第四十九話 光神vs狂戦士
今回で、ベルセルクとの戦いに決着がつきます。
「タイラントユニットの完成よ。」
クルセイドキャッスルのラボにて、フィスは完成した影斗専用の新装備を見せて言った。
「これとあなたに新しく搭載したあのシステムさえあれば、理論上間違いなくメタルデビルズに勝てるわ。あとは…」
「わかってますよ。」
影斗はそれ以上言わせなかった。理論を現実のものとできるかどうかは、影斗次第。
「この戦いに勝てたら、今度こそあなたをトップソルジャーに任命します。頑張ってね」
フィスは期待を込めて、影斗のそばから去っていった。
「…勝つ。今度こそお前らを倒してやる!!」
決意する影斗。間もなく彼は、最強の敵を倒すために出撃していった。
*
バレンタインデーの騒動から数日後。今日は授業がないということで、ゲイルとアンジェはネリーとナイアを連れて外出していた。アンジェはゲイルに訊く。
「そういえば、家族全員で遊びに行くのって初めてだっけ?」
「そうだな。少し前までは、こんなことになるなんて想像もできなかったが。」
それは想像できる方がおかしいだろう。
「迷惑だった?」
ネリーは訊く。結局のところ、二人を大きく引き合わせるきっかけとなったのは彼女なのだ。だから、
「そんなわけないだろう。」
「私達が一緒に生活できるのはネリーのおかげなんだよ。それにナイアさんも、いつもネリーを守ってくれてありがとうございます。」
「執事として当然のことをしたまでさ。」
アンジェに礼を言われて、ナイアはどこか誇らしげに答えた。
その時、
「よお。しばらくぶりだな、お前ら。」
突然何の前触れもなく、あの男が現れた。
「お前は…!!」
「木林…影斗…!!」
驚くゲイルとアンジェを目の前にして、影斗は鼻を鳴らす。
「ふん、先にお前らと出くわしたか。オレとしては面倒なエリックの方から先に片付けたかったんだが、この際お前らが先でも構わねぇ。今回こそは死んでもらうぜ」
「待て木林!!ここで戦うつもりか!?」
「そうだよ。戦うと決めたらどこでも戦場になるってのが、オレ達傭兵の常識だろうが。忘れてんじゃねぇよ」
「くっ…!!」
ゲイルも忘れていたわけではない。だが、ここは街中だ。このまま戦えば大勢死人を出すことになる。
「心配はいらない。」
と、いきなりナイアが手をかざした。すると、街中の人々が全員消える。
「空間魔術さ。誰もいない空間を作って、そこに飛んだ。ここなら周りを気にせずおもいっきりやれるよ。」
「ナイアさんすごい!」
咄嗟に空間魔術を使ったナイア。これなら確かに、周囲の被害を気にする必要はない。アンジェはナイアを褒める。
「余計な真似しやがって…まぁいい。スタイルコンバート」
舌打ちしてベルセルクに変身する影斗。
「アンジェ、俺一人では勝てない。力を貸してくれ」
「うん。」
ゲイルとアンジェは互いに手を取り、詠唱する。
「「エルピスシステム起動!!コード・アインソフオウル!!!」」
ゲイルとアンジェは、アデル アインソフオウルモードに直接変身した。
「いきなりそれを出しやがるとはな…わかってるじゃねぇか。オレはそいつと戦りたかったんだよ」
ベルセルクは強い。他のボーグソルジャーやエボリュータントなどとは、比較にならないレベルだ。だから、最初から全力で行く。そしてそれは、ベルセルクも同じだった。
「じゃあオレも、新装備の御披露目と行くか。」
「何?」
「タイラントユニット!!」
ベルセルクが言うと、背中にウイングが出現し、装着された。新装備、タイラントユニットである。超高速戦闘を可能にする飛行ユニットで、ベルセルクにある機能を追加する。
「…ナイア、ネリーを逃がしてくれ。どうも守りきれそうにない」
「わかった。ではお嬢様、今からあなたを外に飛ばします。先に寮に戻っていて下さい」
アデルに言われて、ナイアはネリーに顔を向け、寮の鍵を渡す。
「…」
だが、ネリーは鍵を受け取らず、顔を背けた。
「申し訳ございませんが、私はこの空間を維持するために残らねばなりません。ご心配なさらずとも、私達は必ず戻りますよ。」
「…わかった。」
ナイアはネリーを安心させようと声をかけた。すると、ネリーは渋々ながらも納得し、鍵を受け取ってナイアの転移魔術で外の空間へと飛ばされる。
『…ネリーが珍しくナイアさんの言うこと聞かなかったね。』
「心配だったんだろう。俺達が奴に勝てるかどうか」
ネリーは感受性が強い。だから、本能的に察したのだ。あのタイラントユニットという装備を得たベルセルクの、強さと恐ろしさ。父と母、執事でも勝てるかどうかと不安を感じて。それだけ、ベルセルクは強くなったということなのだ。
「加勢は?」
「必要ない。この空間を維持することだけ、考えてくれ。」
『もし私達が負けたら、後はお願いします。』
「…ああ。」
「どうした?来ないならこっちから行くぜ!!」
ベルセルクは背中のタイラントユニットのブースターを点火し、猛スピードで襲い掛かってきた。その速度、マッハ320。
『くっ!』
だが、アインソフオウルモードとなったアデルなら、容易く見切れる速度だ。アンジェの瞬間移動を使ってかわし、ベルセルクの一撃は空をきる。
「まだまだァッ!!」
しかし、ベルセルクは逃げたアデルを見つけて追ってきた。今度はさらに速い。
「ぐぅっ!!」
アームズベルセルクの一撃を、プライドソウルで受け止める。タイラントユニットには強力なエネルギージェネレータが搭載されており、そこからエネルギーを供給することによってベルセルクのパワーをも増強する。さらには、
「これでどうだ!!」
ベルセルクが一度離脱すると、タイラントユニットが外れ、ベルセルクはその上に乗った。
「分離した!?」
タイラントユニットはユニットと名が付く通り、ベルセルク本体と分離して飛行ユニットとしても使えるのだ。そして、これ自体にも一秒間に十万発撃てるレーザーバルカンが搭載されているので、手数が増える。ちなみにベルセルクが接してさえいればエネルギーは供給できるため、分離したからといって弱体化したとは言えない。
「ひゃはははは!!!喰らえ喰らえーっ!!!」
レーザーバルカンとベルセルクボムで弾幕を張ってくるベルセルク。アデルもダゴンとヒュドラを装備し、シャイニングフェザーストームを併用して使い、ベルセルクの弾幕に対抗する。
「うぉらっ!!!」
再度繰り出されるアームズベルセルクの一撃をかわすアデル。だが、ただかわすわけではない。
「ルルイエセメタリー!!!」
「ぐおっ!!!」
かわしざまに必殺技を放つ。ベルセルクは吹き飛ばされたが、タイラントユニットが自動で飛来し、地面に激突する寸前のベルセルクを回収した。
「やるじゃねぇかよ!だがなぁっ!!まだまだまだまだァァァ!!!」
また襲い掛かってくるベルセルク。それを迎撃するアデル。確かにベルセルクは大幅なパワーアップを遂げたが、それでもまだアデルの方が全てにおいて凌駕している。しかし、
『…な、なに…?』
アンジェは何かを感じ始めていた。
「どうしたアンジェ?」
アデルが尋ねる。
『木林影斗が変なの。なんていうか、さっきよりもテンションが高くて、それに伴ってどんどん強くなっているような…』
「ハハハハ!!死ねぇぇぇぇ!!!」
アンジェが言った直後、またベルセルクが襲ってきた。繰り出されたアームズベルセルクの刺突をプライドソウルで受けるが、受けきれない。
「ちぃっ!!」
仕方なく武器をチャウグナルファングに替えて応戦する。言われてみれば、ベルセルクの力は戦闘開始時に比べ、確かに上昇していた。プライドソウルで防げたはずの攻撃を、パワー増強効果のあるチャウグナルファングで止めなければならないほどだ。
「てめぇらの力はそんなモンか!?もっと気合い入れろよ!!じゃねぇとオレが楽しくねぇだろうがぁっ!!!」
加えて、ベルセルクの精神もかなり高揚している。いつもなら気にしなかったことだろうが、今回ばかりはさすがに異常だ。こんな勢いで強くなるなど、おかしいとしか思えない。何か原因があるとすれば、それはほぼ間違いなくタイラントユニットだろう。気になったアデルは瞬間移動で距離を取り、ベルセルクに尋ねた。
「お前、自分に何かしたな!?」
「ああ?」
「俺の予想が正しければ、そのタイラントユニットは普通の能力向上ユニットじゃない!何かもっと、お前の精神にも影響するようなものだ!そうじゃないのか!?」
「なかなか鋭いじゃねぇか。」
アデルの予想は合っていた。ベルセルクはタイラントユニットに搭載されている、真の機能について説明する。
「タイラントユニットは使用者の闘争本能と破壊衝動に応じて、戦闘力を無限に上昇させる。」
これが、タイラントユニットの真価だ。使用者の闘争本能と破壊衝動に応じて無限に強くなる。アデルとビャクオウに対抗するような形で付けられた機能である。ベルセルクの精神が高揚し能力が急激に上昇したのは、これが原因だったのだ。ただ、これには副作用が存在した。オーバーロード現象のことだ。ベルセルクにもやはり、オーバーロードは存在する。タイラントユニットは装着すると、ベルセルクのオーバーロードによる強制変身解除が起きなくなってしまうのだ。正確に言えばオーバーロードは起きているが、強制変身解除機能が停止してしまうのである。だが強制変身解除は、いわば安全装置。オーバーロードが長く続けば、負担がかかりすぎて最悪死んでしまう。恐るべき欠陥を抱えた機能だった。
「だがそれだけじゃねぇ。ブレイクパワーシステム、発動!!!」
さらにベルセルクは、新たな装置を発動させる。その装置が発動するとベルセルクの全身から、禍々しい緑色の光が溢れ出した。
「使用者が生み出し使えるエネルギーの量と出力を限界を超えて引き出すことで、能力を数千倍に向上させるシステム、ブレイクパワーシステムだ。」
これこそ、ベルセルクの真の切り札、ブレイクパワーシステムである。このシステムが搭載されているのはヴァルハラの中でも、大将軍ネイゼンとトップソルジャーフィスのみ。理由は、システムの負担があまりに大きすぎるため、素体が強力な者にしか搭載できないからだ。フィスがソルジャースタイルから人間に戻れなくなったのも、これを搭載した副作用である。マヴァルは老人で、ゴーザは訓練などしたこともなかった。結果、ボーグジェネラルに改造される前から将軍として戦い続け、己を練磨していたネイゼンのみが、現在ブレイクパワーシステムを100%使えるのだ。ちなみに、ミレイヌには別の理由で搭載されていない。これほど危険なシステム、本来ならベルセルクにも搭載されるはずはなかった。だが、タイラントユニットだけでは勝利できないとフィスは感じており、そのフィスから話を聞いた影斗本人の希望で、搭載される形となったのだ。
『そんな危ないシステムまで使って私達に勝ちたかったの!?』
「ああそうだよ。オレより強い相手がいるってのは許せなかったし、何よりオレはもっと戦いたい。それを邪魔する最大の障害は、お前らなんだ。」
タイラントユニットとブレイクパワーシステム。本当はこの二つを同時に使えば、システムが暴走して即死する可能性さえあった。だが影斗は迷わず、この力を掴み取った。アデル達を倒したい一心で、である。
「さあ始めようぜ!!これ以上の言葉は必要ないはずだ!!」
もはやベルセルクにとって、言葉は不要。いつまで今の状態を維持できるのかわからないし、話している時間さえ惜しかった。
「…やるぞ、アンジェ。」
『ゲイル?』
「奴は命を捨てる覚悟で戦っている。こちらも命を捨てる覚悟で戦わなければ、絶対に勝てない!!」
もうアデルとベルセルクの力の差は、逆転してしまっている。だが、それでも負けるわけにはいかないのだ。力の差が離れた相手を倒す方法は、想いの力。覚悟の差だ。
『…わかった!!』
「『イグニスドライブ!!!』」
アインソフオウルモードでのイグニスドライブは、長時間は維持できない。だが、こうしなければ勝てないのだ。
「行くぞ!!」
両者は、譲れない想いを抱えて激突した。
*
「この辺り…なのよね?」
空子は街を見渡した。
「ああ。だが…」
狩谷の手の中には、黄の印。今黄の印は強く発光し、脈動している。空子とデートを楽しんでいた狩谷は、途中で黄の印が強い反応を示したため胸騒ぎを覚え、二人で反応源を探しに来たのだ。反応源はこの辺りのはずなのだが、何も起こっている様子はない。
そこへ、
「狩谷さん、空子さん。」
ネリーが来た。
「ネリーちゃん!」
「ゲイルとアンジェちゃんはどうしたんだ?それに、ナイアさんもいねぇし…」
「…」
ネリーは、今起きていることを二人に話す。
「木林影斗が!?」
「なるほど…俺の黄の印は、ナイアさんの空間魔術に反応してるのか…」
木林影斗の襲撃。ゲイルとアンジェ、ナイアは影斗を迎撃するため、ナイアが作った特殊空間の中で戦っている。
「でも、どうすればいいの?どうやったらナイアさんが作った空間の中に…」
「俺の黄の印でも、そこまで複雑な魔術は使えねぇからな…」
空間に穴を開けるなんて装備を空子は持っていないし、黄の印でも空間を操作するような大掛かりな魔術は使えない。
「行っちゃ駄目。」
何より、ネリーが止めようとしてくる。
「あの人、前に見た時とは比べものにならないくらい強くなってた。それに、なんとなくわかるの。中に入ったら、きっと大変なことになる。」
影斗は、ベルセルクはネリーが恐怖を感じるほど強くなった。それだけでなく、言い知れない感覚がネリーを襲っていた。
だが、
「心配には及びません。私がいますから」
そこにエリックが現れた。
「エリック!どうしてここに!?」
驚く空子。エリックは答えた。
「私はある程度、ナイアと感覚がリンクしています。それで彼女の力を感じて来たんですよ」
エリックはナイアが憑依するための器でもある。ゆえに、ナイアともある程度は感覚が疎通できる。再改造を受けてからはそれがより顕著となり、彼女が力を使えばより正確に居場所がわかるのだ。
「私は今からゲイルに、ナイアに加勢しに行きます。同行したければご勝手に」
「いやお前、行き方とかわかんのかよ!?別の空間にいるんだぜ!?」
「空間魔術を使えば済む話なのでしょう?」
エリックは何もない空間に手をかざし、
「魔術の原理など二日で理解しましたよ。」
穴を開けた。空間魔術を使ったのだ。自分の体内に輝くトラペゾヘドロンを融合された後、エリックは熱心にナイアから魔術の手解きを受け、たった二日で原理を解明してしまった。輝くトラペゾヘドロンは黄の印よりも優れた魔術媒体で、同じく念じるだけで魔術が使える。だが、複雑な魔術を使うには使用者の技量も必要だ。それをいとも容易く、エリックは成し遂げてしまった。これにはナイアも驚いていた。
「もうこいつやだ…」
空子は呟く。どこまで化け物じみているのか。
「エリックさん」
「心配無用と言ったはずです。我々も傭兵ですから、多少のことでは動じませんよ。」
なおも止めようとするネリーをあしらうエリック。仕方なくネリーは、
「…気を付けて。」
と言った。
「ええ。」
エリックも穴に飛び込む。
「あっ!くそっ!悪いネリーちゃん!俺ら行くわ!」
「絶対戻ってくるから、安心して待っててね。」
エリックを一人で行かせるわけにもいかず、狩谷と空子も飛び込み、それと同時に穴は閉じた。どうすることもできずに立ちすくむネリー。ナイアに帰れとは言われたが、中にいる者達が心配で帰れない。彼女なら中に戻ることは可能だが、ゲイルとアンジェを困らせたくないので、それもできない。
そんな時だった。
「そこに何かあるの?」
彼女の後ろから、仮面とドレスを着用した女性が、大男と青年、老人を連れて話し掛けてきたのは。
*
「いや~、あの子ら本当に人間なのかね?」
ナイアは繰り広げられる激闘を見ながら言った。本来なら、余波で地球が太陽系もろとも消し飛んでいるレベルの戦いだ。だがナイアが作った空間は、銀河を十個破壊されるような規模の攻撃にも余裕で耐えられるほど頑丈だ。今は空間を維持しつつ、破壊された建物の修復など、舞台を演出する作業を行っている。こんな状況で舞台演出にこだわるとは、さすが這い寄る混沌といったところか。
「!」
と、彼女は気付いた。何者かが、自分が作ったこの空間に干渉し、入り込んでくる。
(この感覚…エリックか)
そう思った時、空間に穴が開いて、エリック達が入ってきた。
「やあ。わざわざこんな所に来るなんて、ご苦労なことだね。それとも友情、かな?」
「ナイアさん!」
「ゲイルとアンジェは無事なの!?」
到着早々に状況を確認する狩谷と空子。ナイアは戦っているアデルとベルセルクを見て言った。
「いい勝負をしてるよ。いざって時は加勢しようかとも思ったけど、必要なさそうだね。」
彼女が見る先では、アデルがベルセルクの攻撃をかわし、バルザイの偃月刀で的確な一撃を当てていた。確かに、互いの力の差は拮抗しているようだ。
「それより、君がボクの空間に干渉したのかい?こんな短時間で空間魔術まで習得するとは、ボクに次ぐ天才といったところかな。」
「大したことはありませんでした。」
「…そうかい。まぁ空間操作の魔術は、ボクの得意分野じゃないからね。ヨグ=ソトースならもっとまともなのを作れたんだろうけど」
狩谷と空子は思った。これだけの空間を作っておいて得意分野じゃないとか、ヨグ=ソトースはどんな空間を作れるんだ、と。
(何でだ!?)
ベルセルクは戦いながら、疑問を感じていた。
(何で勝てねぇ!?)
実力のは自分が遥かに上回っているはず。それなのに、攻めきれない。アデルを仕留められない。一方アデルは、さらに力を増してきている。自分を凌駕する速度で。
「ちっ!!」
ベルセルクがアームズベルセルクの石突でタイラントユニットを叩くと、叩いた場所が開いてクロー付きガントレットが飛び出してきた。ベルセルクはそれを右腕に装着し、エネルギーを込め、タイラントユニットを加速させてアデルに突っ込む。
「タイラントブリンガァァァァァァァァ!!!」
アデルも負けじと拳にエネルギーを込めて殴る。
「『アクセラレーションパァァァァァァァァンチ!!!』」
アデルの拳はベルセルクの拳を押し返し、瞬時にエルダーサインブーストを発動。武器を弓に変化させたアークスに切り替え、
『プラチナアローシューティング!!!』
光の矢を放つ。
「ぐわああああああああああ!!!」
吹き飛ばされたベルセルク。
「まだだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
怒るベルセルクは、アームズベルセルクにエネルギーを集中する。アデルもブラスターモードに替えたプライドソウルとアークスを合体させ、エネルギーを集中。
「オーバーキラーシュート!!!!」
「ワールドエンドブレイカー!!!!」
ぶつかり合う力と力。互いの技の威力は完全に互角。そう、互角なのだ。
(何でこいつらはここまで強い!?愛とやらか!?絆とかいうやつが、こいつらにここまでの力を与えてやがるのか!?)
意味がわからなかった。限界を突き詰め、限界を超えて強くなったはずの自分に、明らかに凌駕しているはずの自分に、アデルは食らい付いてきている。そこで、ベルセルクは考えてみた。奴らは何のために戦っているのか、と。
「何でだ…何でお前らはそこまで必死になって戦おうとする!?なぜ…一体なぜ!?」
考えてもわからず、ベルセルクは疑問を投げ掛けた。
「俺達には、負けられない理由がある!!果たさなければならない使命がある!!」
『守らなきゃいけない人がいる!!だから私達は…』
「『絶対に負けない!!!』」
「!!!」
その言葉に、ベルセルクは思い知らされた。彼らの後ろには、常に負けられない理由があるのだ。一歩でも引いたら、その理由が傷付く。それはきっと、彼らにとって自分が傷付くよりもずっとつらいこと。
(オレは、どうだ…?)
そこでベルセルクはまた考えた。自分には、そんな理由があるのか?と。ない。自分はただ、戦いたかっただけだ。己の全てをもて余していた彼は、それを戦いで発散するためにヘブンズエデンに入学した。彼らのように、大きな志があって入学したわけではない。
(オレとあいつらには、決定的な覚悟の差がある)
それに気付いた時、
(勝てなくて当然だ)
ベルセルクの技は押し負け、
(負けても…仕方ない…)
アデルの必殺技に呑み込まれていた。
「勝負は決まりましたね。」
エリックの目から見ても、勝敗は明らかだった。あれほど強化されたオーバーキラーシュートを打ち破れるほどのワールドエンドブレイカー。それをまともに受けたのだ。いくらベルセルクでも、戦闘不能だろう。アデルもまた、イグニスドライブを解除した。
だがその時、
「…ん?」
ナイアが何かに気付いた。
「どうしたんだ?」
狩谷が訊く。
「…また誰かが空間に干渉してきた。」
また何者かが、ナイアが作った空間に干渉してきたのだという。そしてその何者かは、近くの建物の上に姿を現した。
「あれは…ミレイヌ!!」
「三将軍までいやがるぜ!!」
空子と狩谷は驚いた。なんと現れたのは、ミレイヌと三将軍だ。しかも、
「『ネリー!!』」
アデルが驚いた通り、ミレイヌはネリーを抱き抱えていたのだ。
「お嬢様!!貴様…お嬢様に何をした!!」
これにはナイアも大激怒。しかし、ミレイヌは全く動じていない。
「あなたがナイアルラトホテップですね?ここに来たがっていたので、連れてきました。」
「木林影斗、よくやったな。お前のおかげでアデルは満身創痍よ」
「フィスの希望通り、貴様を新たなトップソルジャーに任命しよう。」
ネイゼンとマヴァルがそう言ったのを、ベルセルクは黙って見ている。ゴーザもまた、沈黙を保っていた。
「ネリーを離せ!!」
アデルはプライドソウルをアサルトモードに変化させてアークスを分離させ、アークスも剣に変化させてミレイヌに斬りかかる。
「「「スタイルコンバート」」」
ジェネラルスタイルに変身する三将軍。まず飛び掛かってきたのは、ゴーザ。
「『どけぇぇぇぇぇぇ!!!!』」
アデルはゴーザが繰り出す四本腕の剣撃を一瞬でさばき、ゴーザを蹴り飛ばした。
「クリスタルランサー!!!」
マヴァルのクリスタルの弾幕も全てをかわし、マヴァルを斬りつけた。最後にネイゼンの拳も弾き、頭を踏み台にしてさらにミレイヌに接近。今度こそ斬りかかった。
「!!」
ネリーを抱いたまま片手を出すミレイヌ。かつて洗脳されたアンジェの動きを封じた、あの技だ。しかし、今のアデルの力はあの時のアンジェの数千倍。容易く脱出できる。
「…素晴らしい。」
呟いたミレイヌはネリーを横に放り投げ、ワルキューレを出現させてアデルの攻撃を受け止める。すかさずナイアが瞬間移動し、ネリーをセーブした。
「お嬢様、大丈夫ですか!?」
「うん。」
ネリーは無事らしい。
「くっ…」
「ミレイヌ様!!」
「今参ります!!」
助けに入ろうとする三将軍。しかし、ゴーザに狩谷が、ネイゼンにビャクオウが、それぞれ斬りかかり、空子がギガトラッシュとライフイーターで銃撃してそれを阻んだ。
「てめぇの相手は俺だ!!」
「二人の所へは行かせないわ!!」
「あの時の借りを、返すとしましょう。」
狩谷と空子は力強く言い放ち、ビャクオウはケイオスモードに変身した。
アデルとミレイヌの戦いは、アデルの方が優勢だった。
「行けるぞアンジェ!!」
『うん!!今日こそミレイヌを倒そう!!』
ワルキューレの斬撃も、エネルギー弾も、今のアデルには全く効かない。
「くっ!」
ミレイヌには、アデルの攻撃をかわすことしかできない。
「決めるぞ!!」
再度プライドソウルとアークスを合体させるアデル。エネルギーを込め、
「『エンドオブソウル!!!』」
ミレイヌに全力で斬りかかった。その瞬間、ミレイヌは一歩下がり、アデルの必殺技を間一髪でかわす。だが、エンドオブソウルはミレイヌの仮面をかすり、かすっただけで真っ二つにしてしまった。壊れた仮面が、地面に落ちて音を立てる。
「ミレイヌ様!!」
「おお!ミレイヌ様のお顔が!!」
様子に気付いたマヴァルとネイゼンが、ミレイヌを見る。他の者達も全員見た。三将軍でさえ初めて見る、ミレイヌの素顔。それを見た瞬間、アデルはプライドソウルを落とし、震えながら後退りした。アンジェも息を飲む。
「そ、そんな馬鹿な…どうして…」
なぜなら、そこにはあの顔があったからだ。
「どうしてあなたが!!ヴァルハラの盟主なんだ!!」
アデルは、ゲイルは問い質していた。
「ミライさん!!」
ミレイヌの仮面の下には、ゲイルを救った恩人、赤石ミライの顔があった。
この時ビャクオウは思った。ネリーはもしかしたら、この状況が訪れることを無意識のうちに予見していたのかもしれない、と。
アデルvsベルセルクの最終決戦は、アデルの勝利で終わりました。しかし、休む間もなくミレイヌとの連戦。しかもミレイヌの正体が赤石ミライだった!?ネタバレになりますが、このミライは偽者ではありません。間違いなく本人です。彼女が生存していた理由については、また次回。
お楽しみに!




