表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/58

2-14

本日2回目の更新です


 微妙な雰囲気のまま馬車に揺られること30分。

 少しずつ海風と共に潮の匂いがしてきた。

 海が近い。


「……潮の匂いがします」


「もう着くよ」


 窓から外を見ると、港への入口に差し掛かる所だった。

 ガタン……と一瞬のゆれがあってから、スピードが少しずつ遅くなり停車する。


「さぁ、行こう」


 馬車から最初に降りたサーシャの後にラティスが続く。

 そしてラティスの手に手を重ねてラヴィニアも降りる。

 こういうマナーだけは悪態をつくラティスも必ず忠実に行ってきたのは、マナーにうるさい母親に厳しい注意を受けたからだと以前話していたのを思い出した。


「ようこそお越しくださいました皇太子さま!」


 出迎えたのは炎天下の下で働くからか、全身日に焼けて黒くなった男性だった。

 ニコニコ笑ってこっちですよー、と気さくに話しかけてくる。


「変わりはないか?マーティン」


「特に無いですねぇ、最近は平和ですから」


「それが一番いい事だな」


「違いねーです」


 あっはっはっは!と笑るマーティンはすぐ隣を歩くラティスとラヴィニアを見た。


「どちらさんです?珍しいですね。一緒に視察なんて」


「あぁ。……ファイライトの王太子とその婚約者だ」


「!……そうですかぁ、ファイライトの……大変だったっすね……あんた達が無事で良かったです」


 既にファイライトの情報はエスメリアだけでなく全土に回っているだろう。

ぎこちない敬語もどきで話すマーティンは痛ましげにラティスとラヴィニアを見た。

 マーティンの言葉を酷く軽く感じたラティスはギリッと手を握りして口を開こうとしたとき、先にラヴィニアがマーティンに話しかけた。


「はい、痛み入ります。今後は復興に向けて前を向いて行こうと思います」


「そうだな!くよくよしてられないよな!」


 よーし!がんばろー!と両手を上げて言うマーティンは前を向き歩き出すと、ラティスはギリッとはを食いしばる。

 そしてラヴィニアを見て小声で

 

「でしゃばるなと言っただろ!」


 と言い、少し前に行ってしまったサーシャを追いかけて行った。

 ラヴィニアはため息を吐き、残念な人を見る目でラティスを見る。


「……大丈夫ですか?」


「あ、はい。大丈夫です」


 護衛に付くラヴィニアよりも歳若い男性に話しかけられ頷くラヴィニア。

 アビゲイルも心配そうに見ていたが、思っていたよりもしっかりした返事が返ってきて安堵し、サーシャ達を追うように促された。



 

「じゃあ、まずはこれ」


 マーティンが出したのは、ここ1ヶ月の船の出入りの資料と輸出入のリストだ。

 主に今月は食料品と衣類品、複数の種類の花が多く取引されているのか、そのリストが大半を埋めている。


「…………おかしな事は無かったんだな?」


「……特に無かったですね」


 この1ヶ月を振り返りながら返事を返すマーティンに頷き返事を返したあと、サーシャはその資料をラティスに渡した。

 受け取ったラティスは眉を寄せながらその書類を見ている。


「何か意見はあるか?」


「……………………いえ」


 2人の話を聞きながら、ラヴィニアはそっと資料を見る。


「……まぁ、そう言えばもう時期花祭りの時期ですよね?」


「お、しってるんですか?嬉しいっすねー」


 思わず零れた言葉にマーティンは嬉しそうに笑った。

 ラティスは眉を寄せてラヴィニアを見ると、サーシャは面白いものを見る目付きに変わる。


「エスメリアの資料で見ただけですので、実際には見たことありません。お花いっぱいの籠と、甘いお菓子をいっぱい入れた籠のどれかひとつを持って、交換しながら新しい出会いを作り感謝するお祭りでしたよね?」


「そうそう!大規模でやるからこの日だけは貴族も裸足になってバカ騒ぎするんすよー!サーシャ様も昔はやってたのに今は参加しなくなっちゃって……」


 よよよ……と泣き真似するマーティンに、サーシャは遠慮なく後頭部を叩く。

 いってー!と叫ぶマーティンを尻目にため息を吐いてラヴィニアを見るサーシャ。


「……まぁ、昔の話だ」


「見てみたかったです」


「やめてくれ……」


 2人の楽しそうな話にマーティンがニコニコ笑って聞いている頃、ラティスは資料を皺が寄るほど強く握って表示されている文章を睨みつける。


 

「……なんで今そんなに話……」


 何か追い込まれているようなラティスの気迫にラヴィニアは気付き目を瞬かせた。


「え?この輸入リストの半数以上がお祭りに使うものですよね?」


「……はぁ?」


 何言ってんだコイツ……と言わんばかりの顔で資料から顔を上げラヴィニアを見るが、不思議そうに首を傾げていてラティスの本心は伝わらなかった。


「この大量のお花も、お菓子作りに使用する多量の材料も花祭りの時に使うものだと思ったのですが……」


「なんで分かるんだよ」


「次の取引が3週間後であり、量的に通常の販売では捌ききれない量である事と、お花は簡易的な魔法で2週間枯れない様に手が加わっている事。花祭りに使うお菓子には二種類あって、焼き菓子系と果物を使用したもの。果物は痛みやすいのですが、こちらも防腐魔法がされていて、2週間の猶予があると記されています。すなわち、2週間以内に何かある。物品の量からして小規模ではないと推測しました。それを含めてエスメリアの今の時期に何があるのかを考えた結果……です。あぁ、衣類品もお祭りの準備に飛ぶように売れるから、でしょうか」


「……正解、いい子だ」


 サーシャが楽しそうに笑いながらラヴィニアの頭を撫でる。

 まるでペットのような扱いに、思わず頬を膨らませそうになった。



「その情報はどうやって知った?」


「幼い頃の家庭教師にです。他国について学ぶ内容の資料に入っていました。その資料は幼い子向けの簡単なものでしたので気になり図書館でもっと詳しい内容を調べ、王城の図書館に行ける様になってからは、それに付随した他の資料も一緒に閲覧しました。」


 ラヴィニアの言葉にラティスは呆然として、手に持っていた資料を落とした。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ