表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/111

88.リトルボア対策

 やってきました。西の草原。真似するのはカンナさんではなく、師匠である事に気付いちゃいました。そうです。魔法の練習です。


「ふんぬ~。リトルボアを斃さない限り私達に明日はない! ね! ネイちゃん?」


「……うん。うん」


 腰の辺りで両手を握り、コクコクと頷いてくれるネイちゃん。やる気十分です。まずは基本の復習からです。魔術大全1巻の登場です。


「連射するためにもまずは基本に立ち返り、復習からしよう」


 そう宣言して唱えるは、生活魔法。


《火を着けよ! 着火!》


 指先からしゅぼぼぼ~と炎を噴き出させるわたし。ちょっと自慢げに何時もよりたくさん出します。はっと気付きました。


「ち、ちが~う!」


 指先から出ていた炎を止めて振り払います。そうでした。リトルボア対策ですので生活魔法関係ありません。魔術大全2巻からです。最初から間違えてました。


「間違えました。もう一度最初からです。攻撃魔法じゃないといけませんでした」


 気を取り直して、魔術大全2巻を開きます。初級魔法の炎の章のページを開きます。呪文を確認して魔力を込め力強く唱えましょう。


《火よ鏃となり、炎の矢羽を纏いて敵を撃て! ファイヤーアロー!》


 ボヒュっと音がして私の指先からオレンジ色の炎の矢が前方に向けて発射された。狙い通りに木の幹に当たりジュゥゥゥ~とその熱量全てが1点に収束される。


 ゲームとかアニメなんかだと炎の矢とか雷の矢なんかが貫通して敵に突き刺さったりするけど、あり得ないから。そりゃあ、紙とかなら貫通するけど燃えて穴が開くからだからね。


 雷も同じだから。炎も雷も固体じゃないし、精々焼き印を押すみたいになるだけ。でも板金鎧なんかだと全体が800℃位になるから火傷する位には熱くなるよ。


 全身根性焼きとか嫌過ぎる。私が金属鎧を選ばない理由でもあるんだよ。しかーし。最近気付いた。そんな訳ないことに! 板金鎧をそのまま着るなんて事もあり得ない。


 下着も着るし、鎧下なるものも着るので多少ファイヤーアローが当たった位じゃ火傷しない。熱い位は感じるかも? 程度で済むらしい。


 おっと、話が逸れた。続けてネイちゃんも魔法の練習に入る。


《火よ鏃となり、炎の矢羽を纏いて敵を撃て! ファイヤーアロー!》


 かん高い少女の声が辺りに響き、私と同じような炎の矢が木の幹に突き刺さる。じゅぅぅぅ~。


「「……」」


「……タエ。どうやって連射する?」


「……」


 そう。私も練習して思ったよ。どうやって連射するか。人に指摘されて気付いた訳じゃないよ。ちゃんと自分で気付いていたよ。どうする?


「……どうやったらいいと思う?」


「……里のみんなは短縮詠唱か無詠唱だった気がする」


 おお。さすがエルフの里。魔法優遇種族は一味違うね。短縮詠唱か無詠唱ときたよ。ゲームなんかで言えばクイック登録しておけばいいけど、実際はどうする?


「……そうだね。師匠は無詠唱だったよね? とりあえず短縮詠唱からやってみようか」


「……うん」


 魔力を練る。ここまでは一緒。この後呪文を唱えながら指先に集中するけど呪文を唱えないで集中してみる。そして力ある言葉のみ発声。


《ファイヤーアロー!》


 シーンと静まった草原に風が吹き渡る。金の助言ちゃんがおしいみたいなジェスチャーをしてるのが頭の中に見えるよ。凍りついた雰囲気の中、頭だけぎぎぎと動かしてネイちゃんを見る。


 サッと視線を逸らすネイちゃん。うん。空気の読める子だね。でも今は違うんだよ。そうじゃない。最初から成功するなんて思って無いから。


「……ネイちゃん。見た?」


「……ううん」


 首を必死に左右に振って見て無いアピール。あれ? おかしいな。そんな事を期待してたんじゃないんだけど。何がいけないのか聞きたいんだよ? ちょっとカッコ悪いとか気にしてないよ?


「もう、ダメじゃない。ちゃんと見てくれないとどこが悪いか分からないでしょ?」


「……う、うん。え~と。同じように見えたんだよ?」


 ちょと小首を傾げながら白状したよ。ニヤ~っと笑いながら告げてみました。


「……み~た~な~……」


「ひぃぃぃ~……」


「冗談です」


 ネイちゃんが凄く怯えたので直ぐに訂正して、冗談だと言ったんだけど。もう目も合わせてくれなくなりました。軽いお茶目だったのに。げせぬ。


 ネイちゃんがなんかテンション低くなっちゃったので気分を変えるためにお茶会に移行しました。雰囲気が凍りついてたからね。うん、うん。


「はぁ~。お茶が美味しいね」


 小麦粉の素焼きもといクッキーモドキを出して気分を和らげましたよ。お砂糖も少し入っているのでそこそこ美味しいと思います。


「……タエ、怒ってない?」


「うん。全然怒ってないよ。さっきのは冗談だよ」


「……そう。カッコ悪かったね」


 ピキっとこめかみ辺りから音がした感じがしたけど、気のせいだよ。そんな事くらいじゃ怒らないよ。


「次はネイちゃんだからね」


 にっこり笑いながらそう言ったよ。怒ってない! 怒ってない! 私は大丈夫。お姉さんだからね。ふふふ。


「わるいごは、いねが~」


 つい……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ