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第三十八話 決着

今回で学園祭は終了です。

「ハスタードライブ!!」

高速形態となったアデルはプライドソウルを振りかざし、ビャクオウに斬り掛かる。しかし、その直前でビャクオウは五人に分身。アデルの攻撃はそのうちの一人を破壊するだけに終わってしまい、攻撃後で動きが一瞬だけ止まったアデルへと、残りの四人が雪崩れ込む。

「どうしました?その程度ですか。あなたの力は」

今喋ったビャクオウに一撃見舞って撃破するが、これも偽者。他の三人が斬撃で一斉に攻撃してくる。

(さすがはエリックといったところか…)

ハスタードライブのスピードで強引に回避したアデルは、距離を取った。同時にビャクオウが八人に分身し、銃撃してくる。同じように回避するアデルだが、アデルが先ほどいた場所へ二人分身が現れ、その後も動く度に分身が現れて攻撃し、逃げ道を潰していく。メタルデビルズの力を使っている者同士とはいえ、その力は方向性が全く違い、しかもエリックに一日の長がある。パワータイプのアデルと、テクニックタイプのビャクオウ。どちらが強いかといえば、分身や変身、幻覚などの強力な能力でパワータイプを翻弄できるビャクオウだ。加えて、エリックは生まれた時から戦場で生き抜いてきたので、技術では勝ち目がない。

(それでも勝つ方法はある!!)

そう、技術では勝てないが、これは戦い。相手がどれだけ強かろうと、戦闘の技術が高かろうと、付け入る隙は必ずある。いや、作れるのだ。

(こんな具合に…な!!)

次の瞬間、アデルの周囲が爆発し、もうもうと立ち込める煙が、ビャクオウの視界を塞いだ。

(これは…)

手榴弾などを使った様子はない。いや、そもそも爆発に破壊力がなく、煙だけだ。そこで、ビャクオウは思い出す。ゲイルのアーミースキルは、爆破。この爆破は、好きな種類の爆発を起こすことができる。煙幕弾のように、煙だけを出すタイプの爆発を起こすことも可能だ。ゲイルが起こせる爆発では、ビャクオウにダメージを与えることはできない。だが視界を遮るには十分だ。

(なるほど、煙に紛れて攻撃するというわけですか。しかし…)

ビャクオウ側には三十人近い分身がいる。その中から本物を見抜いて攻撃しなければならない。

(あなたが本物の私を捜している間に、仕留めさせてもらいますよ)

本体含めて全員が一斉射撃を開始する。煙の中で交差する弾丸とエネルギー弾と閃光。これだけの攻撃を受けては、アデルとはいえひとたまりもない。


そう、受ければ。


「クトゥグアドライブッ!!!」


刹那、煙の中から凄まじい熱量の炎が吹き出して煙をかき消し、同時にビャクオウ達を焼き払った。

「むっ!?」

回避したのは本物のビャクオウ。その本物目掛けて、アデルの形に実体化した炎が襲い掛かる。振りかざされたプライドソウルを、ビャクオウは受け止める。

「そうきましたか…!!」

わざわざ本物を見抜く必要などない。分身ごとまとめて攻撃すれば、本物は必ず現れる。クトゥグアドライブなら炎化を駆使することで、一斉射撃を回避しつつ、周囲への攻撃も同時に行えるのだ。

「技でお前に勝てないなら、残された道は一つ。力で強引に押し勝つしかない」

技と力では技の方が強いが、圧倒的に強い力なら技ごと相手を打ち倒すことができる。

「面白い…そう!!私の全てに傷を付けたあなたが、簡単に倒れるなど許されることではないのです!!」

ビャクオウはプライドソウルを反らして離脱する。

「まだまだ終わらないで下さいよ?こんな程度では全く足りないのですから。」

言いながらビャクオウは四十人に分身。

「ああ。俺もそう思っていたところだ」

アデルもプライドソウルを構え、

「イグニスドライブ!!!!」

イグニスドライブを発動して、ビャクオウの軍勢とぶつかった。




「す、すごい戦いだ!!」

「どっちも全開って感じだね…!!」

光輝とさだめは全力で戦うアデルとビャクオウを見て、自分達とのレベルの違いを感じる。彼らの視線の先では、自分の武装をフルに使ってビャクオウ軍団相手に大立ち回りを演じているアデルと、それを撃ち落とそうと必死になっているビャクオウがいた。

「フレー!!フレー!!ゲ・イ・ル!!」

アンジェはただ一人、チアガール姿で応援している。

(もう!!空子も狩谷くんもどこに行ったの!?しっかり応援しないとゲイルが負けちゃうよ!!)

今にも状況が変わりそうな戦いを見ながら、ハラハラしていた。

「行くぞ!!」

ダゴンとヒュドラを手に取ったアデルは、エネルギー弾を連射しながら両腕を交差させ、武器をチャウグナルファングに変えてから突撃。最初の射撃で数が減ったため、本体の守りが手薄になっている。また分身されないうちに残った手勢を減らしていくアデルは、残った三体のビャクオウの二体にチャウグナルファングを投げつけた。双剣は二体のビャクオウを貫き、爆破する。最後の一体、本物のビャクオウに向かって飛び掛かったアデルは、

「アクセラレーションパンチ!!!」

エネルギーを込めた拳を放つ。

「ホワイトアウトブレイク!!!」

対するビャクオウもまた、エネルギーを込めた拳を放って、アデルの拳にぶつけた。今まで使うことのなかった体術系の必殺技。ビャクオウもまた、アデルとの決戦に備えて新しい技を編み出していたのだ。

「くっ…アクセラレーションキック!!!」

予想外の反撃を受けて一瞬力が緩んでしまい、弾き飛ばされたアデル。しかし、まだ終わらない。すぐさま必殺のキックを放つ。

「ホワイトアウトレイド!!!」

ビャクオウもそれに合わせ、また打撃技をぶつける。

「「エンドオブ…!!」」

今度はプライドソウルを出してエネルギーを込めるアデル。ビャクオウもホワイトスイーパーにエネルギーを込め、

「ソウル!!!」

「ファンタズマ!!!」

再びぶつけた。二つの大技がぶつかり合った余波は、東京ドームに匹敵する広さの体育館全体に行き渡る強力な衝撃波を巻き起こし、審判は吹き飛び、観客席を守る強化ガラスにはヒビが入る。

「これは凄まじい!!今までで一番激しい試合だ!!教頭死ね!!」

「さすがここまで勝ち残っただけはありますね!格が違いますよ!校長ぶっ殺す!!」

ジンキルとバウードは喧嘩をしながらも、一応しっかり実況している。











ヘブンズエデンで死闘が繰り広げられている間、そこから遠く離れた廃屋でもまた、死闘が起きていた。

「せっかく作った術式を壊されても困る。場所を移すぜ」

ヘインズが軽く腕を振ると、二人は廃屋の屋上に瞬間移動していた。

「来いよ。久々に俺を楽しませてくれ」

「黙りな!!ハイスピードエッジ!!」

風の刃を飛ばす狩谷。エルダーキングの力によって、その大きさと切れ味は遥かに増している。しかし、ヘインズは片手の手刀でハイスピードエッジを叩き折った。

「何!?」

「風…なるほど、お前はハスターの力を使うのか。だがな!!」

ヘインズは一気に接近し、拳を放つ。狩谷はそれをかわし、続く蹴りもかわしたが、飛んできたエネルギー波はかわしきれず、吹き飛んだ。

「俺が使うのはヨグ=ソトースの力だ!!同じ神でも、神としてのレベルが違う!!」

クトゥルフ神話には、大雑把に分類すると四種類の神が存在する。外なる神、旧支配者、旧神、地球本来の神。ハスターやクトゥルフは旧支配者に該当する神で、ヨグ=ソトースやアザトース、ナイアルラトホテップは外なる神に該当する。強さのランクでは旧支配者より外なる神の方が上で、旧支配者の力はせいぜい惑星恒星破壊規模程度だが、外なる神の力は宇宙そのものに影響をもたらせるほどだ。つまり、別格。いくら力を増したとはいえハスターが敵う相手ではなく、しかも狩谷はその力を一部しか使えない。対するヘインズは、ヨグ=ソトースの息子。人間の血が混ざったせいでいくらか落ちているとはいえ、それでも使える力の質、規模は狩谷を確実に上回っている。加えて、狩谷はハスターの力を手に入れて間もないが、ヘインズは幼少期からずっとヨグ=ソトースの力を使っているため、これも両者の力の差を広げている。

「それでも…それでも!!」

しかし、狩谷は断固として立ち上がる。

「俺は負けるわけにはいかねぇんだ!!お前を倒して、必ずヨグ=ソトースの召喚を止める!!止めてみせるぜ!!!」

まだダメージは浅い。十分戦える。狩谷はエルダーキングに力を込め、自分に身体強化の魔術を掛けて、ジグザグに走り回りながら接近した。これなら、エネルギー波に狙われることはない。

「ほう、さすが風の神の最高位の力だ。スピードじゃ敵いそうにねぇや」

間合いに入ってもすぐには斬り掛からず、周囲を走り回り飛び回って撹乱する狩谷。強化魔術を使った今の彼のスピードは、アデルのハスタードライブ以上。いかにヨグ=ソトースの息子とはいえ、捉え切れるはずはない。


スピードは。


ザクッ!!


狩谷が背後から繰り出したエルダーキングの一撃は、ヘインズの背中を貫通して、刃が胸から突き出す。ヘインズはその瞬間に突き出した刃を両手で掴むと、背を向けたまま後ろ蹴りで狩谷を蹴り飛ばした。

「ぐおあっ!!」

エルダーキングを離して屋上を転がる狩谷。ヘインズはエルダーキングを引き抜き、狩谷のそばに投げた。

「残念だったな。俺の身体は半分人間じゃねぇから、こういう方法で相手を止めることもできるんだ。」

神の力を使う男、ヘインズ・ウェイトリー。だが、使うのは神の力だけではない。彼の肉体もまた、神の肉体が混じっているのだ。通常の人間を遥かに凌駕するパワーと頑強さと生命力、さらに再生能力を備えており、今狩谷に付けられた傷はもう完治している。ここでもヘインズは狩谷より上だった。

「ちぃっ…!!」

投げ渡されたエルダーキングを再び手に取った狩谷は、今度は撹乱せず正面から突撃し、ヘインズの全身を連続で斬りつけた。

「速い速い。だが速いだけじゃ…」

しかしヘインズは揺らぐことなく拳を出し、狩谷はスピードを生かしてかわす。

「ロックンロールハリケーン!!!」

続いて竜巻を飛ばした。だが、ヘインズは蹴り一発で竜巻を粉砕する。

「こういうわけだ。」

「エクストリームテンペスト!!!」

次の技を放つ狩谷。ヘインズは自分の周囲に複数の魔力弾を浮かべてから突進し、手刀で狩谷の技を破ってから、魔力弾を飛ばす。狩谷はそれをかわすが、よけた先にヘインズが待ち伏せしており、顔面を殴り飛ばされてしまった。苦し紛れにヘインズの胴を斬るも、先ほどの傷と合わせて瞬時に回復される。

「お前、ハスターの力を手に入れてどれくらい経つ?」

「!?」

突然質問してきたヘインズ。

「だから、いつその鎌を手に入れたかって訊いてんだよ。」

「…一~二ヶ月前だ。」

答えを聞いたヘインズは、納得したような素振りを見せる。

「ふ~ん…そんな短い期間でそれだけ神の力を使えるとはな。だが、まだまだ荒削りだ。お前は自分が得た力を、三分の一も使いこなせていねぇ。」

「くっ…!!」

薄々気付いてはいた。一部とはいえ、ハスターの力は狩谷にとってあまりにも強大だった。ヨグ=ソトースほどではないが、やはり本家の邪神といったところか。そんな強すぎる力を、魔術や神に対する心得もない狩谷が、こんな短期間で完璧に使いこなせるはずはない。それはわかっていた。だが、予想以上に力を使えていないこと、それを面と向かって敵に言われたことが、腹立たしかったのだ。

「まぁどうでもいいか。お前、ここで俺が勧誘したって協力したりはしねぇだろ?」

「ったりめぇだ!!誰がてめぇなんか!!」

「やっぱりな…じゃあ仕方ない。お前には死んでもらうぜ」

ヘインズは狩谷に片手を向け、魔力を収束する。その時、

「!!」

ヘインズの背後から何かが飛んできた。ヘインズは咄嗟に振り向き、片手を背後に向けてエネルギー弾を発射し、何かを相殺した。飛んできたのは、弾丸だった。それも、側面に螺旋状の溝が彫られた大きな弾丸である。

「空子!!」

狩谷は今弾丸を撃ってきた者の名を呼ぶ。そう、空子だ。両手にギガトラッシュとライフイーターを構えた空子がいた。

「はあああああああああああああ!!!」

空子は両手の武器を乱射しながらヘインズに突撃する。

「ちっ!!」

瞬間移動でかわすヘインズ。しかし、弾丸の嵐はヘインズが移動した方向へと軌道を変えて殺到する。

「ちっ!!」

仕方なく、ヘインズは防御魔術でバリアを張って防いだ。そうこうしている間に狩谷のそばへたどり着く空子。

「大丈夫?」

「あ、ああ。お前、何でここに…?」

「あんたがあからさまにおかしかったから尾けてきたのよ。こんな町外れだとは思わなかったから、結構迷っちゃったけど。それより、あいつは何なの?」

狩谷は空子に今まであったこと、ヘインズがやろうとしていることを教えた。

「ヨグ=ソトースの召喚って…ちょっとあなた!!そんなことしたらどうなるかわかってるの!?学園が吹き飛ぶだけじゃ済まないわよ!?」

ヨグ=ソトースの力は強大だ。召喚すればヘブンズエデンどころか、地球そのものが消えてなくなる可能性だってある。

「お前、俺の親父をアザトースと間違えてるんじゃねぇか?親父はちゃんと理性があるし、加減だってわかってるよ。」

そうだとしても、やはりヨグ=ソトース召喚を許すわけにはいかない。

「奴は強いが、俺とお前の二人がかりなら、なんとかなるかもしれねぇ。」

「相手がヨグ=ソトースの息子なんて予想外だったけど、元々そのつもりで来たし。っていうか、なんとかなるんじゃなくて、なんとかするのよ!」

ヘインズに全く敵わなかった狩谷だが、空子という味方が来た今なら勝てるかもしれない。いや、勝てる。そう確信できた。

「っしゃあ!!行くぜぇっ!!」

狩谷はヘインズに向かって突っ込む。空子はその後ろからギガトラッシュとライフイーターで援護射撃。

「けっ!!」

対するヘインズは自身に強化魔術をかけ、空子の射撃を喰らいながら狩谷と接近戦を演じる。

「全然効かない…!!」

何発弾をぶち込んでも、ヘインズは全くダメージを受けず、怯みもしない。狩谷以上に強力な強化魔術だ。使う魔術の質にも差が出ている。

「だったら…!!」

こうなったら物理的強度を無視する攻撃を当てるしかない。

「サイクロンエフェクト!!」

まずエルダーキングに暴風を纏わせる狩谷。

「ラァッ!!」

「ぐおっ!!」

振り下ろした一撃をガードするヘインズだが、圧縮された暴風が爆発し、大きく吹き飛ばされる。

「そこっ!!」

その瞬間を待っていた空子はライフイーターをしまい、代わりにスタングレネードを出して投げつけた。スタングレネードはヘインズの目と鼻の先で炸裂し、強烈な閃光と音がヘインズを襲う。

「がぁっ!!ぐあああ!!」

ヘインズは強化魔術で視力も強化していたため、通常の人間よりも眼球へのダメージが大きく、両手で顔面を押さえて悶えている。一方狩谷は、スタングレネードからそれなりに距離が離れていたので、手で目を隠すのが間に合い、音もあまり聞こえていない。ひとまずヘインズの動きを封じることができた。次の手を打つ。

「ハスターの歌!!」

エルダーキングから放たれる強烈な電磁波。電子レンジの数十倍以上のそれが、ヘインズの身体を焼く。

「ぐあああああああ!!!」

苦痛に絶叫するが、まだ視力の回復ができていないので攻撃できず、うかつな離脱も危険なので、 それもできない。

「空子!!今だ!!」

ヘインズに大ダメージを与えることには成功したが、あの並外れた再生能力の前では一時しのぎも同然だ。早急に息の根を止める必要がある。狩谷はハスターの歌の照射をやめ、次の武器を取り出した空子を突撃させた。

「デッドブリンガー!!!」

彼女の片腕には、巨大な釘打ち機、パイルバンカーが装備されている。六連装対物パイルバンカー、デッドブリンガーだ。

「やああああああ!!!!」

空子はデッドブリンガーの杭を、ハスターの歌で強度が弱まっているヘインズの胸へと突き刺し、ガションッ!!ガションッ!!と打ち込んでいく。

「がああああああ!!!」

デッドブリンガーはヘインズの心臓を打ち抜き、空子は後退する。そして、

「エクストリームエクスタシー!!!」

狩谷の魔力斬撃波が、ヘインズを吹き飛ばした。

「ご…おお…お…」

左腕と両足が消滅してしまったヘインズ。これだけ甚大なダメージを受けては、もう助からないだろう。

「く…そ…まだだ…まだ…!!」

力を振り絞って瞬間移動するヘインズ。

「まずい!!こっちだ!!」

狩谷は空子の手を引いて、ヘインズが向かった先へ行く。



「はぁ…はぁ…」

ヘインズがたどり着いたのは、時空の門を開く術式を刻んだ部屋。エネルギー蓄積クリスタルには、もう十分すぎるほどのエネルギーがたまっている。

「頼んだぜ…親父…」

ヘインズは自分の全ての魔力と、自分自身の命を代価にして術式を起動する。

「くそ!!遅かったか!!」

狩谷達が部屋に着いた時、ヘインズはもう事切れていた。代わりに、部屋中に刻まれた術式が輝いている。クリスタルから術式にエネルギーが送り込まれているのだ。

「くっ!!」

空子はギガトラッシュでクリスタルを破壊する。しかし、術式の光は消えない。

「この…!!」

両手の武器を収納し、多数の焼夷手榴弾を投げて、部屋そのものを破壊する。

「これで止まってくれりゃあいいが…とりあえず学園に戻るぞ!!」

「ええ!!」

ヨグ=ソトースの召喚はどうなったか確かめるには、学園に戻るのが一番だ。二人は大急ぎでヘブンズエデンに帰還した。











「ふぅ…ふぅ…ふぅ…」

「はぁ…はぁ…はぁ…」

互いに荒い息継ぎをするアデルとビャクオウ。二人とも急所狙いや大技は紙一重でかわしていたが、度重なる攻撃の交差、エネルギーの多大な消費などの要因が重なり、立っているのがやっとな状態だ。

「ふむ、なかなかいい勝負だね。」

「り、理事長先生!?」

「いつの間に!?」

光輝とさだめはいつしか観戦に来ていたエドガーに驚く。

「そりゃ見に来るさ。私の最高傑作同士の戦いだからね」

力のアデルと技のビャクオウが本気で戦ったらどちらが強いか、研究者として興味深い話ではあるし、何よりいいデータ収集になる。

「しかし、どちらも余裕はなさそうだ。せいぜいあと一発大技を使うのが限界だろう」

「…あと一発…!!」

「それで勝負が決まる…!!」

もうそこまで切羽詰まった状態にあったことを知り、光輝とさだめは緊張してリングを見る。

「フレー!!フレー!!ゲ・イ・ル!!」

そんな状況でも、アンジェは応援を続けていた。しかし、その応援にもかなり熱と力が入っている。


その時、


「っ!!なに!?」

アンジェは何かを感知して応援をやめ、空を見上げた。

「っ!?」

「む!?」

アデルとビャクオウもだ。

「ど、どうしたの!?」

さだめはアンジェに尋ねる。そこへ、

「白宮!!桐崎!!」

回復した皇魔とレスティーが来た。

「皇魔さん!!レスティーさん!!もう大丈夫なんですか!?」

「うむ。それより、何だこの巨大な気は!?」

「気?」

「もしかして、アンジェも同じものを…?」

さだめは再びアンジェに尋ねるが、アンジェはずっと空を見たまま、冷や汗を流している。

「空から何か来るわ!!」

レスティーがそう言った瞬間、




空に穴が開いた。




「あの穴…あれは時空間を繋ぐ穴だね。」

冷静に分析するエドガー。そこへ、

「チクショウ!!やっぱり止められなかったか!!」

狩谷と空子が来た。

「狩谷!!空子さん!!」

「一体どうしたの!?」

戸惑う光輝とさだめ。狩谷と空子は、事情を語って聞かせる。

「ということは、あの穴の向こうにあるのか!!最極の虚空が!!」

エドガーは興奮する。最極の虚空とは、ヨグ=ソトースが幽閉されている特殊な空間のことだ。ヘインズはヨグ=ソトースがいる空間への門を開くと言っていたので、今見えているあれが最極の虚空なのだろう。


と、その光景に変化が現れる。


穴の向こうに、玉虫色に輝く球状の物体が出現したではないか。物体は常に泡立ち、形状を変化させながら、こちらに向かってきている。あの物体こそ、アザトースが生み出した三柱神の一柱、神々の副王ヨグ=ソトースなのだ。

「あれが…ヨグ=ソトース…!!」

アンジェはその姿に恐怖している。

(な、なんとおぞましい気だ!!今まで戦った相手とは格が違いすぎる!!)

皇魔は自分と自分が戦ってきた相手をヨグ=ソトースと比べ、文字通り次元が違うと認識していた。

「くそっ!!こいつはやべぇ!!やべぇぞ!!」

「ヨグ=ソトースが、こっちに…!!」

ひたすら焦る狩谷と空子。

「ど、どうすればいいんだ!!こんなの、どうしようもないじゃないか!!」

「そ、そんな…!!」

光輝とさだめすら、あの副王が秘める絶大な力を感じている。

「みんな落ち着いて!!と言いたいところだけど、無理ね。もうヘブンズエデンは終わりだわ…世界の終わりって言った方がいいかもしれないけど」

レスティーは諦めていた。仕方ない。ヨグ=ソトースは勝とうと思って勝てる相手ではないのだ。銀河系すら積み木か何かのように消し飛ばせる邪神と、どうやって戦えよう。観客達もパニックに陥り、我先にと逃げ出している。


しかし、こんな状況でただ一人、冷静になっていられる者がいた。


「素っ晴らしいッ!!!」


エドガーだ。

「素晴らしいよ!!素晴らしすぎる!!まさかこの目で副王ヨグ=ソトースの姿を見ることができるなんて!!俗物な台詞だが、あえて声高らかに叫ばせてもらおう!!生きててよかった!!!」

彼はようやく邪神の姿を見られたことに歓喜している。今までハスターやナイアルラトホテップ、深きものどもにすら出会える機会を逃し続けてきたが、今ようやく、それもヨグ=ソトースという大物に会えたのだ。

「喜んでおる場合か!!このまま奴の召喚を許せば、ヘブンズエデンはおろか、地球そのものが消えてなくなるぞ!!」

「…それは困る。」

皇魔に言われて、エドガーは熱を冷ます。しかし、相手はヨグ=ソトースだ。地球の科学力全てを結集しても、倒すことなど不可能だろう。第一、今からそこまで大規模な迎撃の準備を行うには、時間がかかりすぎる。その間にヨグ=ソトースが降臨し、地球を破壊してジ・エンドだ。こうしている間にも、ヨグ=ソトースはこちらの世界に出てこようとしている。


しかし、ここで異変が起きた。


ヨグ=ソトースは穴を通り抜けず、穴につかえたのだ。

「えっ!?」

謎の状況に驚愕するレスティー。狩谷はなぜヨグ=ソトースがつかえているのか、よく観察することで理解した。穴が最初開いた時に比べて、小さくなっている。

「それだけじゃねぇ。穴は今でも、どんどん縮んでいってる!」

狩谷が見た限りでは、確かに穴が小さくなり、徐々に閉じつつあった。

「…ヘインズは正規の儀式じゃないって言ってた。その影響か?」

ヨグ=ソトースの召喚には手順を踏む必要がある。しかし、ヘインズはその手順全てを完全に無視して、ヨグ=ソトースを召喚しようとした。だから、こんな中途半端な門しか開けなかったのではないかと、狩谷は予想する。

「…けど、あんまり意味がないかも…」

アンジェの顔がまた険しくなる。ヨグ=ソトースは閉じようとする穴をこじ開け、強引に通り抜けようとしていたのだ。穴はヨグ=ソトースの力を受けて閉じるのをやめ、逆に広がってきている。

「このままじゃ、遠からず出てきちゃうよ!!」

光輝は焦る。と、エドガーが言った。

「今ならまだ押し返せるかもね。それに、時間制限だってある。」

時間制限とは、ヨグ=ソトースがこちらの世界にいられる時間制限のことだ。


ヨグ=ソトースは旧神によって、最極の虚空に封印された。ここは全ての時空間に接しているが、しかしどこにも行けない場所で、それゆえに暴れられないらしい。さらに旧神からの封印の効果も続いており、召喚できても時間が来るとここへ戻されてしまうそうだ。

「じゃあ、それまで持ちこたえれば…!!」

「あたし達の勝ちってことね。」

光輝と空子は結論付ける。

「そうと決まったら、急ごう!!ゲイルとエリックにも、このことを伝えないと!!」

アンジェは覚醒した。

「待った。今校長と教頭に連絡して、強化ガラスを開けさせよう。」

エドガーはジンキルとバウードに連絡する。

「盛大に喧嘩を楽しんでいるところ申し訳ないが、強化ガラスを開けてくれないかね?」

「「はい、かしこまりました。」」

先ほどまで激しく争っていたのがウソのように大人しくなったジンキルとバウードは、エドガーの指示に従って、強化ガラスを開ける。

「それから、二人にこれを渡してくれ。」

エドガーはアンジェに、小さなカプセルを二つ渡した。

「これは?」

「メタルデビルズ専用の回復カプセルだ。これを使えば、二人のエネルギーは全快する。ヨグ=ソトース相手に大技一発しか使えないというのは、さすがに心もとないからね。」

「ありがとうございます。」

そうこうしている間に、強化ガラスは全て開いた。

「ゲイル!!エリック!!」

アンジェは翼を広げて羽ばたき、アデルとビャクオウのもとへ行く。狩谷達も客席から飛び降りていった。

「さて、私も準備をしようか。」

エドガーは通信機の周波数を校内放送の数値に合わせ、学園全体に連絡する。

「緊急連絡を行う。普通課生は来場者の皆さんを学園の外へ避難させて、訓練生と教員は全員武器を持って第二体育館へ集合したまえ。体育館上空のヨグ=ソトースを攻撃するよ。繰り返す…」











「ゲイル!!」

「アンジェ!!」

「説明してもらいましょうか。今何が起こっているのかを」

アンジェはヨグ=ソトースについて説明した。

「…聞いたことのある姿の化け物だとは思ったが、よりによってヨグ=ソトースとはな…」

「まったく、この学園は本当に邪神と縁がありますね。」

二人は一度変身を時、アンジェから渡されたカプセルを服用する。

「儀式は不完全だし、時空の門も中途半端だから、まだ押し返せるかもしれねぇ。」

「それか、あれがこっちにいられる時間の限界まで持ちこたえられれば、あたし達の勝ちよ!」

「よし、そうと決まれば、早速手を打とう。」

「私の予想が正しければ、ヨグ=ソトースは門の通過に力を割いており、こちらを攻撃する余裕はないはずです。」

狩谷と空子から話を聞いたゲイルとエリックは再度変身し、全員が戦闘の準備を整える。


そして、


「ワールドエンドブレイカー!!!」

「ギャラクティックエンドブレイカー!!!」

イグニスドライブを発動したアデルと、百体に分身したビャクオウが砲撃を、

「プラチナアローシューティング!!!シャイニングフェザーストーム!!!」

アンジェが光の矢と羽による攻撃を、

「エクストリームテンペスト!!!」

「ギガトラッシュ!!!ハウリングシュート!!!ライフイーター!!!」

狩谷がエルダーキングから風を、空子がギガトラッシュとライフイーターによる射撃を、

「「バスターブリッツ!!!」」

疑似進化した光輝とさだめが雷を、

「闘界覇神拳奥義・鬼神激動拳!!!」

「忍法・五行滅殺の術!!!」

互いに秘奥義を使った皇魔とレスティーが最強技を、ヨグ=ソトースに向けて一斉に放った。数多くの力が邪神の身体に命中し、その進行が止まる。だが、ヨグ=ソトースは進もうとする力を一層強め、再び進撃が始まった。

「押し返せない…!!」

限界までパワーを発揮するアンジェだが、それでもヨグ=ソトースを押し返すことはかなわず、進行を許してしまっている。

「僕達だけじゃ無理だ!!」

「もっと人数がいないと!!」

光輝とさだめの言う通り、ヨグ=ソトースに攻撃する者の数が全く足りていない。ビャクオウの予想が当たっていたのか攻撃はしてこないが、それも今だけだ。完全に門を抜けられたら、全てが終わる。


その時、


「みんな、大丈夫!?」

メイリンと室岡が来た。

「メイリン先生!!室岡先生!!」

「あれを攻撃して、穴の向こうに押し返して下さい!!」

「わかった!!」

「ヴォルケーノストリンガー!!!」

狩谷と空子の頼みを快く引き受けた二人。メイリンは銃から炎を放って攻撃し、

「リバースグラビティー!!!」

室岡は地球の重力を反転させ、重力衝撃波としてヨグ=ソトースにぶつける。しかし、これだけ強力な攻撃を仕掛けても、ヨグ=ソトースを撃退するには至らなかった。

「まだよ!!もっともっと人を呼ばないと!!」

人数不足を訴えるレスティー。そこへ、

「お待たせしました!!」

「これより援護に入ります!!」

エドガーから連絡を受けた訓練生達が到着し、各々武器やアーミースキルを使ってヨグ=ソトースに攻撃を始めた。ジンキルとバウードも加わり、またヨグ=ソトースの進行が止まる。学園の訓練生全員が集合しての一斉攻撃だ。さすがに止まるだろう。しかし、ヨグ=ソトースの力は彼らの予想を越えていた。

「まだか!!」

皇魔は舌打ちする。ヨグ=ソトースがまた、進行を開始したのだ。これほどの手を尽くしても追い返せない。止めることさえできない、恐怖の副王。

(人数はもう十分だ。あとは…)

(攻撃の質!!威力が足りない!!)

アデルとビャクオウは同じことを考えていた。そうだ。いくら人数をかき集めても、それを上回るだけの攻撃をしなければ、ヨグ=ソトースを押し返すことはできない。

(しかしどうする!?そんな出力を用意する方法など…!!)

アデルは必死に考えを巡らす。

(…一か八か…!!)

そして、思い付いた。アデルは一度攻撃をやめ、ある能力を発動する。

「フィアーズイクリプス!!!」

アデルの全身からコードが伸びて、リングや床に突き刺さる。コードは鉄や岩を刺したまま戻り、アデルは瓦礫の山に包まれた。

「ゲイル!!」

突然の奇行に驚くアンジェ。しかし、その瓦礫の山に変化が現れる。一瞬発光したかと思うと、黒い球体になって浮かび上がったのだ。その球体の全体から再びコードが伸び、周囲の物質を引き寄せていく。やがて十分な数が集まると、巨大な瓦礫の山はアデルへと姿を変えた。アデル ギガンティックデビルズだ。

「その手があったか!!」

皇魔は閃く。大きければ、それだけ出力も上がる。アデルは大きな自分になることで、出力を上げたのだ。

「行くぞ!!」

アデルは飛翔し、自分の攻撃がさらに強まるよう、ヨグ=ソトースのそばまで行く。

(ナイアルラトホテップ!!力を貸しなさい!!)

(しょうがないなぁ)

エリックはイビルゴッドモードとなって、ギャラクティックエンドブレイカーの威力を強める。そして、

「ワールドエンドブレイカァァァァァァーッ!!!!」

アデルは至近距離から、全力のワールドエンドブレイカーを命中させた。これにはさすがのヨグ=ソトースも抗えないらしく、とうとう押し返され始めた。それに比例して、穴も小さくなっていく。



ヨグ=ソトースが最極の虚空に送り返されるのと、時空の門が閉じるのは、同時だった。




「…やった…やったぞぉぉぉぉ!!!」

狩谷が勝利を叫ぶと、訓練生達も歓声を上げる。アデルはギガンティックデビルズを解除して会場を修復し、ビャクオウはイビルゴッドモードを解除して分身を消した。

「すごい…ゲイルさんは本当にすごい!!」

「他の人達もすごかったわ!!」

「奇跡みたいです!!」

こっそり紛れ込んでいた陸堂達も、勝利を喜んだ。


と、


「さて、続きを始めましょうか。」

ビャクオウがホワイトスイーパーを構えた。

「続きって、アーミートーナメントの続きをか!?」

「当然です。まだ決着がついていませんから」

狩谷はビャクオウの言動に呆れる。本当に、我が道を行く男だ。しかし、アデルは変身を解除して言う。


「俺の負けだ。」


「…は?」


その発言が理解できず、ビャクオウは聞き返す。

「負け!?負けとはどういう意味ですか!?」

「お前も見ていただろう?ギガンティックデビルズを発動した時、俺はリングの外に立っていた。」

リングの外に身体の一部が接触した者は、敗北扱いとなる。つまり、リングアウトだ。

「ま、まさか、そんなものを認めろと!?」

「アーミートーナメントのルールだから仕方ないだろう?」

「ふ、ふざけないで下さい!!」

抗議するビャクオウ。そこへ、エドガーが来る。

「そうそう、これはルールだ。私が言うんだから、しっかり守ってもらわないと。」

「ぐぅ…!!」

エドガー直々の審判とあってはビャクオウも何も言えず、渋々自身の勝利を認めた。釈然としないが、公正なルールのもとだ。

「それより、ゲイルはずっと、あたし達のこと心配してくれてたのよね?」

空子はゲイルに尋ねる。ゲイルは彼女達を巻き込まぬよう、何も言わずにアーミートーナメントに出場した。そして、一人で全てを解決しようとしたのだ。

「ありがとうな、俺達のために戦ってくれて。」

「ゲイル、本当にありがとう!」

心から礼を言う狩谷とアンジェ。

「お前達が無事でよかった。」

爆弾はブラフだったとはいえこの戦い、狩谷達の活躍がなければ、ヨグ=ソトースは完全に召喚されていたかもしれない。ヨグ=ソトースを押し返すことも、できなかっただろう。結果的に、彼らのおかげで皆は救われたのだ。

「…ありがとう。」

ゲイルは狩谷達に礼を言った。




副王ヨグ=ソトースとその息子、ヘインズ・ウェイトリーのせいで学園祭は滅茶苦茶になってしまったが、幸い死傷者はなく、後片付けも滞りなく終了した。




終わり良ければ全て良し。誰がそう言ったかはわからないが、まさしくその通りだった。











最極の虚空。

「ぬぅぅ…」

ヨグ=ソトースは呻いていた。アデルとビャクオウのあの攻撃が、かなり効いたのだ。

「あははは」

「うふふふ」

そのそばで、二人の女性が笑っている。一人は眼鏡を掛けた美しい女性だが、もう一人は爛れた雲のような肉塊で声だけが女性という異形だ。

「…何がおかしい?ナイアルラトホテップ、シュブ=ニグラス。」

「いやいや、こっぴどくやられたなぁと思って。」

ご存じナイアルラトホテップは、ヨグ=ソトースのダメージを見て笑っている。

「あんな粗末な門しか開けないとは、あなたの息子の力もずいぶんとたかが知れていますわね。人間なんかと交わるからですわ」

肉塊の化け物、邪神シュブ=ニグラスは高飛車な態度で、ヨグ=ソトースを見下していた。二人はヨグ=ソトースが門をくぐり抜けようとして返り討ちにされたのを見ていたのだ。

「黙れシュブ=ニグラス。大体ナイアルラトホテップ、貴様が俺の息子をたぶらかしたのが全ての発端だぞ。」

「いやいや、ボクはヘブンズエデンのことを教えただけで、あんな行動に出るとは思っていなかったんだよ。」

ヘインズにエドガーのことを、メタルデビルズのことを教えたのはナイアルラトホテップだった。

「ふん。俺にそんな嘘が通じんことは、貴様が一番わかっておるのだろうが。」

「あれ、わかっちゃった?さすが全知の副王ヨグ=ソトースだね。」

ナイアルラトホテップはヨグ=ソトースを完全におちょくっている。

「…それで、貴様ら何の用でここへ来た?何かあるのだろう?」

ヨグ=ソトースはダメージを再生しながら、二人が来た理由について訊く。

「わたくしは、ナイアルラトホテップの付き添いですわ。用があるのはナイアルラトホテップですわよ」

「そうそう、君にちょっと聞きたいことがあって来たんだ。」

同僚をからかって遊ぶのをやめたナイアルラトホテップは、真剣な表情になる。

「あのメタルデビルズっていう改造人間。あれ、どうした方がいいかな?ちなみにアデルの方ね。」

「どういう意味だ?」

「壊した方がいいかなって。」

ナイアルラトホテップの質問について少し考えたヨグ=ソトースは、答えを出す。

「貴様が勝手に決めろ。だが、これだけは言わせてもらうぞ。」

「何だい?」

「近いうちに、全ての時空と世界が滅ぶ戦いが起きる。その戦いの鍵となるのは、貴様とアザトース、旧神どもとメタルデビルズだ。」

「何だって?」

そんな戦いが起きる前兆はない。どういうことなのか詳しい話を聞こうとするナイアルラトホテップだったが、シュブ=ニグラスに止められた。

「ナイアルラトホテップ、あなたも知っているでしょう?この堅物の副王は、未来に起こることをあまり語りたがらない。」

未来を教えることに対して、特別な感情を抱いているヨグ=ソトース。ゆえに、例え召喚されてもヒントを教えるだけで、未来については決して語らないのだ。

「…まぁいいよ。ここまで聞ければ上出来だ」

ナイアルラトホテップは帰っていってしまった。この空間の封印が適用されるのはヨグ=ソトースだけなので、他の者は普通に出入りできるのだ。もっともそれはナイアルラトホテップのような上級の神格だけだが。

「まったく、相変わらず不愉快なやつだ。」

「仕方ありませんわ。それがあの子ですもの」

「…それで、貴様はなぜ帰らん?」

「…わかっているくせに」

シュブ=ニグラスはヨグ=ソトースからの問いを聞き、クスリと笑った。











どこかの空間。

地面にあたる部分に丸い映像が映し出され、それを怪物が覗き込んでいた。タコのような頭をもつ怪物だ。

「また地球を覗き見しておられるのですか?」

そこに二人の老人が現れる。怪物は何も答えない。

「あなたは本当に人間が好きですね。」

「して、今回は何を見ておられたのですか?」

老人達に問われ、怪物はようやく返答する。

「人間がヨグ=ソトースを撃退した。」

「ほう!今の時代にそれほどの力を持つ人間がいるとは…このノーデンス、とても驚きましたぞ。のうヴォルヴァドス?」

「うむ。」

ノーデンスとヴォルヴァドスは顔を見合せ、驚く。怪物は今、ゲイル達傭兵を見ていた。

「…この人間達が」

そして、呟く。

「…我らの悲願を果たしてくれるやもしれん。」

一瞬、時が止まった。少ししてから、ノーデンスが笑う。

「あなたは人間を買いかぶりすぎです。我々旧神にさえ不可能だったことが、人間にできるはずがない。」

「それより、先日のハスター復活の件といい、またナイアルラトホテップがよからぬ企みをしているようです。ご用心を、クタニド様。」

怪物の名を呼ぶヴォルヴァドス。それに対し怪物、旧神の長クタニドは、

「…うむ。」

とだけ言った。





ヨグ=ソトースの降臨と、三柱神の邂逅。そして、動き出す旧神達。なんか伏線張りまくりだなぁ…。


次回からは新展開です。お楽しみに!

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