追撃した。


「誰であろうと私の思想は止めさせない!!私は止まらない!!!誰が邪魔しようと必ず成し遂げてみせる!!!!完全平和を!!!!!」


ミライが次々と繰り出す攻撃を、バルザイの偃月刀でさばきながら、アデルは右へ左へとよけていき、瞬間移動で背後に回った。


『口ではそんなこと言ってるけど、本当は止めて欲しいんじゃないの?』


「何!?」


アンジェから指摘を受けて、ミライは振り向きながらエネルギー弾を放つ。アデルはバルザイの偃月刀で弾いた。


『よく考えてみたら、今までゲイルを生かしてたのだって不自然だよね?』


「それは彼をヴァルハラに迎え入れたかったからで…!!」


『本当にそれだけ?』


アンジェからの問いかけを否定しようとしたミライだったが、再度の質問を受けてミライの動きが止まる。


『確かに自分が助けたゲイルを、自分の背中を追いかけてきてくれているゲイルをヴァルハラに迎え入れたいって気持ちはあったと思う。でも本当にそれだけ?本当にそれだけの気持ちでゲイルを生かしてたの?止まれなくなっちゃった自分を止めて欲しいって気持ちもあったんじゃないの!?』


「黙れぇッ!!!」


ミライはまたも逆上し、瞬間移動を駆使して斬撃とエネルギー弾を繰り出す。


「止めて欲しい!?私はそんなことを思っていない!!思うはずがない!!私はいつでも、私の理想を実現することだけを思ってきた!!今も私は、世界の完全平和だけを!!」


『そんなことない。』


アデルはミライの攻撃をかわし、今度はネリーが語りかける。


『私には見える。あなたの心のずっと奥で、あなたはずっとパパに助けを求めてる。止めて欲しいって願ってる』


ネリーは読心魔術を使ってミライの心を、ミライが本当に願っていることを突き止めた。


「私の心を覗くな!!この化け物めぇぇぇ!!!」


巨大なエネルギー弾を撃つミライ。アデルの正面には旧き印が出てきて、エネルギー弾を防ぐ。だが高威力なミライの攻撃である以上無傷では済まず、旧き印は砕け散った。


『私のことはどんな風に思ってもらってもいい。でも、私はあなたを助けたい。』


「嘘をつくな!!!」


『嘘なんかじゃない!!!』


「!!」


ミライはネリーを黙らせるつもりが、ネリーが見せた激情に気圧されて、逆に黙ってしまった。


『血は繋がってないけど、私はパパの娘。あなたはパパを助けた恩人なんでしょ?なら、私はあなたを助けたい。』


『私だってゲイルの彼女なんだから、どこまでもついていくし、ゲイルがやりたいことなら手伝いたい。そのゲイルがあなたを助けたいって思ってるから、私もその手伝いをするためにここにいるの!!』


ネリーとアンジェ。娘と彼女。ゲイルを愛する二人はゲイルの中から、自分達がいる理由を話す。


「ミライさん。もう、終わりにしよう。こんなことは、もう終わらせるんだ!!」


決着をつける時が来た。アデルはバルザイの偃月刀を消してプライドソウルを呼び出し、ブラスターモードに変化させる。さらにアークスを呼び出してプライドソウルに装着し、エネルギーを込め始めた。


「終わらない…終わらせない…終わるものか!!終わらせてなるものか!!!私は…私はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


ミライもまた、ありったけのエネルギーを集める。


「『『ワールドエンド…!!!』』」


「パラドックスエンド…!!!」


そして、




「「『『ブレイカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!』』」」




アデルはプライドソウルの引き金を引き、ミライは両手を前に向け、互いが持てる力の全てを託した光を解き放った。



二つの光がぶつかり、もはや無量大数を超える数の宇宙が、破壊され、創造されるほどのエネルギーが発生する。多次元にも及ぶ宇宙を巻き込み、異世界さえも滅ぼし尽くさんと荒れ狂う。しかし、この強大な二つの力が目指すべき目的はただ一つ。相手を倒すこと。どちらか片方が倒れぬ限り、この光の照射は止まらない。どちらかがどちらかを、上回らない限り。


これでもなお、両者の力は拮抗していた。余波は宇宙を破壊し、作り直し、消し去り、生み出す。それを何度も繰り返す。それでも決着はつかない。一体何度同じことを繰り返したのかと思った頃、変化が現れる。ミライの攻撃が、少しずつアデルの攻撃を押し始めてきたのだ。クロノクライシスが世界を滅ぼし、ミライの力へと変える機能がアデルのパワーアップを上回り始めたのだ。


「私の勝ちだ!!さあ、滅びなさい!!!」


勝利を確信するミライ。



だがその時、巨大な光線が飛んできて、ミライに直撃した。



「っ!!何だ!?」


光線が飛んできた方向を見る。そこにいたのは、異形。だがミライは、その異形に見覚えがある。


「あれはまさか…エリック!?」


エリックが変身するビャクオウだ。その姿は、ケイオスモードよりなお禍々しいものとなっているため、一瞬何者かわからなかった。しかし、よく見ることで、やはりビャクオウであると確信する。


「ギャラクティックエンドジェノサイダー!!!」


合体砲から再度光線を発射するビャクオウ。その威力はミライにダメージを負わせるには不足だが、自分に注意を向けさせ、アデルに逆転の糸口を作るには十分だった。


「今だ!!」


ミライの注意がビャクオウに向いたことで、パラドックスエンドブレイカーのエネルギーが緩んだ。


「『『はああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!』』」


その隙を突いてアデルはさらにパワーアップ。より威力の高まったワールドエンドブレイカーは、パラドックスエンドブレイカーをかき消した。


「しまっ…!!」


消滅したと思っていたビャクオウの奇襲により完全に油断していたミライは、ワールドエンドブレイカーに呑まれる。


「ぐっ!!うああっ…!!」


光線の照射が終わった時、ミライは変身が解け、吹き飛ばされ煽られて空中で回転していた。バランスを失い、力も失っている。今がミライを倒す最後のチャンスだ。


「今です!!とどめを刺しなさい!!」


アデルにミライを倒すよう促すビャクオウ。


『パパ!行って!』


ネリーはアデルから分離し、衝撃波を放ってアデルを飛ばす。


『ゲイル!!』


アンジェも分離し、吹き飛ばされながらアデルの手を取り、


「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


アデルを投げた。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


ミライはゲイルに止めてもらうことを望んでいた。だから、アンジェとネリーはその望みを叶えるため、ゲイルと一対一で決着をつけさせる状況を作ったのだ。


(ありがとう)


アデルは心中二人に感謝し、変身を解いてゲイルに戻る。未だに体勢を崩したままのミライが、猛スピードで迫る。


「エンドオブ…!!!」


ゲイルは最後の一撃を決めるべく、プライドソウルにエネルギーを込め、


「ぐううっ!!」


こちらに気付いたミライがワルキューレを振るより早く、




「ソウルッッッ!!!!」




ミライの胴を斬った。




「勝ったのは、俺だ…!!」


ゲイルはミライの先にあった岩盤の上へと着地し、プライドソウルを振ってエネルギーを払う。



同時にミライは爆発し、世界は再び光に、真っ白な閃光の中に消えた。











十秒。あと十秒ゲイルがエンドオブソウルを放つのが遅かったら、世界は完全に消滅していた。その前にゲイルがミライを倒したので、世界は急速に再生を始める。ゲイル達の周囲が真っ白なままなのは、まだ世界が完全に復元されていないからだ。


「ああ…終わってしまった…」



気付けばゲイル、アンジェ、ネリー、ビャクオウの四人はすぐそばにおり、目の前にはミライがいた。


「クロノクライシスが破れ、計画が失敗に終わった今ならわかります。私は、止めて欲しかったのだと…」


ミライは、本当は最初から気付いていたのだ。全てを無に還して得られる平和など、間違い以外の何物でもないと。だが間違いだとわかっていてもなお、ミライは平和な世界が欲しかった。その欲望に突き動かされて進み続けた結果、彼女はもう自分の意思では止まれなくなっていた。だから求めたのだ。自分を止めてくれる存在を、自分を追い続けているゲイルを。


「私はあまりに多くの犠牲を払ってしまった。その償いをしなければなりませんね」


と、周囲の風景が変わっていく。これは、クルセイドキャッスルの内部だ。


「私に残された最後の力を使い、この戦いで死んだ者達を、あなた達の仲間を死ぬ前の状態へと戻しました。」


ミライは時間を操れる。その力で、ボーグソルジャーやエボリュータントとの戦いで死んだ者を、死ぬ前の時間に戻したのだ。


「じゃあ、皇魔くん達も!?」


「ええ。彼らも復活しています」


「よかった…!!」


皇魔達も復活しているそうだ。その事実を聞き、アンジェは喜ぶ。


「ですが、あなたと融合した彼女は…」


ビャクオウへと顔を向けるミライ。クロノクライシスによって消滅しかけていたエリックを救い、代わりに消滅しかけていたナイア。エリックは彼女を自身に取り込み、融合することによって救ったのだ。ビャクオウもナイアを憑依させるための器となっており、アデルと同じことができる。今のビャクオウはナイア融合した真最強形態、ケイオスゴッドモードなのだ。つまり、ナイアは消滅していない。眠っているだけだ。いくらミライでも、消滅していない者を復活させることはできない。


「わかっています。」


「…今彼女は休眠状態にあります。私なら目覚めさせることも…」


「無粋な真似はしないで下さい。ナイアはやっと休むことができるのですから、眠らせたままにしておきます。」


ビャクオウは変身を解き、ナイアの復活を拒否した。無理もない。強壮なる従者も、少しは休ませてやらなければ。ちなみに、ミライが皇魔達が死んだことやナイアがエリックと融合したことに気付いた理由だが、前者はクロノクライシスを発動していたからだ。クロノクライシス発動中は、破壊した世界のエネルギーだけでなく、情報も手に入れることができる。それでルーラーがどうなったのか気になり、情報を読み取って知ったのだ。後者は、世界の人々に対して時間の巻き戻しを行ったから。あと、影斗とアプリシィ、アーサーを除くボーグソルジャーやエボリュータントは復活させていない。既に全滅していたし、少しずつでも平和へと歩き出している世界にとって、害悪にしかならないからだ。そして、彼女自身も。


「ミライさんの身体が…」


ネリーはミライが少しずつ消滅していっているのに気付いた。残り少ない力を強引に使った代償だ。また、ミライ自身が望んでいたからでもある。


「この世界に私の存在は必要ありません。だから、消えることにします。真の平和を作れる人材が、目の前にいますしね。」


自分も消えようとするミライ。


「ゲイル。」


アンジェはゲイルを見た。


「…俺は、あなたに救われた身でありながら、あなたのことを何も知らない。」


ゲイルはミライに、自分の想いを話し始める。


「もっとあなたのことを知りたかった!ヴァルハラの盟主ミレイヌではない、赤石ミライというあなたを!」


もっと違う出会いをしていれば、こんな別れ方はしなくて済んだかもしれない。だが、彼女に救われなければ、ゲイルはきっとこうして生きていることもなかっただろう。


だから、礼を言う。


「あの時、俺を救ってくれてありがとう。俺は、あなたを忘れない!!」


礼を言って、ミライを抱き締めた。


「…礼を言うのはこちらの方です。あなたのおかげで、私は取り返しのつかない過ちを犯さずに済んだ。やはりあの時、あなたを助けたのは間違いではなかった。」


ミライは涙を流して、ゲイルから離れる。そして、


「ありがとう、ゲイル。そして…さようなら…」


ミライは消滅した。光の粒子となって、穏やかな微笑みを浮かべながら。


「…ちょっと妬けちゃうな。でも、仕方ないよね。ミライさんは、ゲイルの生き方を変えた人だから。」


アンジェは笑いながら、少し複雑な気分だった。だが、ミライはゲイルの生き方を決定付けた女性。ゲイルにとって、思い入れが強いのもわかる。


「確かにそうだ。だがな…」


「ん?わっ!」


ゲイルはアンジェを抱き寄せ、


「俺が愛を誓う女は、お前だけだ。」


笑って口説き、キスをした。アンジェは顔を赤くして驚いていたが、すぐ二人して目を閉じ、深いキスへと移った。それを見ていたエリックは、片手でネリーの視界を塞ぐ。


「エリックさん?」


「子供は見なくていいんです。」


少しは空気を読んだようだ。しかし、一人だけ空気を読んでも無意味だということを知る。


「ゲイル!!アンジェちゃん!!エリック!!大じょ…う…」


「どうしたの狩谷…って二人とも!?」


飛び込んで来た狩谷が硬直し、同じく飛び込んできた空子はキスシーンを見て赤面した。二人は全身の負傷が回復している。ミライがきっと治してくれたのだろうが、これにはゲイルとアンジェも驚き、口を離す。エリックはやれやれと首を横に振っていた。と、


「あ~…邪魔したか?」


影斗も来た。


「木林影斗!?」


身構えるエリック。狩谷と空子も臨戦体勢だ。三人は影斗が味方になっているということを知らない。


「みんな、大丈夫。この人は味方」


なので、ネリーが事情を説明した。


「マジかよ…」


「悪いがマジだ。で、お前らどうするんだ?オレはちょっと行きたい所があるんだけどよ。」


「奇遇だな。俺達もだ」


影斗は行きたい所があると言い、ゲイルも行きたい所があると言った。そして、全員が頷き、ゲイルが言う。


「帰ろう。ヘブンズエデンへ!」











消滅したはずのミライは、一人真っ白な空間を歩いていた。


「ここは…?」


自分がどこにいるかわからず、ただ歩き続けるミライ。と、誰かがいるのが見えた。


「あなた達は…!!」


ミライは驚く。


「お待ちしておりました、ミレイヌ様。いや、今はミライ様と言うべきですかな?」


四人を代表して、一人の髭面の大男が言う。そう、彼らは三将軍とフィスだ。


「ネイゼン!ゴーザ!マヴァル!それにフィス!あなた人間の姿に…!」


「またこの姿をお見せできて嬉しいですよ、ミライ様。」


「あなた達どうして…それにここは?」


「それがわからんのだ。わからんから進んでみようと思うのだが、この四人がそなたが来るから待って欲しいとうるさくてな。」


「ルーラー殿!?」


なんとルーラーまでが、イズマとウォント、コレクにメイカーを連れて現れた。


「我々は、あなた様の将軍でございます。」


「何なりとご命令を。どこへでもついていきます」


ミライに忠誠心を見せるマヴァルとゴーザ。


「…わかりました。では、行きましょう。」


「「「「はっ!!」」」」


ミライは決心し、四人を連れて歩く。


「首領。我々も…」


「ああ。行こう」


イズマとルーラーも歩き、


「さて、何が待つことやら…」


「楽しみですな。」


コレクとメイカーも行く。


「…元気でな、アプリシィ。」


最後にウォントが続いた。




彼らはどこへ行くのか、それは誰にもわからない。だが、彼らはいずれも穏やかな顔をしており、生きていた頃の剣呑さは欠片もなかった。











ゲイル達はヘブンズエデンにたどり着いた。そこには既に皇魔達がおり、また旧神達も復活して待っていた。他の訓練生や教師陣も、激戦を勝ち抜いた者達を祝福してくれた。ゲイル達の予想通りというかなんというか、皇魔達は自分達が生きていることにかなり驚いていた。アーサー曰く、死んだはずなのにいつの間にか傷が綺麗さっぱり消えて、生き返っていたのだという。


旧神達は、復活したはいいものの、ネリーを守るため、あるいは自分の身を守るために力を使い果たしたのは事実であり、回復のため休眠期間に入る必要があるらしい。恐らく、ミライに残された力では自身を消滅させるような無理をしても、神の力を回復させるのは無理だったのだろう。とにかく、少なくとも数年は地球に干渉できないそうだ。


「ネリーお嬢様。どうかお元気で…」


クタニドはネリーと地球の平和をゲイル達に、今を生きる人間達に託して宇宙や異空間に帰っていった。クトゥルフのように地球に残った神もいるが、やはり休眠期間は必要で、何よりネリーからもう悪さをしないよう言われているため、何の心配も必要ないだろう。こうして地球はあらゆる脅威から守られ、後に第三次世界大戦と呼ばれ伝えられることになる戦いは終結した。











その後の顛末について少し語ろう。ヴァルハラやデザイアとの過酷な戦いに勝利したゲイル達は、以降特に大きな事件に遭遇することもなく最後の一年を過ごし、ヘブンズエデンを卒業した。それから三年後…



光輝とさだめは結婚し、倦怠期知らずの幸せな家庭を築いた。そのラブラブっぷりは圧倒的で、周囲にいる人間が軽く引くぐらいらしい。一方二人と因縁を持つアプリシィは、戦いが終わった後行方不明になった。どこで何をしているのか定かではないが、二人の結婚式には顔を出したし、度々手紙も届いているので、生きてはいるようだ。



皇魔は亡き父、剛造の跡を継ぎ、鬼宝院グループの社長になった。会社の者からは有望な新社長として信頼され、実績を伸ばしつつある。ただ平和な世界においても鍛練は欠かしておらず、剛造並みの無茶もするので、やはり親子の血は争えないようだ。



レスティーは皇魔から薦められ、皇魔の秘書となった。霊宮寺の当主について勉強するのと両立させる形だが、本人は非常にやりがいを感じており、苦にはしていない。たった一人残った肉親である照姫をとても心配しているが、照姫はそれを嬉しく思いつつも、現当主としての貫禄を見せ、まだまだ当主の座は譲らないと公言している。



狩谷は小さな孤児院を開き、学生時代からの夢を叶えた。しかしたくさんの孤児の面倒を見る以上狩谷一人では手が足りないので、空子が住み込みで協力しており、シュリュズベリィ教授が援助してくれている。光輝とさだめが結婚したのを聞いて以来、狩谷と空子は近々結婚を計画しているとのこと。



メイリンと室岡はまだヘブンズエデンの教師を続けており、交際関係も継続しているが、なかなか関係が進展せず、メイリンは少しモヤモヤしている。室岡はそんな彼女に振り回されっぱなしだが、まぁ楽しそうだ。



エドガーは室岡やメイリンと同じく、ヘブンズエデンの理事長を続け、様々な研究に勤しんでいる。彼はオリジナルではなくアンドロイドであるため、今後はオリジナルが死んだことも欺き続けなければならないが、アーサーという優秀な秘書がいる限り何の問題もないだろう。



木林影斗はアプリシィと同様、行方知れずとなった。こちらも何をしているのか、何を考えているのかさえわからない。こちらは関係者も血縁者もいないので、本当にわからない。まだ生きているかもしれないし、もう死んだのかもしれないが、この手の人間はしぶといのでただでは死なないだろう。



エリックは貯めていた金を使い、地図にも載らないような小さな無人島を買ってそこに住み、一人静かな生活を送っている。自分も少し疲れたので、自分の中にいるナイアと一緒に休養をとるとのことだ。裏社会ではそれなりの額の懸賞金が彼の首にかけられており、時々彼の命を狙う刺客が乗り込んでくるのだが、いい暇潰しになると称して返り討ちにしている。





そして、ゲイルとアンジェ、ネリーの三人は…。











「ん~…」


ネリーは起床し、眠い目をこすりながら着替えて、部屋を出た。


「おはようネリー。」


キッチンにはアンジェがいて、料理を作っている。


「おはようママ。パパは仕事?」


ネリーはアンジェに挨拶しながら、リビングのテーブルにつく。


「うん。ちょっと長丁場になるって」


「そう…」


スクランブルエッグを作って持ってきたアンジェは、テーブルに並べる。ネリーは三人で一緒に朝食を食べられないのが、少し残念そうだ。


「でも今日の夕方には帰ってこれるって。」


「本当?」


「うん。だから早く学校に行って、早く帰ってきなさいね?」


「うん!」


夕方にはゲイルが帰ってくることを聞き、ネリーの顔が輝いた。まだ表情が弱い彼女だが、四年前よりはずっといい。


「行ってきます!」


「行ってらっしゃい!」


アンジェはネリーを、学校へと送り出す。


「…さて、そろそろ開店準備しなくちゃ!今日はゲイルがいないから、私一人で頑張らないとね!」


それから、店の開店に取り掛かる。



ゲイル達三人は、とある目的のために便利屋を開いた。ゲイルの両親は彼の目的に、彼に妻と娘ができていたことに驚いたが、快く了承し、彼ら三人が一緒に住むこと、便利屋という危険な仕事に取り組むことを許可してくれた。


店の開店を終えたアンジェ。事務所の机にある電話に、早速今日一本目の依頼が来た。アンジェは受話器を取って店の名前を言い、用件を訊く。


「はい、『UDELアデル』副店長のアンジェ・プライドです。本日はどういったご用件でしょうか?」





ここは東南アジアのどこか。ここにある基地は、現在多数のヘルポーンと交戦状態にあった。


「隊長!!ここはもう駄目です!!基地を破棄して撤退しましょう!!」


隊長の部屋に兵士が飛び込んできて、基地からの撤退を進言する。だが直後、先ほど隊長が見ていたレーダーに反応が現れた。


「いや大丈夫だ。彼が来てくれた」


その頃、外ではゲイルがプライドソウルを振るい、ヘルポーン相手に大立ち回りを演じていた。この四年で彼はさらに腕を上げ、もはやヘルポーンごとき相手にはならない。瞬く間に全滅させる。


「ちぃ!奴が来たか…ならあいつを出せ!改造の成果を見せてやるんだ!」


ヘルポーンを操るテロリストのリーダーは、部下に命じてある男を出す。男はゲイルの目の前に躍り出た。


「貴様がゲイル・プライドだな!?四年前の英雄だか知らんが、ぶっ殺してやる!!ウオオオオ!!!」


男は咆哮を上げると、怪物に変身した。


「ボーグソルジャー、か…」


ゲイルは呟く。ヴァルハラは確かに壊滅したが、ヴァルハラは多くの組織と同盟を結んでいた。その組織に残されていたヴァルハラのデータが、あちこちで悪用されているのだ。


「いいだろう。あの人が遺したものを、これ以上悪用させはしない!!」


断じて破壊する。その決意を込めて、ゲイルは唱えた。



「アデル、起動!!」



顕現するのは、数多の悪を震え上がらせてきた最強の戦士。鋼の邪神、メタルデビルズ・アデル!!


「はあっ!!」


「がああああああ!!!!」


アデルはボーグソルジャーに一瞬で接近し、プライドソウルの一撃で倒した。だが、敵はまだまだ残っている。


「怯むな!!撃ち殺せ!!」


テロリストのリーダーが命令し、アデルを攻撃する。


(こいつらだけじゃない)


かつてミライの気持ちを利用して踏みにじり、アザトースだった頃のネリーを暴走させた謎の男。そいつを捜し出すことが、便利屋を開いた理由だ。しかし、今は目の前の悪を滅ぼすことが先決である。




目の前には敵の海。目的を果たすまで、どれだけの時がかかるかわからない。それでも、恐れることはなかった。そうだ。恐れるものか!俺はもう、一人じゃないんだ!



「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」



アデルは、ゲイルは決意し、プライドソウルを振り上げて突撃していった。






皆さんどうも!この度は本作品を最後まで読んで下さり、ありがとうございました!



いろいろと謎を残しましたが、これでゲイル達の物語はひとまず終わりです。自分が想い描くヒーローの姿をいろいろと書いてきましたが、楽しんで頂けましたか?楽しんで頂けたなら幸いです。楽しんで頂けなかったなら、次回作にて精進します。次回作は本編での伏線通り、第三次世界大戦から五年後の物語となります。ゲイル達が守った世界の未来で、新たなヒーローが新たな戦いを始めます!作品名は、『聖神帝レイジン』です。近日公開の予定ですので、お楽しみに!



最後に重ね重ね、今作品を読んで下さったことに感謝を申し上げます。本当に、ありがとうございました!!次回作聖神帝レイジンにて、またお会いしましょう!!


それでは!!

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